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    6-8 令息はさらなる協力者を得る

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 今回のお話では、フィオナ大好きな彼女とも話し合います。いったいどうなるのか?

 それでは、どうぞ!

「レオン様。それではまた」

「ああ。また明日」

 そう言うとフィオナはぺこりとお辞儀をしてから女子寮の方に歩いて行った。俺はひらひらと手を振りながら見送る。

 フィオナとの時間を意図的に増やすようになってから結構経った。ふたりきりの時もあればそうでない時もある。フィオナには手を握ったりだとか、甘い言葉を囁いたりして溺愛ぶりを見せつけるようにしているのだが、フィオナはそういう扱いに慣れていないようで、顔をリンゴのように赤くして照れたり恥じらったりする。それがまた可愛くてどうしようもなかったりするのだけど。

 巷ではフィオナが俺を洗脳しているらしいが、あの様子を見てそれを信じられる人間がどれほどいるのだろうか? 個人的意見だが、洗脳もしくは魅了をしている本人がめちゃくちゃ照れているって意味が分からん。

 話が逸れた。俺はフィオナが見えなくなるのを見届けると、ふうっと息を一息吐き出す。気持ちを入れ替え、表情を引き締める。……さて、行くか。

 斜め後ろにはすっとコクトが立ち、ついてきながら目的地を教えてくれる。学園ここでの彼の役割はいわばサクヤ達と俺の潤滑油のようなもの。サクヤたちの集めてきた情報を的確にまとめたり、それを見て追加の指示を出したり、寮にいる他の従者などから情報収集したりといろいろやってくれている。それでいて寮の部屋を綺麗に整えてくれたりもするからありがたい。

 これから会う相手との会談を取り付けることができたのも彼の力添えがあってこそだろう。

 目的の扉をノックすると、「どうぞ」と声がした。部屋の中に入ると、奥にはふたりの人影が。

「わざわざ私を呼びつけるなんて、どういう風の吹き回し? あのおチビちゃんたちまで使って」

 俺を見定めるようにそう言い放ったのは、今流れている悪評の被害者でもあり、フィオナの親友といっても過言ではない、エレオノーラ嬢だ。すぐ近くには影のようにガルムが控えている。

「腹を探りあうのも時間の無駄だし、単刀直入に言う。今流されている噂、それを流している奴らからフィオナを守りたい。協力してくれないだろうか」

「……」

 しばしの沈黙。やがて告げられた言葉は、「いいわよ」というものだった。

「———ただし、私のやりたいことに協力してくれるならね」

 付け足された言葉に、やはりタダでは動いてくれないか、と思う。エレオノーラ嬢はかなり計算高い印象を受ける。こういう展開も予想はしていた。

「協力ってのはどんなことだ?」

 少し警戒しつつ聞いてみる。返ってきたのは、「カルロスとの婚約を解消したいから手伝え」というものだった。……はあ!?

 聴けば、カルロスがアメリアにべったりなのは知ってる上に、最近流れている噂に加え、カルロスが自分を犯罪者扱いしていることにかなりイラついているとのこと。

「もともと政略結婚で愛情なんてこれっぽっちもないけど、いわれもない罪で裁かれるなんて、ごめんだわ。そんなの、愛想も尽きるってもんでしょ」

 ああ。彼女が権力をかさに着てやりたい放題(ほとんどアメリアへのいじめ。ほぼ冤罪)しているのを懲らしめるとかいう発言か。報告書にも載ってたな。

「だから今回の件を逆手にとって婚約を解消、もしくは破棄したいわけ。あなた、殿下たちにかみつくつもりだったみたいだし、ちょうどいいでしょう?」

 持っていた扇で口元を隠しながらエレオノーラ嬢は言う。その目は挑発気味に細められていた。試されているのか信頼されているのか……。だが、作戦が成功したらカルロスの名声が失墜するのはほぼ避けられない。それならば受けた方がいい。それで彼女が味方になるなら安いもんだ。

「わかった。必ず成功させる。……それに、君がいなくなったらフィオナは悲しむだろうからな。まかり間違っても学園を追い出されることがないようにする」

「交渉成立ね。それじゃあ情報交換会と行きましょうか。もう私とあなたは一蓮托生よ。失敗すればあなたはフィオナを失う。中途半端なら私は犯罪者として裁かれてフィオナが悲しむ。成功する以外に道はないのだから」

「簡単に言ってくれる。でも、頼りにさせてもらう」

 俺はエレオノーラ嬢とがっちりと握手を交わしたのだった。


「は? ミストレア侯爵家でお家騒動!?」

「正確にはその前兆ね」

 エレオノーラ嬢は俺よりもさらに幅広い情報を持っていた。こちらもサクヤたちが頑張っているが、おそらくそれよりも優秀な人たちがいるのだろう。その中でフィオナの実家の話になった際に出てきたのが今のセリフだった。

「フィオナにはね、弟がいるのよ。キース君っていうのだけど。彼、あの家族の中ではまともな方で、フィオナに懐いているのよね。とはいっても、面だって両親にかみつけるくらいの力はなかったのだけれど……」

 弟……か。俺はまだ会ったことがないな。

「でも、”箒星の夜会”と、フィオナの婚約者を挿げ替えようとしたのには我慢ならなかったみたい。信頼を勝ち取った使用人たちと一緒になって両親とバカを追い落とそうとしているのよ」

 ちなみに、なぜそんなことを知っているかというと、そのキース本人から協力を持ち掛けられたからだという。

「そもそも、ことの発端はあなたよ」

「え⁉ そうなのか?」

 聴けば、フィオナが幸せそうにしていることが増えたのがきっかけだとか。

「『姉が安心して過ごせる家を作りたい』か。あの子も言うようになったものね。まあ、あのくそ親と自己中なバカに制裁を加えるのには大賛成。しかも最近になって、フィオナを排斥しようとする動きがあるみたいだし……」

「なに? どういうことだ!?」

 思わず声をあげる。侯爵家の方までやるとサクヤたちに負担がかかりすぎると思って後回しにしていたが、まずったか?

「あなた、フィオナの妹ってわかるわよね」

「ああ。夜会の前に侯爵家の屋敷で会った」

 あの色仕掛けしてきた子だよな……。あまりいい印象はない。

「あれは酷い癇癪持ちでね、なんでも自分の思い通りにならないと気が済まないのよ。ま、わがまま放題で育てられたんだから当たり前よね。」

 エレオノーラ嬢は軽蔑したような表情で話した。

「弟がそれを反面教師にして真面に育つなんて皮肉としか言いようがないけど。それで、あの子は評判がよくなったあんたが欲しくなったみたいで、両親に泣きついたのよ。あれに甘い両親はそれに頷いた。でも、上手くいかなかったからフィオナを排斥しようとしているってわけ」

 まあ、元からフィオナを嫌ってたからってのもあるんでしょうけど、と小声で呟く。それから、フィオナには見せちゃいけない感じの黒い顔で言った。

「———それで私思ったのよ。……フィオナの害悪にしかならない家族なんて、いなくてもいいんじゃないってね? 少なくともキース君はそう思ったみたいだし」

 そう言いながらこちらを見るエレオノーラ嬢は迫力満点で……。俺もフィオナの家族について思うところがないわけではない……が、明言は避けた。

 そんなわけで今、密かに、だけど確実にそれは進行中なのだと。証拠がそろえばすぐにでもあちらは動くつもりなんだそうだ。

「まあ、それも時間の問題でしょうけど。それと、伯爵夫人もこれには協力してくれると言ってくれたわ。フィオナのためならってね」

 いつの間にか母とも協力関係を結んでいた様子。いつだ? フィオナが魔法の話をした後か? まあいい。

「それはもう避けられないわけだ。それならそちらに任せる。代わりに学園内のことは全力でやることを約束しよう」

「しくじらないことね」

 エレオノーラ嬢はそう言って不敵な顔で笑った。

 それから、細かい部分の打ち合わせを行って部屋から出る。……すごい緊張した。やはりなんというか、気迫がすごい。彼女が敵でなくて心底よかったと思う。

 でも、これでまた心強い味方ができた。それもこれもほぼフィオナの人徳に依るものが大きいが、それだけフィオナが魅力的であるということだろう。侯爵家でも動きがあったのは焦ったが、あちらはエレオノーラ嬢や母が上手いことやってくれるようだし、俺は学園の方に集中しよう。

 卒業パーティーまで後1か月。……やり遂げるぞ!

 学園以外でもいろいろと事態は動いていました。

 次の更新は3月3日(金)を予定しています。それでは、また!

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