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SS ダメ男、騎士団で働く③

 ブックマーク・評価・感想・誤字報告など、いつもありがとうございます!

 またずいぶんとあいてしまいました。最初は2か月ほどと言っていたのに、もう4か月以上経とうとしていて、申し訳ない気持ちです。それでも、待っていてくださっている方々がいることに感謝しています。

 できれば新年から本編の更新を再開したいとは思っていますが、まだ未定という状態です。めどが立ったらお知らせしたいと思います。


 追記:指摘していただいた誤字を修正しました。ありがとうございます。

 ガササッ!

 討伐が完了し、倒したボアを引き上げようかといったところで、再び草むらが動く。

「! 警戒!」

 俺よりも早くそう叫ぶ声が聞こえ、すぐさま臨戦態勢に移行する。草むらをかき分け現れたのは、またしてもボア。先ほどまで相手にしていた奴よりも若干小さい。

 そのボアは大勢いる騎士団員たちを見るや慌てたような声で鳴き、別方向へ走り出した。逃げる気か!

「追うんだ!」

 出された指示を聞くや否やダッと走り出す団員たち。俺もすぐさま後を追う。

 ボアの脚は早く追い詰めるのは大変だったが、他の捜索隊のひとたちの協力もあり、何とか罠の方に誘導して倒すことができたのだった。


 それからが大変だった。ワイルドラージボアは肉、皮、骨や牙など、使える部分が多いため、亡骸を回収するとのこと。放っておくと他の魔物を引き寄せるからという理由もあるみたいだが。風魔法などを使って穴から出した2匹のボアは圧巻だった。特に背中から2本、口の横から4本生えている牙が強い存在感を放っている。

「もう少ししたら控えのやつらがこいつらを運ぶ道具を持ってくる。それまでに血抜きなどの処理をするぞ」

「はい!」

 号令一下、素早く団員達が動き出す。俺もボアを持ち上げたり足を切り落としたりと、いろんな人の補助をしながら時間を過ごした。この場所では最低限のことだけをして、残りは町に持って帰ってからやるそうだ。森の中でやり続けるのは危なそうだもんな。

 その存在が探知範囲に入ったのは作業が終わろうとしているときだった。数は……8。

「何か来ます!」

 周囲の警戒をしていた団員の声が響き、すぐさまその場にいた全員が臨戦態勢になった。俺もすぐに魔法を放てるように構えた。そして現れたのは、8体のオオカミの魔物。

「! ロックウルフだ」

 どうやらそれがこの魔物の名前らしい。ロックウルフたちは低いうなり声をあげながら俺たちを……正確には俺たちの傍にあるボアに目線を向けていた。……よく見てみるとどの個体も痩せているように見える。飢えているのか……?

 そんなことを思ったまさにその瞬間、ロックウルフたちは雄たけびを上げてこちらに突っ込んできた。

「っ! 陣形を整えろ! 討伐だ‼」

 すぐさま支持が飛び、騎士たちが2列に並ぶ。俺はその後ろ側に並んだ。戦闘に入ると、前に並ぶ人たちが魔法で壁を作りロックウルフを阻んだ。そして後ろに控える人たちが魔法を放って攻撃する。俺も氷の槍を飛ばして攻撃するが、皮膚が堅いのかダメージがあまり通っていないように見える。体の表面も少し凍り付いてはいるが、あまり動きに変化は見られなかった。

 見れば、他の騎士団員たちも大体魔法で攻撃していて、剣を使う人はいない。おそらく生半可な打撃は訊かないのだろう。

「慌てるな! 一点集中で貫くか、腹側を狙え!」

 一点集中……。なら!

 俺は壁に取りついて越えようとしている一匹に向けて速さ特化型の”アサルト”を放った。それはロックウルフの片目に命中し、ウルフは悲鳴を上げて壁の向こう側に弾き飛ばされる。

「へえ! こりゃあ負けてられねえ、なあ!」

 そういうや否や、シアンさんは壁を飛び越えて来たウルフに片手で持った盾で体当たりしてのけぞらせ、その腹に剣を突き刺す。他の団員達も、地面から木の根を槍のように突き出したり、水や風で動きを妨害したところで腹や関節部などに攻撃を加えていた。

 半分以上を倒したところで、流石に分が悪いと思ったのか、ウルフたちが向かってくるのを躊躇し始めた。

 だが一匹だけ、諦めきれないのか突撃してきて、最期の意地と言わんばかりに壁に飛び乗り、跳躍してきたのだ。

 それはまさに騎士たちが固まる中心に突っこんでくるような軌道を描いていた。

”危ない!”

 俺はとっさにウィンドカッターを放つ。それはウルフの鼻っ面に直撃した。それと同時に騎士団員が放った他の魔法も殺到し、あっという間に倒された。

 それが決定打になったのか、ウルフたちは逃げ腰になり、後退し始めた。

「逃がすな! 今倒しきる! かかれ!」

 号令一下、騎士たちが突撃を始める。残ったウルフたちを倒すのにそう時間はかからなかった。


「いやあ最初はどんなボンボンが来るのかと思ってたけど、初めてにしちゃあ上出来な動きだったぞ! どうだ? 学園卒業後は第3騎士団に来いよ。優秀な奴は大歓迎だぜ」

「ありがとうございます。前向きに検討してみます」

 帰りの馬車の中で、俺はシアンさんやレノさんからそう声をかけられていた。あれから到着した人たちと共にボアを町まで運んでいくと、他の部隊も戻ってきていて、それぞれ討伐したボアやウルフを持ってきていた。そこでの情報共有でウルフがまだいる可能性を考慮して次の日は罠の後始末をすると共に森の探索をすることになった。俺は罠の後始末の方を行い、その後は交代の騎士の方々と一緒に王都に帰ることになったため、探索が今どうなっているのかはわからない。

 だけども、これでひとまず騎士団での仕事は一旦終わりだ。領地でも騎士団と行動を共にしたけど、それとはまた違ういい経験ができた。週末にはフィオナとのダンスの練習があるし、休んでいた分の課題とかもやらなければいけないな。

 ……そういえば、ロックウルフと戦ったとき、最後に放ったウィンドカッター、とっさに放ったからか少し違和感があったんだよな。本当にとっさだったからあんまり覚えていないけれど、この感覚はなんだか大事なことのような気がする……。さらに魔法を磨けそうな、そんな感じが。

 こうして、俺の騎士団での見習い体験は幕を閉じたのだった。

 騎士団編はこれで終了です。次回はまた別のお話になる予定です。

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