6-18 令息は卒業パーティーに臨む⑤
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決闘も残すはカルロスのみ。果たして勝利することができるのか⁉
それでは、どうぞ!
炎と風が交錯し、吹き荒れる。カルロスは炎弾をいくつも繰り出して放ってきた。俺はそれをひらひらと避けていく。
”ウィンドカッター!”
風の刃を放つが、カルロスは土壁を生成して防いだ。……そういやカルロスは火・土・風・水の4属性使えるんだっけ。
「効かぬわ! はあああっ‼」
雄たけびをあげると、カルロスの身体からキラキラとした光の粒子が溢れ始める。なんだ?
「くくく。流石はアメリアだ。力が湧いてくるぞ!」
カルロスはそう言うや、水でできた槍をいくつも生成して放ってきた。俺はそれを凍らせて叩き落す。
「”ファイアバレット!” はあ!」
再び炎弾を放つカルロス。しかし、その魔法は先ほどよりも早く、大きかった。
「……!」
風魔法の補助も併用してそれらを避ける。威力が上がっている?
「くく。不思議そうだな。教えてやろう。俺にはアメリアの祝福が付いているのだ!」
カルロスが得意げに話し始める。
「一応言っておくが、ズルではないぞ? 会場に入る前に、何かあったらいけないから、と慈悲深きアメリアがかけていてくれたのだ。これであの女の力も効かん。まさかこんなところで使うことになるとは思わなかったが、アメリアのすばらしさを知らしめるには丁度いいだろう」
ランドルやマーカスにもそれがない時点で多分嘘だな、うん。
「お前もこの力の前にひれ伏すがいい———」
カルロスがそう言いながら掌にためた炎を打ち出そうとしてくるが
パアン!
その炎は放たれることなく打ち消される。……もちろん俺の仕業だ。
「もう話は終わりか? ならもういいよな?」
瞬間、カルロスの周りを囲うように氷の壁がせりあがる。
「あんまり長い話だからさ、その間に魔法の準備ができちゃったよ」
魔法使い相手に長話なんて、魔法の準備時間を与えるだけ、だったかな。小説の登場人物がそう言っていたが、今がまさにそれだ。
驚くカルロスを尻目に、氷の壁はあっという間にドーム状となり、カルロスを覆いつくす。
「”アイスプリズン”。からの……」
壁の内側にトゲを無数に生やして、「”メイデン”」
氷のドームからは物音ひとつしない。中で凍り付いたか?
だが次の瞬間、ドームにぴしりとひびが入り、その一部が吹き飛んだ。
「こんなもので、勝てると思うなあ!」
身体に炎を纏ってカルロスが現れる。無理やり溶かして破壊したようだが、無傷とはいかなかったようだ。
「”ファイア……ボール!”」
炎がひとつの塊となって、襲い掛かってくる。それを床から何本も太いつららを出して盾のようにして防ぐ。
「”ロックランス!”」
間髪を入れず、岩の槍が降ってきて炎でもろくなっていたつららの防壁を破壊する。更に飛んできた槍を躱しつつ、氷の矢を何本も放つ。カルロスはそれらを全て炎の壁で防ぐ。
「おいおい。もう終わりかあ!?」
カルロスはそう言うや、炎を再び剣にして切りかかってきた。こちらも風の剣でそれをいなす。
「はあ!」
カルロスが剣を振ると、炎が放射線状に飛んでくる。それを避け、俺もまた風の刃を飛ばす。並行して風の矢も飛ばすが、それらをカルロスは平然と全て切り捨てた。
「遅いな。やはり疲れがたまっているんだろう? 降参するなら今の内だぞ?」
「……」
何本もの矢を放って答えにする。
「……ちっ。ならば、完膚なきまでに叩き潰してくれるわ!」
炎の矢、水の矢が次々と飛んでくるが、それらを風の鞭を振るい叩き落す。
「ふん!」
カルロスの足元から岩がせり出し、俺に迫ってくる。それを氷の防壁で相殺する。魔法がぶつかり合ってできた煙に紛れるように風の矢を放つ。剣でいなされる。
「無駄だ! 効かないぞ!」
そう吠えるカルロスに向けて、矢を5本放つ。カルロスはそれも剣でいなしていく。4本目までは切り落とされた。
「ぐ……!?」
5本目の矢が、カルロスの肩に当たる。全て切り落としたと思っていたのか、直撃を受けてふらついている。
更に7本を放つ。最初に5本。時間差で2本。カルロスは5本はいなしたが、残りの2本はカルロスの身体に吸い込まれていった。
「なっ? ぐう!?」
ダメージを受け、ふらつくカルロス。俺は”纏”を発動し、一気に距離をつめる。
「くっ!? ”ファイアウォール!”」
カルロスは炎の壁を作り、俺の行く手を阻もうとするが、小さな竜巻で持ってそれを吹き飛ばし、できた穴を通り抜ける。
圧縮した空気を右手の平に集め、掌底のように押し付ける。
「”エア・インパクト!”」
闘技会以来久しぶりに使うそれで、カルロスを吹き飛ばす。吹き飛ばされたカルロスは、床にもんどりうって倒れたが、ギリギリで受け身を取ったのか、ふらつきながらも起き上がると魔法を放ってきた。
「”ロックランス!”」
2本の槍が向かってくるが、俺に届く前にどちらも砕け散った。
「なっ!? 何をした!」
「魔法で相殺しただけだ」
「そんなわけが! 何も見えなかったぞ!」
「お前はわからなかったか? 俺の放った魔法が」
俺の言葉に、カルロスは絶句する。わからないならいい。種明かしをするつもりもないしな。
「バカにするなあ!」
怒りに燃える掌から炎が生まれ、俺に向けられる。
「……”フレイムランス!”」
飛んで来る今までで一番大きな槍に向けて、俺は人差し指向ける。指の先に風が集まり、形を作る!
「……”エア・バレット”」
指先から発射されたそれが炎の槍とぶつかる。俺の放ったそれは、槍をいともたやすく貫通して霧散させ、その先にいたカルロスの頬をかすめて、床に着弾した。
「バカな……」
カルロスは信じられないという表情のまま崩れ落ちる。こうして、俺の勝利が確定したのだった。
「さてと。勝ったからには謝罪してもらおうじゃないか。もちろん、洗脳だとかアメリアをいじめたとかの風評被害の分まで全部な?」
満身創痍なカルロスたちを前にそう言い放つ。はあ~。勝った勝った。しかし、カルロスが思ったよりも苦戦しなかった。マルバス位苦労するかと思っていたが、結構サボっていたらしい。
まあ、あれにはまるくらいだしな。
カルロスが俺の魔法を避けきれなかったのはなんてこともない。ただ、魔法を透明に近い状態にしていただけなのだ。
魔法について考えている中で、ある時ふと思ったのだ。『なぜ俺は魔法が見えるのか』と。
炎や土はまだわかる。だけど、なぜ風を視認できる?
頬を撫で、髪を揺らす風は、目に見えないのに。
そこで気が付いてしまったのだ。先入観に捉われていると。この世界の人も、俺も、”風魔法は色がついて見えるのが当たり前だ”と思っていることに。
この考えに至るまで、俺自身も違和感を感じていなかった。ゲームやアニメでも、風魔法は緑などの色がついていたから。そう、見る人がわかりやすいように。
だけど、気が付いてしまえば後は練習あるのみ。俺は自然に吹く風を自身の魔法のイメージに落とし込み、限りなく透明に近い魔法を放てるようになったのだ。
またこれは氷魔法においても同じことが言えた。氷だって、透明なのだから。
魔法というのは、思ったよりも適当かつ、応用がかなりきく物なのだということを改めて知った感じである。
ただ、見えなくなるとは言っても魔力感知をすれば簡単にわかるので、少し動揺を誘う程度かと思っていたけど、4属性の魔法が使えることに驕っていたらしいカルロスには、見破ることができなかったようだった。……おそらくランドル相手だったら、こうはいかなかっただろう。
「……」
今にも倒れそうになりながらも、俺を忌々し気に睨むカルロスたち。
「どうした? あれだけ大見え切っていたのに3人がかりでも歯が立たなかったな。これで最初に言っていたことを反故にするなんて恥の上塗りはしないよな?」
本音を言えば某大迷宮のウザい迷宮主のように煽ってやりたい気持ちもあったが、もう煽る意味もないので自重する。
「ぐっ。ぐぬぬぬ」
カルロスとランドルは今にも頭から湯気が出そうになっている。なお、マーカスはいまだに気絶中だ。
「……む、無効だ! こんなの、認められるものか!」
「え? お前からけしかけといてそれ言う?」
「うるさい! エレオノーラやあの女がお前に支援をしたり、俺たちを弱体化させたに決まっている! そうでなければ」
「そうでなければ、何か? 3人がかりでひとりを倒せないわけがないってか? アメリアからの祝福とやらを得意げに語っていた口がよく言うよ。フィオナの力は効かないんじゃなかったのか?」
「ぐ……」
さて、決着はついた。が、カルロスたちが素直に謝罪するとは思えなかった。
「やめて! カルロス様たちに酷いことをしないで! フィオナ様! こんなの間違っています!」
今まで信じられないといった表情で固まっていたアメリアが、ここで余計な茶々を入れてくる。一生黙っててくれないかな。
「そ、そうだ! そこまでして人を思うままに動かし、愉悦に浸りたいのか! 浅ましいぞ!」
ほら。カルロスが調子に乗る。
「全くその通り。浅ましいことだ」
そこへ入ってくる第3者の声。カルロスが驚いたように振り返る。それもそのはず。声の主は国王陛下その人だったからだ。
途端に、会場にいた人々は腰を落とし、礼を取る。もちろん俺もだ。
だが、カルロスたちは立ったままであった。
カルロスが出てきた扉から入ってきていたらしい国王は、息子を見やる。
「本当に、浅ましいものだな」
その目はカルロスに向けられていた。
「ち、父上! 見てくださいこの惨状を! 全てあの女どもが仕組んだことなのです! アメリアを害する奴らに鉄槌を『浅ましいの貴様の方だ。この大馬鹿者めが!』———え?」
そこまで声を荒げていないのに、威圧感のある声が会場にこだまする。
「此度の騒ぎを、儂が何も知らぬとでも思ったか! 貴様が令嬢たちに難癖をつけ、あまつさえ決闘を申し込み、返り討ちにあったことも全て知っておるぞ。そして望む結果が得られなければ認めようともせずわめき散らすとは、それが民たちの手本となるべき王族の姿か!」
「し、しかし、アメリアは確かに嫌がらせをされたと」
「それとて全て令嬢自身やその関係者によって無関係と証明されたようだが?」
「証拠だって」
「どこにあったというのだ?」
返す言葉もないのか、カルロスは口をつぐんでしまう。カルロスが口にしていたものは、全て意味がなかった。俺のは全部演技だったし。
「酷い! 酷いです。証拠証拠って、私は辛かったのに! 貴族だから、お目こぼしされるっていうんですか!」
そう言いながらアメリアが話っと泣き崩れた。カルロスたちは慰めたり同情的な目線を向けるが、それ以外はほとんど白けた感じであった。
「……証拠、と言いましたか?」
ここで、決闘では立会人をしていたシリル先生が声をあげた。何ごとかと視線が集まる。
「つまりは、アメリアさんが嫌がらせをされていた証拠、もしくはアルバート君が洗脳をされていたという証が見つかればよい、ということですね」
「そ、そういうことだ! 先生には何か考えがあるのか?」
「嫌がらせについてはどうにもなりませんが、もう一つの方なら可能ですよ」
「ほう。どうするつもりかね」
国王の問いに先生は俺たちの方を見ながら答えた。
「鑑定をしてみるのです」
決闘も終わったと思ったら、風向きが変わってきましたね。この後はどうなるのか⁉
次回更新は8月4日(金)を予定しています。それでは、また!




