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第2章 2-1 4日目 ダメ男は厨房を訪れる

今回から、第2章が始まります。新たな登場人物が現れたり、行動範囲が広がったりと、物語として少しずつ進んでいきます。ぜひ楽しんでいってください‼

 今日は午前に訓練を、午後は勉強と魔力の制御に充てよう。朝食を終えると、早速訓練場まで歩く。準備運動としてラジオ体操をしてから、ストレッチを行う。よし、行くか。ランニング、筋トレ、素振り。一通りこなすと、さすがにくたくたになる。ちょっと休憩。芝生の部分に腰を下ろす。……まだお昼までは時間があるな。どうするか。とここで育ち盛りの体がぐううぅと悲鳴をあげた。なんだかおかしくなってしまった。はあ。しょうがない。何かつまめるものがないか厨房に行ってみるか。

 立ち上がった俺は、屋敷に戻って着替えてから、厨房に向かう。この家には料理人が雇われていて、毎日おいしい食事を食べさせてくれる。確か、料理長の親子とレオンは知り合いだ。なにかくれるかもしれない。

 厨房に着くと、ちょうど自分と同じくらいの男が出てきた。確か名前はトール。料理長夫婦の息子で、新人として頑張っている。昔は一緒につまみ食いをして怒られた仲のようだ。本来ならば身分差があるのだが、そんなことは関係なく悪友のような付き合いであるらしい。

「お! レオンじゃねーか。なんか食いに来たのか?」

「あー……。少し小腹が空いてな」

「悪いけど、今親父が昼食で行き詰っててな。なにも出せそうにないんだ」

「そうか。……ところで、何で行き詰ってるんだ?」

「ああー。今日はパスタなんだが、いつもと違うパスタを出したいって急に親父が言い出してよお。困ってんだよ」

パスタか……。確かこの世界のパスタは、太さはいくつかあるものの、前世でも一般的な細い麺状のものだけだったはずだ。

「もう時間もないからさ。今日は諦めようって今他の料理人たちと親父を説得してるところなんだ」

 やれやれといった感じのトールに試しに聞いてみる。

「……なあ、パスタの準備はどれくらいまでできてるんだ?」

「ああ。……トマトソースはもうできてる。あとはパスタの麺だけだな。それがどうかしたのか?」

「そのパスタの生地ってあるか?」

「ちょうどできたところだけど……」

「それ、ちょっと見せてくれないか?」

「別にいいけど……」

 トールの許可を得て、厨房内に入る。端の調理台の上には、鮮やかな黄色をした生地が置いてあった。まだ切られていない、一枚の大きな生地状態だ。よし、これならいけるかも。

「トール。ちょっと俺が指示する通りにこれを切ってくれないか?」

「は⁉」

「いつもと違うパスタ、作れるかもしれない」

 トールはしばし逡巡していたが、ちらりと厨房の反対側から聞こえる喧騒に意識を向けた。

「……わかった。やってみるわ」

「ありがとよ。失敗したら、それは俺の分でいいからさ」

「何言ってんだよ。そんなことさせられるか。そん時は俺が食うさ。んで、どうしたらいい?」

「ああ。まずは……」

 トールに指示して、生地を2×4センチくらいの長方形に切ってもらう。……ちょうどいい感じだな。

「この後はどうするんだ?」

「後は、この四角の真ん中部分を中央に寄せて、リボンみたいにすれば完成だ」

 名前は覚えていないが、確かこんなパスタを前世で食べた記憶があった。これなら普段とは違った食感が楽しめるのではないだろうか? トールは出来上がったそれを見て、しばし考えていたかと思うと、さらに生地を切り出し、次々と同じものを作っていった。そしてそれを皿に盛って、料理長の所に持って行った。

「親父! これを見てくれよ!」

「ああん⁉ ……なんじゃこりゃあ⁉ これはパスタか?」

「ああ‼ レオンがこうしたらいいんじゃないかってよ」

「レオン様が⁉ ふむ……この形は、今まで見たことがない。薄い部分と厚みのある部分があることで、様々な食感が楽しめそうだな……。トール。これはまだ作れるか?」

「生地はたっぷりあるぜ」

「よし、お前ら‼ 今日のパスタはこれを使う! 準備に取り掛かれ!」

『はい!』

 すぐに料理人たちが動き出す。トールもまた作業台まで戻ってくると、生地を切り始めた。……邪魔になりそうだから出たほうが良さそうだ。

 俺は邪魔にならないように、そそくさと厨房を脱出したのだった。……結局何もつまめなかったな。

 昼食には、さっきのパスタが出てきて、父上や母上をたいそう驚かせた。あれからパスタに合うようにソースを改良したのか、ソースがからんでとてもおいしかった。……あとで料理長とトールにはお礼を言われた。俺が食べたかっただけだから、お礼を言うのはこっちなんだけどな……。ちなみに、あのリボンの形のもの以外にも、筒状のものや、ねじった形のものもあるというと、ふたりとも目を輝かせて、色々作ってみたいと張り切っていた。……何か食べたいものがあったら、また協力してもらおう。……しかし、この世界、前世でも見慣れた食べ物が結構多いんだよな。なんでだろう?


 午後はまず、魔力を感じる練習から始めた。起きている間は、なるべく魔力を意識するようにしていたのもあって、前よりも揺らぎが少なくなった気がする。あと、屋敷の中や、外の修練場でもやっていたところ、使用人や騎士たちの魔力も見ることができた。やはり体を包み込むように展開されている。特に騎士たちは見ていてとても勉強になったな。足や腕に魔力が集中していたのは、身体強化の魔法の一種のようだったし、魔法を放つ時には、魔力が手に集まってから放出されていた。……今やっているのができるようになったら、今度は体内の魔力を操作する練習をするかな。

 座禅状態で瞑想していたら、修練場にいた騎士の人たちに座禅について聞かれ、座禅による瞑想の方法なんかを教えるという一幕もあったが、少しずつ安定するようになってきた。さぼっていただけで、もともと素質はあったのかもしれないな。

 夜は学園の勉強をする。重点的にやるのは、社会と魔術、礼儀作法だ。

 まず社会だが、基本的な部分はいくらかわかる。でも、それ以外がほとんど分かっていない。覚えることは結構ある。歴史もそうだが、地方の特産品だったり、貴族と王族の関係性だったり、他国との関係性だったりとかな。読んでいて驚いたのは、「魔王」という存在がいたことだ。RPGとかだと、世界征服をたくらんだりすることが多い印象がある。実際、過去に魔王が他の国へ侵攻したこともあったらしい。だが今は平和的な関係を築いているみたいだ。

 しかし、今でも魔族や魔族がよく使う闇魔法を毛嫌いする人は多く、交流はそこまで無いようだ。……国家間の対立とかがあるのは異世界でも同じなんだなとしみじみと思う。ちなみに、レオンは魔族や闇魔法を毛嫌いしている側だったようだが、俺は特にそんなことはない。前世での魔女狩りやら人種差別などの知識がある身としては……な。

 その後、魔術や礼儀作法もやって思ったのは、読んでいるだけではよくわからない部分が多いということだった。やはり実践が一番か。社会も覚えることが多い。学園に戻ったら、分からない所を質問しに行こうかな。

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