4-8 P・V・P
年末年始企画で複数回更新ですわ
「また知らない女が増えてる…」
「なんかハーレムもののファーストヒロインみたいなセリフが口から漏れてるよ?」
ヨルムが王都からついてきてしまったのだ。
見た目は女の子と言うかメイドだが、ヨルムが女かは分からない。
特にこのゲームはキャラクターを眺めるためにプレイしている者も少なくないので、そう言うプレイヤーも、まあ、いる。
ゲームプレイヤーにはキャラクターになり切るタイプと、キャラクターはキャラクターとしてそこに居るものとして愛でるタイプのプレイヤーが居るのである。必ずしも良からぬ事をしようとか考えているとは限らないのだ。油断は禁物だが。
ちなみにハーレムものの最初のヒロインは主人公の世話を焼いている割に不遇な娘が多い、のではないだろうか。
「アナスタシア様と違って、ガチでスタッフらしい」
アナスタシアは冒険している形跡がないのにPKKばかりしていたのでスタッフ説が流れていた。
「え、そんなの拾ってきちゃって大丈夫なの?」
「拾ってきちゃってって、犬猫じゃないんだから…。それに連れてきたんじゃなくてついて来ちゃっただけだし…」
「その言い方の方が動物っぽいよ?」
「そお?」
立花姉妹、もとい、ここではイノとリッカ、がヨルムについて話している。
今日はまだ他の人たちは来ていない。
「と言うか、ヨルムはこんなところでウロウロしてても大丈夫なの?」
「うむ、ワシは別にどこにいても変わらんし、何より、そもそもワシが遊びたいからこの世界を作ったのじゃし、そんな管理みたいなことばかりしていては意味がないのだ」
「どっかのフリーゲーム作者みたいなこと言ってるし…」
「とは言え、私は全然レベル上げしてないから、私についてきても何もないよ?」
他の3人はイノが居ない時は上位エリアに行くし、アナスタシアは普段はプレイエリア以外にまで行く。だが、イノがいる時はだいたい初心者エリアだ。
「まあ、ワシは別にモンスターと戦ったりするわけではないからな。それは気にしておらん」
「ああ、そうか。それに自分で作った世界だから、どこにどんなのが居るとか知ってんだもんなぁ」
「そうじゃの。とか言っている間に、何やら向こうから来た様だが? くっくっく」
「ここでPKすっとアナスタシア様が出るって聞いて来たんだが、なんかラスボスみたいなのが居るんだが…」
大剣を担いだ大男が現れた。
キャラメイクで作れる身長は180cm程度までだが明らかにそれよりもデカい。
おそらく本人が2m近い身長の巨漢なのだろう。
相手の能力が分かるスキルを持っている様で、見た目はコスプレ幼女のヨルムの力を見抜いている様子。
「くっくっく、ワシと戦いたくば、まずは四天王を倒すことだな」
「四天王って2人しか居ねえじゃねえか」
「今日はまだログインしておらんのじゃ」
「雰囲気台無しだな」
「と言うか、勝手に四天王にしないでくれる?」
リッカがヨルムに噛みつく。いや、実際にかじりついたりはしていないが。
「まあ良いや。なんか面白そうだしやろうぜ、対人戦」
「えーと、私は遠慮したいかな」
イノが両手を上げる。
「そう言うなよっ」
巨体に見合わぬスピードで切り込んでくる大男。
ゲームなので身長は関係ないと言えば関係ないのだが、ちょっとずるい。
「おっとっとっと…」
上段から振り下ろされた大剣を身をよじって横に避けるが、そのままの勢いで横薙ぎにされてジャスト回避で大剣をすり抜ける。大男の身長ほども刃長がある大剣だが上手く躱せば当たらない。ゲームなので。
「なかなかやるじゃねーかっ」
「まあ、躱すのはそんなに難しくはないんだけど、攻撃する武器がないんだよねー」
大男のHPが5だけ減っている。
いつの間にかイノが抜剣していた。
2人が交差するたびに5〜6ずつHPが減っていく。
「なんだ?」
「一回の攻撃で入っても1しかダメージ入らないんだよね」
「ちょっ、な、んだと?」
イノの剣は初期武器+3だ。
さすがにそのままの初期武器では雑魚を倒すのも大変なので、ちょっとだけ強化している。
それでも、雑魚相手に10回くらい斬りつけないと倒せないのだが、イノは一瞬で10回切れるので、最近は雑魚なら「見た感じ」一撃で倒せる様になってきた、のだ。
「くそっ、せっかく大物を見つけたのに四天王の一角も崩せねえのかよ、なんてこった」
「ここは、私は四天王の中でも最弱、とか言った方がいいのかしら」
実際レベル5だ。
「きょ、今日のところは一旦引き上げるが、そのうちまた来るからな」
そう言うと大男は名乗りもせずに立ち去っていった。
まあ、頭の上にグラブって書いてあるんだが。
「と言う様なことが何度かあって…」
「なぜかワシまで怒られたのじゃー」
「ヨルムは運営側じゃないの?」
「この格好でここにいる間は管理を手伝ってもらっている会社の連中に怒られるのだ」
「うんまあ、プレイヤーみたいなもんだしね」
「ぐぬぬぬ」
「と言うわけで初心者エリアから出られる様にちょっと頑張らないといけなくなった」
特にどうでもいいけど、と言う感じで、イノが呑気に言うのだった。




