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3-21 悪役令嬢VS聖女様

相変わらずほのぼの日常回

「ちょっとバーンシュタインさん、こっちに」

「あら、貴方から声をかけてくれるなんて嬉しいわ、愛しのエミリア」

両手を広げて駆け寄るアナスタシア。

「そう言うの良いから!!」



定期考査休み開けの朝、順位を張り出した掲示板の前は人だかりになっていた。

アナスタシアはテストの結果など興味がないので掲示板に向かうつもりはなかったのだが、普通に通り道に有ったため近くまで来たところでエミリアに呼び止められたのだ。


「試験結果で勝負よ、エミリア」

「何言ってるのよ、こんなタイミングで」

突然アナスタシアがエミリアを指差して勝負を吹っかけるが、相手にしないエミリア。


「んー、聖女様に勝負を吹っかけるのは悪役令嬢の役目だから、なんとなく言われる前に言っておかなければならないと言う気がして」

「誰よ、その聖女だの悪役だのってのは」

エミリアは美少女ではあるが聖女と言うキャラではない。

後ろで手を組んで身体をくねらせながらふざけているアナスタシアは、この国に銀髪に対する偏見がなければ妖精と呼ばれて当然と言うくらい幻想的な少女で悪役令嬢と言う雰囲気ではない。見た目は。


見た目は。


「そもそもテストの結果で勝負とか吹っかけたりしないわよ」

「確かに変な話よね。減点方式のテストで勝負って、何を競おうって言うのかしら。ふふふ」

エミリアも公爵令嬢として育てられ、膨大な知識と貴族としての生き方を叩き込まれているので学校の授業程度のレベルでミスを犯したとしても恥じることはあっても人と比べることはない。


「……貴方はきっとそう言うことを言うと思ったからこっちに連れてきたのよ」


そこは人通りの少ない職員用の部屋のある廊下の掲示板の前だった。

正面口の掲示板と同じ順位表が張り出されていた。


上からアナスタシア、エミリア、マーガレット、ラダだ。

「あ、私が一番上ですね」

ドヤ顔で拳を上げるアナスタシア。


名前の順である。


恐ろしいことに上位4人はノーミスで1位タイ。1位の次は5位だ。

たまたまアナスタシアは名前も前の方だから一番上だが、家格も影響している。


物語だと学園では身分は関係ない実力主義、などと言うものも多いが、学校はそもそも社会の縮図であり、社会勉強の場でもあるのだ。ここで身分の違いなどでの対応を学ばずにどうするのだと言う話である。確かに、学園で好成績をあげればそれなりの役職についたり、結婚して上級貴族の家に入る、養子に入る、と言う道もあるだろうが、それはそれである。


「まったく、貴方と言う人は…」

「うん?」

「変な人ね」

「わーお」


ちなみにアナスタシアとエミリアは家格が同格で学校での学年も成績も同等なので態度などで問題になることはあまりない。変なことをすれば恥をかくのは自分の方だ。


「そう言えば、正式な申し出がまだでしたね。私のことはアナスタシアと呼んでください。私のエミリア」


アナスタシア達が妹様と呼ぶのが嫌だった様で、自分のことをエミリアと呼べとエミリア側が妥協してしまった結果である。基本的にファーストネームだけで呼ぶのは馴れ馴れしい行為であり、下位のラダやマーガレットはもちろん、同格のアナスタシアも本来は勝手に呼ぶことは許されない。それはエミリア側も同じことだ。


「誰が貴方のものですかっ!!」




「それにしても、エミリア様もとんでもなく優秀な方だったのですね。全教科満点ですよね」

ラダが感嘆し、マーガレットも同意しうんうんと頭を縦に振る。


「つまり貴方達も全教科満点って事よね。なに? バーン…、いえ、アナスタシアさんが教えたの? と言うか、人に勉強を教えて全教科満点取らせるってどうなってるのよ」

アナスタシアが名前で呼んでアピールと思われる仕草をしたので言い直すエミリア。


4人でテーブルを囲んでお昼の最中である。


ノーミスで1位が4人と言う異常事態だったが、逆に苦言を呈する者は居なかった様で、朝一の掲示板前を避けたことも良かったのかいつも通りの生活を送っていた。


「こう言うくだらな、いえ、試験などは他人に教える事を前提にすると身につきやすいので、3人で勉強すると言うのは逆に効率が良かったりするの」

アナスタシアがいかにもと言う感じのことを言う。


「へー。って言うか『くだらない』って言おうとしたわよね?」

「えへへ。つい」

「なんだか貴方は何もかも知ってて、はぐらかされている気がするわ…」


「ふふふ、それはどうでしょうね。私も知らないことは多いですよ」


「今回私たちの成績が1位だったのは、やっぱりアレでしょうか…」

ラダが心配そうにと言うか周りを気にした感じで聞く。

「そうね、それにエミリアさんも一緒だったのが大きいでしょうね」

「実力がどうとか言いながら、そう言う改竄はしているのね…」

エミリアが残念そうに呟く。


「でも、エミリア様が公爵令嬢で良かったですよ。やっぱり光の魔法を使う聖女様は成績上位者で生徒会に入ってないと…」

マーガレットの発言にアナスタシアとラダが大きく頭を振って同意する。


「だからっ!! 私で遊ぶのは止めてくださるっ!!」

相変わらずエミリアはおもちゃにされていますが、何気にアナスタシアの取り巻き2人はギリギリのところを攻めている気がしますねw

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