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    2-3  5日目②  ダメ男はアイテムボックスを手に入れる

 黙ったまま縮こまっているフィオナにそう提案してみる。この空気を変えたいと思ったのもそうだが、何よりも俺は、異空間収納——アイテムボックスを使えるようになりたかったのだ。たとえ容量が少なくても、水筒やタオルを入れるくらいはできるだろう。夏が近いからか、外は気温が高い。アイテムボックスが使えたら、水分補給などが楽にできるし、わざわざ手に持って歩く必要もないからな。ぜひとも使えるようになりたい。

 再度頼むと、フィオナは承諾してくれた。さっそく教えてもらう。彼女曰く、無属性魔法は、イメージが何よりも重要なのだという。それは魔法すべてに言えることだけれども、特に無属性魔法はそれが強いのだとか。「何をしたいか」「どうなってほしいか」をしっかりとイメージして、対象に魔力を送る。イメージがしっかりできていればその通りになり、うまくいっていないと中途半端になるそうだ。

 とにかく、イメージが大事なんだな。なら、前世の記憶込みでそういうものへのイメージは事欠かない。やってやる‼

「その、自分の横に箱があると考えて、そこに入れたいものを入れるイメージをしてください」

 フィオナの指示の通りに、俺は手に持っていたティーカップを箱に入れるイメージをした。すると、魔力が少しだけ流れ、カップはぱっと消えてしまい、入れ替わりに箱の中にカップがあるというのがなぜかわかった。試しにカップをテーブルの上に出すイメージをすると、カップがぱっと現れる。……どうやら成功のようだ。よし、じゃあどこまで入るか試してみるか。

 俺は立ち上がって、部屋にある本棚に向かう。そこには、いくつかの本が置いてある。だが、あまり読まれた形跡はない。本一冊の大きさはハードカバーの本くらいだ。それを一冊ずつ収納していく。5冊までは難なく入り、それでもまだ余裕があると感じたので試してみる。6、7、8、9、10冊と入れたところで、満杯になったと感じた。合計で10冊も入ってしまった。容量としては、5キロぐらいか?

 本を元に戻し、戻ってきた俺は、紅茶を飲んだ。メイドが替えたのか、いつの間にか温かいものになっている。うん。やっぱりうまい。一息ついてから、フィオナに声をかける。

「うまくできたよ。君の教え方がうまいのかな? でも、入る量が多かったように感じたんだけど、何か心当たりがないかな?」

 彼女は、少し考えるような様子を見せた後、イメージの仕方で多少の変動はあると言った。イメージ……か。そういえば、最初に使う時、できるだけたくさん入れたいと思った俺は、彼女の「本5冊分くらい」というのを思い出して、本を基準にするなら、とにかく大きな本を基準にすれば、容量が増えるのでは? と考え、前世にあった百科事典を思い浮かべながら魔法を使ったのだ。結果として、大きくて分厚い百科事典約5冊分、こっちの世界の標準的な本10冊分の異空間収納になったようだ。

 その後もフィオナとは、少し雑談をしつつ、さらに無属性魔法について教えてもらった。色々と試したが、やはり前世の知識を基にしたイメージがあるため、上手くできることが多かった。とりあえず、これならもしまた部屋がぐちゃぐちゃになるようなことがあっても、自分で片づけることができそうだ。

「あの、レオン様。……私、そろそろ」

「ん? ああ、もうそんな時間か」

 そろそろ帰るという彼女を玄関のところまで送る。

「……ありがとうございます」

「いや、俺も今日は楽しい時間を過ごさせてもらった。……次は社会を頼みたい。大丈夫かな?」

 そう聞くと、フィオナは、「……はい」と小さくうなずいた。……よかった。

「そういえば、帰りの馬車はあるのか?」

「い、いえ……今日は歩いてきたので……」

「……では、帰りの馬車をだそう」

 近くにいた使用人に馬車を用意するように告げる。それを聞いた彼女は、わざわざそんなことをしなくてもいい、と辞退しようとしたが、送らない方が家の面子に関わるんだと言って半ばむりやりに説得し、家の馬車で帰ってもらった。……おそらくだけど、そういうのも迷惑になる、とか考えたんだろうな。すこし腹立たしくなったが、すぐにどうこうできる問題でもない。……少しずつ、変えていくしかないか。

 部屋に戻った後は、アイテムボックスで色々と試してみた。アイテムボックスと言えば、異世界転生の定番中の定番。やはり何ができるかは知っておきたい。とはいっても、フィオナから聞いたところによると、「アイテムボックスの中に生き物は入れられない」「中にいれたものは、時間経過で劣化する」というので、ホカホカの食べ物を持ち歩く、みたいなことはできないようだ。だからこそ、あまり使われていないのかもしれないな。

 これの利点としては、「本人しか入れたものを出し入れできない」ことだな。そのあたりは便利だ。でも、この世界にはもっと便利なものがある。それがフィオナの言っていた「マジッグバッグ」だ。これはファンタジーでは定番の「大容量」「時間経過無し」というすぐれもので、時たまダンジョンで見つかることがあるアイテムらしい。そうそう、この世界にも、「ダンジョン」がある。魔力のたまりやすいところだったり、かつて巨大な魔力がぶつかったりしたところにある。中には魔物がいて、倒すと素材が手に入るというなんとも分かりやすい感じだ。前世でそういった本も読んでいた身としては、ぜひとも行ってみたいなあ……とのんきに想う。

 話がそれたが、つまり、アイテムボックスは便利だけど、機能が中途半端で、あまり重宝されないということみたいだ。まあ使い道はいくらでもありそうだし、保存食や水筒が入るなら御の字か。

 それから色々とやってみた結果、自分を中心に半径2~3メートルくらいの距離にあるものまでなら、出し入れできることが分かった。手で触れなくても出し入れできるのは便利だな。

 他の魔法についても、何かできることはないかを考えたり実践したりして、今日は終わりにした。


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― 新着の感想 ―
[一言] 「い、いえ……今日は歩いてきたので……」 貴族の婚約者の娘が、供も連れずに人で来るって、普通なの?
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