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3-26 悪役令嬢誘拐事件

悪役令嬢が誘拐される回

「とーっ」

マーガレットの気の抜けた掛け声と共に路地からウィリアムが通りに投げ出され、走ってきた馬車が急停止する。

もともと賑やかだった通りが喧騒に包まれた。




街に遊びに来ていたアナスタシア、エミリア、ラダ、マーガレット、それにエミリアの兄ハリスは、侍女と騎士を連ねて通りを散策しつつ帰りの馬車との待ち合わせ場所を目指して歩いていた。


「歩きづらいからあまりくっつかないでよ」

「良いじゃないですか、ちょっとぐらい。ふふーふ」

先頭を歩くエミリアの右腕に縋り付く様に絡むアナスタシア、赤くなったエミリアが振り解こうとしている。

その後ろをラダとマーガレットが歩き、ハリスやお付きの者達はその後ろを追う様に歩いていた。


通りの真ん中を走る馬車が気になったラダが道の中央寄りに入りマーガレットを建物側に導いた。


次の瞬間、路地に隠れていた男がマーガレットの腕を掴んで路地に引き込んだ。

それを見たハリスが瞬間移動かと思うほどの速さで路地に駆け込むがそこで目にしたのはマーガレットが自分の腕を掴んだ男の手を逆の手で押さえつけ、そのまま自分の身体を回り込ませて捻りあげる姿だった。


関節があらぬ方向に曲がり耐えられなくなった男は自ら身体を投げ出し、通りへ転がり出たのだった。


「ははは、何かの達人みたいな動きだったね」

咄嗟に男を避けて壁に張り付いたハリスがマーガレットに話しかける。

「はれ?」

何が起こったのか分からないマーガレットが自分の手を見つめていた。


「大丈夫?」

ハリスにエスコートされる様にして路地から出てきたマーガレットにみんなが駆け寄る。

「ごめんなさい、私が余計な事をしたせいで」

「そんな、ラダさんのせいではありませんよ。たぶん私が一番拐いやすかったからかと…」

自分で言って少し落ち込むマーガレット。

まだ12歳かそこいらなので気にするほどの違いでもないが、小さい事をちょっと気にしているらしい。


「そうですね。私もたまに持ち帰りたくなります」

アナスタシアが引き寄せて頭を撫でる。

「あの、それは、ちょっと」

赤くなってラダの後ろに隠れるマーガレット。


 (((可愛い)))


マーガレットが投げた男は護衛の騎士が確保していた。

と言うか、投げられた衝撃で気を失っているらしい。


「すまない。そもそも私が腕を掴まれる前に割って入れれば最善だった」

「そんなむちゃな」

ハリスの謝罪に困惑するマーガレット。


「あの男は、えーと、確か…」

アナスタシアが眉を潜める。


「先日学園で問題を起こしたウィリアム ボードウェイド、だった男ですね。今はもうボードウェイド家がございませんが」

アーニャが説明する。

「そうそう、そんな名前だったかも? あの小汚い格好でどうやって学園に入り込んだのか調べてもらったのよね」

「衛兵と繋がっていて、その事件の後、連行するフリをした衛兵と共に逃走していました」

アナスタシアにと言うより、同行者に説明するアーニャ。


「なんて恥ずかしいやつだ」

ハリスが吐き捨てる様に呟いた。


その後、ウィリアムを衛兵に引き渡したり、状況を説明したりしたあと、疲れた一行は馬車の方を呼び寄せることにして近くのカフェに向かった。


「あれ? アナスタシア様は?」


気がつくとアナスタシアの姿がなかった。




「あら、牢屋ですの? 困りますわ、ドレスがシワになってしまいますし、せめて椅子を用意していただけないかしら」


「貴様、自分の立場というものが分かっているのか?」

アナスタシアを拐って来た騎士風の服装をした男が呆れる。


この男たちの服装は騎士の様だが、少なくともアナスタシアが知っている騎士団の制服ではなかった。騎士団の制服というのは警察の制服の様な物だから、無断で着ることは許されないし、勝手に似た様な服を着るだけでも疑われてもおかしく無い事だった。つまり彼らはどこか外国の騎士か、頭が残念な団体の人間、という事だ。


こんな事をしている時点で答えは一つだが。


「私は同行を請われたので、従ったまでですわ。こちらもあなた方に用がありましたから」

あの騒ぎに乗じてアナスタシアに声をかけたのだ。「連れの身に危害を加えられたくなかったら同行してもらおうか」という様な事を言われて。


ここは王城の裏を流れる河を渡った反対側、さらにしばらく馬車で移動した先にある、今は使われていないはずの城砦だ。長年にわたって城の背後を守る要所だったが、土砂崩れや河川の氾濫により地形が変わってしまったため、近くに別の砦が築かれ現在は放棄されていた。


その地下、薄暗い壁も床も石組みの部屋の半分が鉄格子で区切られ4つほどの牢になっていた。


「用だと?貴様何者だ」

「招いたゲストに向かって誰だお前とはおかしな人たちですね」

「このっ」

3人居る男の1人が逆上して斬りかかるが、目に見えない何かに阻まれて斬りつけることすら出来ない。


「な、なんだこれは」

驚いた他の男たちも剣を抜く。


「ちょうど良い具合に牢が空いている様ですし、しばらく反省していてくださいますか?」



こっから29話まで第3章最後の事件になります。

正確には一個前からかもしれないけども。


30話はまとめと言うかエピローグっぽい感じ。

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