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4-4 ログイン

えと、年末特別企画、同じ日に更新だよ

その日、初心者向けエリアの街にある冒険者ギルドのロビーは騒然としていた。

普段はこんなところに居ない様な上位プレイヤーまで集まってきている。

待ち合わせ用のスペースに見慣れぬキャラクターが降臨していたからである。


銀髪にドレス風のコスチューム、白い鞘に納められた刀、そして何よりその名がアナスタシア。

伝説とまで言われたキャラクター、アナスタシア様が何故か今ここに居るのである。


「お、おい、あのアナスタシアって…」

「いや、流石になりきりプレイヤーだろ…」


キャラクターメイクの調整幅に限界がある以上、そっくりキャラを作ることは然程難しくないし、名前の被りも可能だ。特に悪質なことをしない限り問題視されることもない。


「でも、あれ、あの刀、孤月だろ、ユニークアイテムの…」

「え、じゃあ…」



しばらくして、1人のプレイヤーがログインしてきた。


「み、イノさん」

アナスタシアが嬉しそうに手を振ってきた。

結構広いのにログインした瞬間に気がつくとは、なんと言う反射神経。


「そんなに目立つかな、このキャラ…」


他にも初期コスのプレイヤーは何人かいるし、髪の色も千差万別。個性豊かなキャラもいる。


駆け寄ってくるアナスタシアは先日のイメージよりずっと小さくて可愛い。

と言うか、14歳のままなのか?

命がこの世界に帰ってきたときの様に、時間がずれているのかもしれない、などと考えこんでしまう。


「イノさん?」

「あ、ごめんごめん。今日はよろしくお願いします」

「おまかせください」

ムフーと胸をはる姿が愛らしい。


今日は妹の帝が学校に言っている間、アナスタシアに案内してもらう事にしたのだ。

むしろ、妹が居ない隙にアナスタシアに会いにきたと言えなくもなくもない。


「じゃあ、行きましょうか」

このゲームはおかしな事にフィールドに出ると見下ろし型アクションゲームになってしまうので、まじまじとアナスタシアを眺められないのはちょっと残念だと思いつつ、アレはアレで可愛いから良いかと、2人連れ立って幽体離脱、もとい、冒険者ギルド、ロビーを出る。


軽く街の中の案内をしてもらう。初期街なので当然大したアイテムは置いてない。

変わっていると言えば軽食屋があって、そこもロビーの様なバーチャル空間になっていて、食べ物を楽しめる事だろうか。健康を考慮しているためか食べてもお腹いっぱいにならない。と言うことは、甘味などをここで食べまくればダイエット出来るのでは? いや、まあ、ログインしている間はどちらにしろ間食とかしないが。


と言うか、アナスタシアとデートはちょっと破壊力がある。

小さなテーブルを挟んで向かい合って座り、小さな口でチョコチョコとスイーツを食べる姿を眺めてるだけでもお腹いっぱい胸いっぱい感…。たまにこちらの視線に気がついてにっこり微笑まれるとドキドキしてしまうよ、おじさん。いや、おじさんではないが。


街を見終わって次はフィールドに出る。

景色が綺麗なところ、薬草など採取がしやすいエリア。狩場など教えてもらいつつアイテム集めにレベル上げ。あまりゲームをする方ではなかったが意外と楽しい。


ちょっとあの世界での生活を思い出す。


初心者向けのエリアにも雪山、平原、森、海岸なんかがあるが、総じて広く戦いやすく出来ている。

上級者エリアになると狭かったり足場が悪かったりするようだ。

ダンジョンなんかも中級者エリア以上らしい。


「ところで、アナスタシア様はリアルではどこに住んでるんです?」

「リアル?」

「ゲームしていない時」

「ゲームしていない時?」

「え?」

「え?」


「なるほど、イノさんは本当は別の世界から来ているのですね。どうりで雰囲気とかかなり変わったなと」

「いや、うん、そうな」

どうやらアナスタシアはこのゲームの世界に普通に住んでいるらしい。


「外の世界から来たプレイヤーとNPCと呼ばれる人たちとは別に、住人がいます。本来はエリアが別れていて、お互いのエリアに入ることは出来ないみたいですが、私は、ちょっとずるみたいで、行き来できるんです」

一部の役目のあるNPC以外のNPCは住人と交流があり交易を行っている。

正確にはNPCも一部の不死属性持ち以外はこの世界の住人で生まれて育ち年老いて死ぬ。


プレイヤーは生産やらなんやらをしているエリアに立ち入る事が出来ない。


「それで、そのエリアで寝泊りしているんだ」

「はい」


「はじめは、こちら側に迷い込んでしまった人たちを助けるためにプレイヤーを倒したのがきっかけでプレイヤー側に干渉する様になりました。プレイヤーと呼ばれている人たちは不死と言うか、すぐに復活する様なので」

「そうだね。死なないね」

「こちら側の身体は一時的な入れ物だったわけですね」

「そうだね」




命はゲームからログアウトした。


「ふう」

一人暮らししているマンションのリビングのソファーに座っている。

立ったままは危険だが、横にならなくてもある程度安定した椅子などでもプレイ可能なのだ。


見ると床が魔法陣の形に光った。

ゲームのログインエフェクトそっくりな物が空中に描き出される。


少し床から離れた空中にアナスタシアが現れて、ゆっくりと着地した。




「………ごめん、部屋の中では靴は脱いでね…」

世界観とかキャラ設定とか考えるの下手か。


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