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プロローグ ~ある男の人生の終わり~

こんにちは‼ わざわざ読んでいただいてありがとうございます。

初投稿の拙い文章ではありますが、楽しんでいただけたら幸いです。

「あなたの余命は、もって1年でしょう」

 病院に呼び出され、医者から聴かされた言葉の意味が、最初は理解できなかった。

「ど……どういうことですか?」

恐る恐る尋ねると、返ってきたのは、自分の体ががんに侵されていること、治療は難しいこと、できるとしても、多少生きられる時間が延びるだけ、ということだった。

「そ、そんな⁉ 何かの間違いなんじゃ⁉ まだ30代なんですよ‼」

共に来ていた妻が、動揺して震える声で聴き返す。が、返ってきたのは、先ほどと変わらない答えだった。

 妻が医者を質問攻めにしている横で、私はこれからのことを考える。本当は、とても動揺しているはずなのに、なぜか頭は冷水でもかぶったかのように冷静だった。妻の声を聴きながら思ったのは、妻と、ふたりの子供のこれからのこと、残りの時間の過ごし方、後はがん保険のお金が出ることだった。なんでかは分からないが、不思議と死ぬことを受け入れている自分がいた。子供たちはまだ義務教育のさなか。成長をまだまだ見守りたいし、できたらいつか孫を抱きたいと思っていた。仕事だって、おもしろくなってきていた所なのに。妻の里香とも、これからも生活を共にしていけると思ったのに……。

 医者の説明によれば、私の症状は、テレビなどでよく見るような、入院して、手術やレーザー治療をするようなものではなく、服薬すれば家でも生活できるものなのだという。もちろん、家での療養を選んだ。

 それから約1年の間、私は時間と身体の許す限り、家族と思い出を作った。旅行に行き、遊びに連れて行った。家でも遊んだ。前よりもずっと、1日の重さが重く感じる。死を意識して、生きていることの尊さを知るものなのだと、改めて理解した。

 そして1年が過ぎ、私の体は、限界を迎えようとしていた。

 病室のベッドの周りには、家族が集まっている。妻の里香。長女のあおい。長男の裕翔。妻は手を握って、私の顔を見ている。必死で語り掛けてくれていた。あおいと裕翔は、泣いていた。

 そして、ふっと意識が遠のいていく感覚があった。もうお迎えがきたらしい。最後に私は、里香の方を見ると、口を動かす。

(ありがとう)

声に出ていたかどうかなんてわからない。でも、短い人生だったけど、温かい家族に囲まれて、幸せな人生だったと思う。悔いがないと言えばウソにはなるけど……。

 そうして私——―藤谷慎吾は、その生涯を終えた。


「——―と思っていたのに、これはいったいどういうことなんだ⁉」

 意識が遠のいて、すべてが暗転したように感じた。でも、誰かの声が聞こえたと思った瞬間、意識が鮮明になる感覚がした。

 目を開く。……病院のものとは違う天井だ。ゆっくりと体を起こした。

 寝たきりだったせいか、体は重くだるかったが、なんとか身を起こす。

そして目に映ったのは、絨毯の敷かれた立派な部屋だった。西洋の宮殿で見るようなテーブルやいす、家具があり、自分の寝ているベッドも、四方をレースで囲まれた、所謂「天蓋」というのがついている。そして、自分の体を見てみると、それは30数年慣れ親しんだ「藤谷慎吾」のものではなく、明らかに、10代の子供のものだった……。



 私は、婚約破棄や、乙女ゲームが題材の作品を読んできたのですが、読んでいるときにふと、「もしヒロインに攻略されている最中の攻略対象者が、突然正気に戻ったらどうなるんだろう?」という疑問が浮かび、それがこの作品の始まりでした。

 スローペースになるかと思いますが、精いっぱい書いていきます。

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