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    6-11 令息は卒業試験に臨む②

 3月19日に誤字を修正しました。ご指摘、ありがとうございました。


 ブックマーク・評価・感想・誤字報告など、いつもありがとうございます!

 試験2話目です! 今回は洞窟に入っての探索がメインになります。それでは、どうぞ!

「アルバート君って、こうして話してみると意外と普通だね。噂じゃあ、すごい束縛が強いとか、すぐに怒るとか、後輩に稽古っていう名のしごきをしてるって聞いてたけど」

「僕も、あんまりいい話聞いてなかったから、少し不安だったんだよね」

 洞窟近くに戻って休憩中、アリアが小さな鍋をかき混ぜながらそう言った。なお、鍋の中身は簡単な傷薬と、先ほどは毒消しも作っていた。森の中に材料が自生していたとのこと。薬があるのは助かるので、それを作っている間は休憩になったのだ。

 ちなみに、先ほどの発言には、レインなどもそうだよなと言わんばかりだった。ふむ。これも噂が広がっていることの証左かな。

「いや、結構これでも我慢してる方だよ? 本当だったら、あんな奴ら全員氷漬けにしてやりたいし、そもそもフィオナをこの場に連れて来たくなかった。魔物が出るような危険な場所だぞ! 可愛い顔に傷でもついたらどうしてくれる! まあ例え傷があってもフィオナは可愛いが!」

 俺はフィオナの肩を抱きながらそう言い放つ。半分本気で半分演技だが、腕の中のフィオナは相変わらず頬を染めて赤くなった顔を両手で隠していた。うむ可愛い。

「婚約者にぞっこんなのは本当みたいだな……」

「でも、ミストレア嬢もこうやって話してみると普通にかわいいな」

 ラッセルとマルクはどこか呆れたような視線を向ける。ただ、マルクはアリアに腕をつねられてすぐに顔をしかめたが。

「デレデレしないの」

「……すまん」

 そういやこのふたりは婚約者同士なんだっけ? すでに尻に敷かれている感が半端ないな。

「でも、実際にこうして一緒に行動してみると、噂ってあてになんないもんだね」

 レインがそう話すと、他の班員も頷く。ついでなので彼らのクラスでは俺のことはどんなふうに伝わっているのか聞いてみると、ラッセルとマルクのクラスはアメリアとは別のため、俺の悪い噂もいい噂も同時に入ってきていた。ただ、そのクラスにもアメリア信者はいるみたいで、男子の半分くらいはフィオナやエレオノーラ嬢を目の敵にしているとか。ただ、女子の方はほぼすべてがフィオナたちに好意的であるらしい。アメリアを嫌う女子、フィオナの努力家な面に敬意を表している女子など、それぞれ思うところをあるみたいだけど。

 レインやアリアのいるクラスは、男子にアメリア信者がいるものの、逆にフィオナ信者が多いようだ。面だって口外しているわけではないみたいだが、フィオナと同じクラス、もしくは交流の多いクラスだからだろう。……あとは多分、クロユリの会だな。リリー嬢もフィオナと同じクラスだったし。

「まあ、後輩と結構激しめの鍛錬を頻繁にやっていて、終わったころにはへとへとだからな。見方によってはしごいてるとも言えなくもない」

 密かに研究、練習してる新技を試したりもしているし……。やり過ぎたときは即座に謝ってポーションを渡したりしているが……。マルバス自身は『レオンさんの天才的発想を間近で見られて授業以上に有意義です!』と、体操着が焦げようが裂けようが気にする様子もなかった。

「鍛錬か……。よければ見学、もしくは参加させてもらえたりするのか? 闘技会優勝者と準優勝者の鍛錬とかかなり興味深いし」

「どちらも剣だけじゃなくて魔法も秀でているからな。参考になりそうだ」

 マルクとラッセルはかなり興味深げにそう言った。見学……か。今は無理だが、断罪のごたごたが片付いたらいいかもしれないな。ふたりは進学組だし、高等部で会うこともできるだろう。

 ふと目を向けると、フィオナはアリアと話をしていた。フィオナは顔を真っ赤にしたり、顔をほころばせたりと、雰囲気は和やかだった。アリアに何か言われたのか、フィオナがこっちを見た。ひらひらと笑顔で手を振ると、恥ずかしそうに顔を背けた。思わず笑みがこぼれた。


「それじゃあ、そろそろ洞窟に入ろうか」

 時間もそれなりに経って、もうあいつらとかち合うこともないと考え、俺たちは洞窟へと入ることにした。サクヤも戻ってきたしな。聞いたところ、魔物はそこまで強くないらしいが、罠が結構あって、あいつらは何度も引っかかっていたらしい。……この洞窟罠あるのか。てか、わざと作動とかさせてないよね?

 洞窟の中は薄暗かったが、所々に魔道具なのか光るコケかなんかなのか、ほのかな明かりを発する物があって何とか進むことができた。広さは大人4人が並べばふさがるほどで、結構狭い。ただ、天井は高めだった。……ここにはコウモリ系の魔物が生息しているらしいから、天井からの奇襲に気をつけた方がよさそうだな。

 班の皆にもそう伝えて、隊列を組んで進む。ここに出る魔物は、先ほど言ったコウモリ系の魔物と、スライムが出るようだ。なお、こちらのスライムはバチュラという名前のようだけど……。

「えっと、では今のうちに補助魔法をかけておきますね。……『テンション』、『ガード』、『ブースト』!」

 フィオナがやや緊張気味に無属性魔法を行使する。それぞれ攻撃力、防御力、素早さを上げる効果を持つ魔法だ。俺なんかは全部ひっくるめて『身体強化』で発動させているけど、フィオナはそれぞれ効果ごとに別の魔法として使っているみたいだ。そして次の瞬間、身体に力が湧いてくる感覚があった。

「ありがとう、フィオナ」

「いえ……」

「おお、なんか温かい感じがするな」

「前に属性魔法の補助魔法をかけてもらったことがあるけど、あれとはまた違う感じだね」

「まあ一度の付与ならそっちと効果はあまり変わらないって言うからね」

 三者三様な感想が出てきた。最後のレインのセリフは、無属性魔法と属性魔法の補助の違いについてだろう。

 属性魔法の補助と、無属性魔法の補助は、一度の付与では効果はそこまで変わらない(個人で効果に違いはある。その場合は無属性魔法の補助の方が効果が弱い)。

 しかし、補助の重ね掛けをすると話は変わる。属性魔法は重ね掛けで何重にも付与をすることができるが(ただし身体への負担から5回が限界らしい)、無属性魔法の方は何度重ね掛けしても効果はあまり変わらない……どころか効果が下がることすらあるのだ。そのあたりも無属性魔法が冷遇されている一因なのだろう。

 班員たちの話からそんなことを思いながら進んでいくと、前方に何かを感知した。反応は初めて見る物。魔物ではない……のか?

「あ! 罠があるみたい。調べるわね」

 俺が口を開く前に、アリアが声をあげた。あの反応は罠だったのか?

「じゃあ俺も一緒に行くわ」

 マルクがアリアについていく。俺たちも周囲を警戒しながら少し後に続いた。アリアは反応があた場所に手を触れると、そこが一瞬だけ光を放った。光が収まると反応はすっかりと消えている。

「知らずに前を通ると大きな音が出て魔物を呼び寄せる罠だったみたい。しばらくしたら再起動するから、今のうちに通り過ぎちゃった方がいいわ」

「わかった。ありがとう」

 アリアの言葉に従い、その場を全員で通り過ぎる。……罠か。前に行ったダンジョンにはなかった仕掛けだ。多分そこまで凶悪なものはないだろうけど、いちいち魔物を呼ばれたりしたら面倒だな。

「それにしても、アリアは罠の察知と解除ができたんだな。助かったよ」

「ううん。慣れれば結構簡単だよ」

「そうなのか?」

「そうね。ここの罠は、魔力が媒介になっているみたいだから、不自然に魔力がたまっているところを探せばいいわね」

「へええ」

 ここは罠が多めなのカ、その後も解除したり避けながら進んでいくと、前方の角から何かが現れた。それは緑色で、緩いゼリーのようなプルプルとした動きで地面を這っている。形は……不定形なゼリーだな。あれがスライム———もといバチュラか。

「バチュラだ。数は3! 戦うぞ」

「おう!」

「ええ」

 俺が剣を構えると、ラッセルがやや前方に陣取る。後ろからも陣形が整ったと声がした。

「バチュラは剣や槍が効きにくいので、魔法で倒すといいです!」

 フィオナの声も届く。なるほど、魔法か。

 その声を聴いたラッセルは「じゃあこいつでいくか!」と言い、拳を握り締めた。すると拳が淡い光を放ち始める。魔力を纏ったのか。

「よし、前1体はラッセルに任せる。もう一体は俺が。残り1体をマルク頼む!」

「ああ!」

「よっしゃあ」

 ラッセルが一番近くまで来ていたバチュラにその拳を叩き込む。一発目で身体を半分ほど消し飛ばされ、2発目でバチュラを完全に沈黙させた。その間に、少し離れたところにいた一体に土でできた槍が突き刺さり、俺はすぐさま残った一体に向けて風の槍を放った。バチュラはその一撃でその身をはじけさせた。感知にはほかの反応はない。……終わったかな?

 バチュラたちがいたところに行くと、そこにはゴブリンと同じくらいの大きさの魔石と、プルルンとした前世の理科の実験で作ったみたいなスライムが落ちていた。これは「バチュラ―チ」といい、お菓子の材料からガラスにまでいろんな用途に使える素材なんだそうだ。これが課題にあった魔物の素材のひとつだな。ひとりひとつとするとあと3つか……。まあさらに進めばまた手に入るだろう。

 さらに進んでいくと、階段があって下に続いていた。……深さは地下3階くらいだった気がするが……。聞いてみたところ、地下4階まであり、そこに踏破証明があるとレインが教えてくれた。

「よし。下りていくよ」

 階段を下りた先の地下2階は、先ほどと同じような洞窟が続いていた。少し進むと分かれ道になっている。ためしに右へ進んでいくと、その先でまた分かれ道になっていた。片方の道はすぐに行き止まりになっていたが、もうひとつの道はもっと奥まで続いているみたいだった。……ここからは迷路になっているのか。

 皆で話し合いマッピングをしながら進んでいったことで、無事に地下3階に続く階段を発見できた。その途中で2度バチュラに遭遇して戦いになり、俺たちは6人分の素材を手に入れることができた。これであと1種類の素材があれば課題は達成だ。

 3階に入る前に少し休憩してから、階層へと足を踏み入れる。なんとなくだが、そろそろ……。

 そう思った瞬間、気配察知でいくつもの素早い反応がこちらに向かってやってくるのがわかった。

「くるぞ! 数は5! おそらくコウモリ系の魔物だ。頭上に注意!」

 素早く指示を出して戦闘態勢を整える。すぐにキイキイと耳障りな音が聞こえてきて、コウモリの魔物———シーズバットが現れた。

「キイイ!」

 羽ばたきながら超音波攻撃をしてくるシーズバット。指示を出す前に後衛のふたりの魔法が飛んで、片方が命中する。俺もすぐに風で槍を数本作って飛ばしていく。

「キイイイィィ———!」

 耳障りな声を発するシーズバットたち。俺には耐性があるのであんまり効いていないが、他の皆はそうではない。ちらっと見たらアリアやレインは耳を抑えたりしてるし、ラッセルもいらついたように無属性魔法の魔力弾を放っていた。だけどあまり集中できていないのか、あまり効果がない。風魔法で音を遮断するか?

「これから明るくなります! 注意してください!」

 その時、レインの声がしたと思ったら、光の玉がふわりと飛んでいき、一匹のシーズバットの前でパッと輝いた。そのとたん、やはり光に弱いのか、光を受けたシーズバットはふらっとバランスを崩す。耳障りな音も鳴りやんだ。

「おっしゃあ!」

 そして地面に落ちかけたところを復活したラッセルが拳をお見舞いした。最後に残った1体も、先ほどの光の余波で少し動きが鈍くなっていたところを俺が魔法で倒した。

 シーズバットの素材は牙や羽らしい。回収しておく。

「光で目くらましなんて中々やるな!」

 ラッセルがそう言ってレインを褒めると、レインは「いや、あれはミストレアさんがやったんだ。僕は知らせただけだよ」と言っている。どうやらあの光球はフィオナが出したようだ。多分無属性魔法にある『ライト』の応用だろう。

 その後は、罠を解除したり、魔物と戦ったりしながら進んでいった。魔物は、軽い毒を持つベノムバチュラや熱を発するヒートバチュラが現れたり、レッサーバットという別のコウモリ系魔物が現れたりして、中々人数分の素材がそろわなかったりもしたが、地下4階に入ってすぐのあたりでバチュラ・シーズバット・ベノムバチュラの素材を人数分集めることに成功した。

 地下4階を進んでいくと、明らかに人工物な扉を発見した。念のために少し休憩してから入ってみると、そこはちょっとした広場になっていて、その片隅には洞窟には不釣り合いなソファやテーブルなどの調度品がおかれていた。

 そしてそこでシリル先生がティーカップを傾けていた。……何これ?

「お~。よく来たな、お前ら。ほら、こっち来い。踏破証明やるから」

 いつも通りの気だるげな声でシリル先生はそう言いながら手招きした。先生の前まで行くと、何やら文様の書かれたカードを渡される。これが踏破証明のようだ。

 それから少しだけ先生の雑談につきあわされたのだが、先生は基本的に今日明日とここに居なければならないらしく、少しでも快適に過ごすために調度品を持ち込んだという話を聞かされたのだった。

 余談ですが、疑似ダンジョンにはボスモンスター的な存在はおらず、必要な時は先生方がその役目を代用します。2日目の卒業組は1日目の進学組よりも試験が厳しめになっているので、ダンジョン踏破では先生と戦うことになります。

 次回更新は3月24日(金)を予定しています。それでは、また!

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