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赤いサンタと青いサンタ

作者: 龍
掲載日:2020/12/24

ジェド・マロース・・・ロシアのサンタクロース。大みそかにやってくる。

雪娘(ゆきむすめ)・・・スネグーラチカ、とも言う。みなしごであったり、雪でできた女の子であったりする。

ネコ・・・モンゴル平原に住む、マヌルネコ。

 いつもより仕事(しごと)が早(はや)く終(お)わったサンタクロースは、夜明(よあ)けの空(そら)を見(み)ながらウオッカを飲(の)みました。

「サンタさん、少(すこ)し休(やす)んだらどうだい。もう一杯(いっぱい)飲(の)みなよ、さあ、さあ」

 赤(あか)い鼻(はな)のトナカイがしきりに勧(すす)めます。サンタクロースはウオッカをひと瓶(びん)飲(の)み終(お)えると、ソリをトナカイたちに任(まか)せ、ひと眠(ねむ)りする事(こと)にしました。


***


 サンタクロースが乗(の)ったソリが気温(きおん)マイナス三十度(さんじゅうど)の乾(かわ)いた大地(だいち)に着(つ)くと、馬(うま)が三頭(さんとう)、待(ま)っていました。

「では、頼(たの)むよ」

「おつかれさまでした。良(よ)いお年(とし)を」

「良いお年を」

 トナカイたちは馬たちに別(わか)れを告(つ)げ、行(い)ってしまいました。


***


 人(ひと)っ子(こ)ひとりいない雪原(せつげん)の、あなぐらの中(なか)からネコが現(あらわ)れました。そのネコの毛(け)はフサフサとしていて、ずんぐりした体(からだ)の、手足(てあし)は短(みじか)く、耳(みみ)はまあるく、少(すこ)し怒(おこ)ったような顔(かお)つきをしています。ネコは、雪娘(ゆきむすめ)が来(く)ることをサンタクロースに知(し)らせるために、あなぐらから出(で)てきたのでした。それがネコの、仕事(しごと)なのでした。

「起(お)きなさい、ジェド・マロース。雪娘が来(き)ていますよ」


***


 雪(ゆき)のように白(しろ)い顔(かお)の女(おんな)の子(こ)は、眠(ねむ)っているサンタクロースに、青(あお)いローブを着(き)せました。その女の子は、雪娘(ゆきむすめ)、といいました。

「おじいさん、起(お)きて下(くだ)さい。子供(こども)たちが待(ま)っていますよ」


***


 雪娘(ゆきむすめ)の声(こえ)で、サンタクロースは、目(め)を覚(さ)ましました。

「いかん、寝過(ねす)ぎたようじゃ」

「おじいさん、杖(つえ)ですよ!」

 雪娘が、大(おお)きな白(しろ)い杖(つえ)をサンタクロースに手渡(てわた)しました。すると、サンタクロースは元気(げんき)になって、ぴょんと飛(と)び起(お)きました。

「ほいきた!」

 サンタクロースは、輝(かがや)く魔法(まほう)の杖をひとふりしました。すると、冷(つめ)たい風(かぜ)が吹(ふ)きました。

「そらきた!」

 サンタクロースがもういちど魔法の杖を振ると、雪が降(ふ)り、太陽(たいよう)が隠(かく)されました。

 あんまりにも冷(つめ)たい風(かぜ)が吹(ふ)くので、街(まち)には人(ひと)っ子(こ)ひとり、いなくなりました。家々(いえいえ)には灯(あかり)がともり、家族(かぞく)や友達(ともだち)、親(しん)せきにご近所(きんじょ)さん、そしてたまたまそこに通(とお)りがかった旅人(たびびと)が集(つど)います。

 千個(せんこ)のお饅頭(まんじゅう)をみんなで食(た)べるために、夜通(よどお)しお饅頭をこねる音(おと)や、話(はな)し声(ごえ)が絶(た)えないのでした。


***


「おじいさん、行(い)きましょう!」

 サンタクロース……いいえ、ジェド・マロース(寒さ爺さん)は雪娘(ゆきむすめ)と一緒(いっしょ)に、子供(こども)たちが待(ま)つ、新年(しんねん)のお祝(いわ)いに向(む)かいました。


***


「ちぇっ、いいなあ。おれも新年(しんねん)のお祝(いわ)いに、行ってみたいものだ。だけど、おれは呼(よ)ばれていないものな」

 ネコは寂(さみ)しそうにつぶやくと、温(あたた)かいあなぐらで丸(まる)くなりました。あなぐらのネコの寝床(ねどこ)には、ジェド・マロースからの贈(おく)り物(もの)……新年のお祝いの、招待状(しょうたいじょう)が入(はい)った封筒(ふうとう)が、置(お)かれていました。封筒には十三匹(じゅうさんびき)の動物(どうぶつ)の、輪(わ)が描(か)かれていました。その輪は、初(はじ)めがネズミで、ネズミはしんがりにいるネコの、しっぽをくわえているのでした。それを見(み)たネコは、嘆(なげ)きました。

「なんて嫌(いや)な絵(え)だ。ネズミに四六時中(しろくじちゅう)追(お)いまわされるのは、ごめんだよ」

 その夜(よる)、ネコは新年のお祝いに行きませんでした。村(むら)の長老(ちょうろう)、ボルじいさんの家(いえ)のネズミを捕(つか)まえてお腹(なか)いっぱいになり、そしてまた眠(ねむ)りました。


***


「おじいさん、今年(ことし)もネコは、来(こ)なかったわね」

 雪娘(ゆきむすめ)は、悲(かな)しそうな顔(かお)で言(い)いました。すると、ジェド・マロースは言いました。

「本当(ほんとう)の願(ねが)いは、本人(ほんにん)にすら分(わ)からないものなのさ。わしがどうして、ネコの本当の願いをわかるというんだい?」

 ジェド・マロースの赤(あか)い鼻(はな)を、つん、と突(つ)っついて雪娘は言いました。

「そのひとが本当に欲しいものを探(さが)してくるのが、おじいさんの仕事(しごと)なのよ!」

 するとジェド・マロースは「あいつは人(ひと)じゃない、ネコじゃあ」と言って、杖(つえ)を放(ほう)り投(な)げてしまいました。

「もう、おじいさんったら!」

 雪娘は魔法(まほう)の杖を拾(ひろ)うと、胸(むね)に抱(いだ)きました。

「ふむふむ」

 ジェド・マロースは、青(あお)いローブと、赤(あか)い服(ふく)を脱(ぬ)いで、暖炉(だんろ)の前(まえ)でパイプをくわえ、ロッキングチェアを揺(ゆ)らして、くつろぎ始(はじ)めました。ゆれる火(ひ)を見(み)て、雪娘の空色(そらいろ)の目(め)が、すみれ色になり、輝(かがやく)く金色(きんいろ)の髪(かみ)は、くすんでしまいました。

「おじいさん、おやすみなさい。わたしも休(やす)むわね、疲(つか)れてしまったから」

「スネグーラチカや、そうしたらいいよ。おやすみ」

 雪娘は魔法の杖と一緒(いっしょ)に、行ってしまいました。


***


 そして一年(いちねん)の大仕事(おおしごと)を終(お)えたジェド・マロースが衣(ころも)を脱(ぬ)いで南(みなみ)の島(しま)にバカンスに行く頃(ころ)、北(きた)の大地に、短い春(はる)が来るのです。 

参考資料

ロシアの民話「ゆきむすめ」 岸田矜子・文 スズキコージ・絵

モンゴルの民話 松田忠徳 訳編

暮らしの情報・雑学広場「ジェド・マロース:ロシアの青いサンタの物語と海外のサンタの手紙」より

https://climbingfan.work/3018.html 2020/12/24閲覧

とあるモンゴル人のお話「モンゴルのサンタは青い服です。そしてクリスマスはモンゴルには無いです。大晦日に、サンタが来ます」より

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― 新着の感想 ―
[一言] 年跨ぎついでで、まさかの節分明けながら読ませてもらいました。稲村某でございます。 サンタ、と言ったら子供だけの存在に思えますが、本当は動物達にだって寄り添ってくれるなら……とみたいな感じで…
[良い点] 冒頭からサンタさんがウォッカ飲んでる時点で満点ですね!(๑˃̵ᴗ˂̵) サンタさんも休んで飲んで欲しい! 「千個の饅頭をみんなで食べるために夜通し饅頭をこねる」とか、ギネスに挑戦みたいな光…
[一言] ロシア正教のサンタさんだわ~! 珍しい内容の作品きたーと読み進めていたら、十二支のお話まで絡んでいる素敵ワールドでした。 仕事が早く終わったらウォッカを飲んだくれているサンタさん、雪国らしく…
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