8章 学園高等部編 8-1 高等部生になりました
ブックマーク・評価・感想・誤字報告など、いつもありがとうございます!
前回の本編更新から1年以上経ってしまいました。忙しかったりゲームにはまったりで遅れに遅れました。……半分くらいゲームのせいかも。
ただ、それで時間を消費している間に新たなアイデアが浮かんだりもしたので、一概に無駄な時間だったとも言えないですね。
まあなんとか納得のいくところまでストックが溜まったので、更新を再開します。主人公たちが高等部生(高校生)になったところからになります。
長らくお待たせしてしまい申し訳ありませんでした。それでは、本編をどうぞ!
※主人公が領地運営で不在のため、フィオナ目線でお送りします。
「中等部から進学してきた皆さんも、高等部から入学してきた皆さんも、共に高めあって———」
学園長先生のお話を、私を含めたたくさんの生徒が聞いています。
今日はハルモニア魔法学園の入学式です。中等部から進学した人に、高等部から入学してくる人や転入生、留学生などを加えた大勢の人が、講堂に集まっていました。
私の周りには、エレンを始め、ユーリとカノンも座っています。ちらっと見てみると、エレンとユーリはきりりとした表情を保っていますが、カノンは少し眠そうです。昨日は練習に熱が入って寝るのが遅くなったと言っていたので、そのせいかしら?
私たちの周りには、中等部からお付き合いのある方々ばかりですが、少し離れたところには見慣れない方たちもいます。きっとあのあたりが新しくやってきた方々なのでしょうね。
レオン様は今頃、何をしているのでしょうか。王都に帰る私を見送ってくれた姿が頭に浮かびました。やることがいっぱいだと言っていましたが、無理をしていないといいのですが……。
そんなことを考えている間に、入学式は終わりました。
「フィオナ! 選択授業はどんなのを取ろうと思っているの?」
ホームルームが終わって、渡された用紙を見て考えていたら、エレンがそう聞いてきました。少しするとユーリもやってきたので、3人で話します。
「そうね。引き続き薬学の授業を受けようと思っているわ。それと、王国の歴史や地理に関する授業ももっと詳しく知ることができるものがあれば」
「地理に歴史……。特産品のことを考えるときに、どんなものが受け入れられそうかとか、他の領地のものと被らないかとか調べたものね。フィオナももしかして似たような理由?」
エレンの言葉に頷きます。レオン様は毎日忙しそうに動き回っていました。私も傍で支えるために、役立ちそうな知識を身に着けたいと思ったのです。
その他にもアニエス様にお勧めされたものや、エレンにおすすめされたもの、興味があるものを無理のない範囲で選んでいきます。付与魔法の参考になるかもしれないから魔導工学基礎も受けてみようかしら?
「フィオナ。馬術の授業を受けるの?」
私の選択した授業の用紙をのぞき込んだユーリが不思議そうな顔をしました。騎士科でない女子生徒はあまりとらない科目だからでしょうね。
「ええ。乗ることができた方が便利そうだと思ったの」
旧ガリア領(これからはラングレイ領になるみたいです)に行ったとき、色々あって領内を見て回ることはできませんでした。でも、それができるようになった時、馬車じゃなくて、お互いに馬に乗って遠乗りのようなことができたら素敵だと思ったのです。……護身術のひとつとして、ひとりで馬に乗れるといいと言われたこともあるのですが。
「でも、馬術の授業は騎士科向けだから、難しいかもしれませんわ。しっかりやりたいなら止めないけど、ある程度乗れるようになりたいとかなら、乗馬クラブに入るのも一つの手ですわよ?」
ユーリが少し心配そうに言いました。クラブ活動———。
ホームルームの説明では、似た趣味、思考を持つ生徒が集まって放課後などに活動を行うとの事でした。高等部から新しくできるようになるものなので、どんなものがあるのか興味がありました。
「確か、クラブ活動の紹介を外でやっていたはずよ。選択授業の提出期限はまだあるし、見に行ってみない?」
エレンの言葉に頷きます。受けようと考えている授業は大体決まってしまったのもありますが、クラブ活動の紹介も気になったのです。
「やあやあ! こちらはボードゲームクラブだよ! チェスをはじめとした盤上遊戯で切磋琢磨しよう!」
「私たちは料理クラブです! 簡単なお菓子から、日常的に食べられている料理まで、いろんなものを作っています!」
「社交ダンスやマナーを一緒に学びませんか!」
「剣の腕に自信がある者は、ぜひ我がクラブへ!」
「私たちと一緒に素敵なステージをしませんか? 役者じゃなくて、裏方も大歓迎ですよ~」
校舎の外にある広場では、たくさんの先輩方が、手作りのボードなどでそれぞれのクラブをアピールしていました。そしてその場には、私たち以外にもたくさんの生徒がいて、彼らの話を興味深そうに聞いている光景があちこちで見られました。
「本当にたくさんのクラブがあるんですのね」
「迷っちゃいそう」
「あら? カノンは既にピアノのクラブから声が掛かっていなかったかしら」
「ああ。そうなんだけど、まだ迷っているんだよね」
ユーリとカノンの話を聞きながら、私は熱心に声を張り上げる先輩方を見ます。私はどうしようかしら……。
そう思っていたら、その先輩方が、こちらに近づいてくるのが見えました。何かあるのでしょうか?
「あの! 料理クラブ! どうでしょうか」
「何を言ってますの! 我が社交クラブこそ彼女が入るのにふさわしいクラブですわ!」
「ミストレアさん! 私たちと本の魅力について語り合いませんか!?」
「あ! 抜け駆けはずるいぞ!」
あっという間に私たちの前には人だかりができて、皆が口々に私やエレンをクラブ活動に誘いました。ど、どうなっているの!?
どの人たちも目がぎらついていて、少し怖く感じました。一旦戻った方が———。
「こらそこ! 騒ぎを起こすんじゃない! 無理やりな勧誘は禁止だぞ!」
そこへ新たにとんできた声で、先輩方は動きを止め、声の方を振り返ります。
「すみませんね。通してもらいますよ」
やがて人垣が別れ、やってきたのはふたりの男性。一人は知らない人でしたが、もう一人は知っている方です。
「皆、すまない。彼女たちとは、私が先約なんだ。というわけで、生徒会室まで来て欲しい」
そういって穏やかな笑みを浮かべたのは、この国の王太子にして、現生徒会長をしていらっしゃるアルフレッド殿下でした。
「エレオノーラ嬢。そしてフィオナ嬢。久しいな。それと大変だったな」
生徒会室に案内されて、紅茶をいただきます。一息ついたところで、そう言われました。おそらく先程のことだと思いますが、どうしてあんなことになったのでしょう。
「本当よ。皆話題性のある私たちをクラブに入れようと必死だったわ。知名度がある子がいればクラブ会議での発言権が増して予算が増えるかもしれないというのは聞いたけど、あそこまで露骨だなんてね」
「あの騒動で君たちの知名度はぐんと上がった。今のうちに近づいておきたい生徒も多いのだろうね。なんせ、レオン殿とフィオナ嬢は学園の中でも一番の出世頭と言えるのだし」
話を聞いたところ、既に将来領地をもらうのが内定しているレオン様とその婚約者である私は、まだ将来の定まっていない生徒たちからするとぜひともお近づきになりたい存在。だからこそ、クラブ活動で自身のクラブに入ってくれれば距離を縮めることができ、また、私たちに近づこうとする他の新入生もこぞってやってくると考えたみたい……。
「迷惑な話よね。所で、殿下もこの話をするためだけに私たちを呼んだわけではないのですよね」
エレンがそう問いかけると、殿下は笑みを浮かべながら言いました。
「流石に気づくか。では本題といこうか。……ふたりとも、生徒会に入らないか」
本編の一番上にも書きましたが、第8章は主人公が領地で政務に励んでいるため、ヒロインのフィオナちゃんの目線で話が進みます。彼女の目線で見た学園の様子などを楽しんでいただければと思います。なお、主人公の登場は8章の後半に入ってからです。
次回更新は2週間後の2月14日(金)の20時を予定しています。それでは、また!




