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幕間 sideフィオナ~新たな関係、新たな気持ち~

 ブックマーク・評価・感想・誤字報告など、いつもありがとうございます!

 今回のお話から、フィオナ目線のお話が入ります。こちらが本編に追いついたら、また本編再開です。全部で8話ほどになる予定です。それでは、どうぞ!

「それでは、時間になったらまたこのあたりに迎えに来ますから」

「……ありがとう、キース」

「いえ、楽しんできてください」

 私はキースに感謝の言葉を掛けて、馬車を下りて待ち合わせの場所に向かいました。

 今日はレオン様と約束した……で、デートの日です。行先は夜会の時に話した王立植物園に行くことになっています。本来であれば、レオン様が迎えに来て、馬車で植物園に向かうのでしょうが、私が町で読まれている恋愛小説のようなことをしてみたいと言ったことで、今回はそのようにすることになっていました。……あのときはその……思いが伝わったことが嬉しくて、つい浮かれて、あんなことを言ってしまいました。本の中の人たちへの憧れもありましたし。

 待ち合わせの場所は広場にある噴水の傍。王都では待ち合わせやデートスポットとして人気の場所です。

 外の空気は冷たく、肌寒いものでしたが、噴水のある広場には人の姿が多く見られました。まだ待ち合わせの時間には少しありましたが、なんとなくもうレオン様がいるのではないかと思って、キョロキョロと辺りを見回します。

 噴水の方に目を向けたとき、パッとレオン様の姿が目に入って、胸がじんわりと熱を持つ感覚がありました。近づいていきます。

「すみません。もしかしてお待たせしてしまいましたか?」

「いや、俺も今来たところだ」

 レオン様はそう言って微笑みました。……きっともっと早くから待ってくれていたのだろうということが予想できて、それがなんだかむずがゆい感じです。

 ふと見れば、噴水からは水が溢れ、水面が日の光に照らされてきらきらと輝いていて、水面に今日の私の姿が映っています。淡い桃色のワンピースに、白のコートと帽子姿の私が。

 に、似合ってるかしら? 変じゃなければいいのだけれど……。

 アンナやエレンにいいと言ってもらったのに、レオン様を前にすると急に不安になってきます。

「フィオナ。今日の服だけど……」

 レオン様が服のことを口にしたのでどきりとします。

「すごくかわいいよ。よく似合ってる」

 レオン様の口から放たれたのは、そんな言葉で。嬉しさと恥ずかしさで顔に熱が集まってくるのが分かりました。こ、こういうのはお付き合いしている男女ならよくあることなのかもしれないわ……。でも、すごく恥ずかしい!

 肌寒さとは裏腹に、私の身体はどんどんと温かくなっていくようです。むしろ寒さが心地いいほどでした。

「じゃあ、行こうか」

「はい」

 レオン様に促されて、乗合馬車の停留所に向かいます。乗合馬車には、以前にもエレンと乗ったことがありました。あのときは劇場に行ったのよね。

 乗った馬車の中は少し混んでいて、空いている席はひとつだけでした。レオン様に座っていただこうと思っていたのですが、私が座ることになりました。

「座った俺の膝の上に座る?」

 席を譲ろうとした私に向かってレオン様が言った言葉を思い出し、頭の中が沸騰しそうになります。冗談で言ったことはわかっていましたが、その光景を想像してしまい、同時にそんなことを考えてしまう私ははしたないのではないかと自己嫌悪に陥ってしまうのでした。

 植物園は以前にも講義の一環で訪れたことがありましたが、今日はデートで来ているのだと思うと、また体が熱くなりそうです。……まるで私が私ではないみたい。

「まずはどこを見に行こうか?」

 そう聞かれた私は、体の熱を冷ましたくて、庭園の方を見たいと言いました。

 ですが、レオン様がエスコートするように私の手を握って歩き出して……。嬉しいのだけれど、熱は引くどころか上がるばかりだわ。

 レオン様と巡る庭園は新しい発見がたくさんありました。とても話が弾んだわけではなく、ただ、感じたことを時折話すだけ。それでも、その時間が楽しく感じられて、とても幸福な気持ちになることができました。

 周囲よりも高くなっている場所からは、色とりどりの花が咲き誇っているのを見下ろすことができました。季節を思えばここまでのものを作り上げていることに素直に感心すると同時に、それをレオン様(好きな人)と一緒に見ることができているのが、何とも言えないくらいむずがゆく、それでいて心地よい感じでした。

 ふと、レオン様が私を見て微笑んでいて、私は子供のようにはしゃいでしまったことに気が付きました。

「……!? すみません。思わずはしゃいでしまって……」

 急に恥ずかしくなってきて、うつむきます。子供のようなところを見せてしまいました。幻滅されていないでしょうか……。

「すごくかわいいな」

 初めは気にしないと言っていたレオン様でしたが、不意に飛び出してきた言葉に胸が跳ねました。そう言うレオン様の顔はとても優しく微笑んでいて……。一気に体が熱を持ちます。……は、反則だわ。こんな優しい顔でそんなことを言われたら。

 レオン様の顔が見ていられなくて、両手で顔を覆います。そこでふと浮かんだのは、いつも私ばかりが恥ずかしがったりうろたえたりしているのではないかということでした。

 ……そう思うと私ばかり照れているのはなんだか、不公平な気がするわ。レオン様ばかり私の恥ずかしがっている所を見るなんて。私だって、それを見てもいいと思うの。

 そう思った私は、意を決して「レオン様は……優しくて、かっこいいです」と口にしました。面と向かって言うのは照れくさかったのですが、何でもないふりをします。

「ありがとう。嬉しいよ」

 でも、私の言葉に対するレオン様の答えは余裕があるもので……。ずるいわ!


 最初は余裕たっぷりな様子のレオン様に少しもやもやしていましたが、次の場所に移動する頃には落ち着いていました。ですが、それは一度では終わりませんでした。

 最後に訪れた温室に入った際、中が温かかったので、上着を脱いだのです。レオン様も同じように脱いでいました。

 その時ふと右手に寂しさを感じました。……その、先ほどまでレオン様と手をつないで歩いていたのですが、今は離していたのです。……なんとなく、先ほどまであった温もりがないことが寂しく感じてしまいました。でも、「手を繋ぎたい」なんて、先ほども繋いでいたのに、積極的すぎるかしら……。

「フィオナ。良かったら……」

 すると、レオン様が私に向かって手を差し出してきたのです。私は、“レオン様も手を繋ぎたいと思っているんだ”と思って、その手を握ったのです。

「え?」

 ですが、レオン様は渡しを見て目をぱちぱちと瞬かせます。

「……え?」

 な、何かしてしまったのでしょうか……。

「ええと……。上着持とうかって言おうとしてたんだけど……」

「!?」

 その言葉で、自身の勘違いに気づきました。わ、私ったら、なんて恥ずかしいことを!

「ち、違います! べ、別に手が寂しくなったとかそういうわけじゃないんです!」

 慌てて弁明しますが、話す程に沼に沈んでいくような心地がして、うまくいっている気がしません。

「……手、繋ぐ?」

 その言葉と共に再び差し出された手。つなぎたい気持ちはありました。でも、そう言うレオン様の顔が何か微笑ましいものを見るような目をしていて……。ここで手を取ったら、何かに負けたような気がします。でも、繋ぎたい……。やっぱり恥ずかしい!

「‼ つ、繋ぎ………ま、せん!」

 結局羞恥心に負けてしまい、手を取らずに私は奥へと進みました。……ついてくるレオン様がかわいいものを見る目で私のことを見ている気がしますが、気にしてはいけません。ああいった目をする時は、反応してしまうと長引くのだとエレンで知っていますから。……やっぱりレオン様はずるいわ。

 植物園を出た後も、カフェでは私の話を真剣に聞いてくれました。大通りを歩いているときもさりげなく気遣ってくれたり、少し遅れがちな私の歩幅に合わせてくれました。お店で夜会の時につけていた香水の香りを覚えていてくれたのには驚きました。それと同じ香りのポプリをプレゼントしてくれたことも。

 お店を出て歩いている時、こっそりとポプリを出してみます。ふんわりと薫るラベンダーの香り。

 今日、もっとその香りのことが好きになりました。

 今回は新年の初デート変でした。もう1話続きます。

 次回更新は4月21日(金)を予定しています。それでは、また!

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