3-20 悪役令嬢と迷宮
ダンジョンの設定は何度か書いている気がしなくも無いですが、そう言う回
「そう言えば、あの件はどうしたかしら…」
唐突にアナスタシアが呟いた。
今日は休日なので朝からアナスタシアは寮のリビングでくつろいでいるし、そのアナスタシアの側でお世話できることにアーニャも上機嫌だった。
寮のリビング、と言っても、各生徒ごとに専用のリビングがある。要するに高級ホテル並の部屋に従者用のアパートの様な部屋がひとまとまりになった空間が、生徒一人分のスペースになっているのだ。アナスタシアはアーニャ1人しか連れていないが、それは普通ではない。ほとんどの生徒が複数の従者を連れてきている。
ちなみに、それらとは別に共有スペースにはラウンジやカフェ、レストランなども併設されていて、一般的な貴族としての生活を経験できる施設になっている。アナスタシアは特に問題はないがそう言う経験が少ない者も居る。ラダやマーガレットもそこでアナスタシアと過ごす事で様々なことを学んでいたりする。
「今のところ、お屋敷や学園関係者で原因不明の行方不明者は出ていない様ですね」
アーニャがそつなく答えた。
「………私が言うのもなんだけど、よく分かったわね」
アナスタシアは思わず独り言の様に口にしてしまっただけなので、答えが返ってくるとは思わなかったのだ。
「ここ最近で、即対応できない案件はそれくらいしかありませんでしたから」
アナスタシアが座るソファーの後ろに立って、すまし顔で答えるアーニャ。
「そうだったかしらね」
「可能な範囲で王都周辺の情報は集めていますが、目立って人が居なくなったと言う情報は入っていません。はじめから存在が認識されていない類の人間が当たる場合がほとんどでしょうから、なんとも言えませんが」
「誰かがトラップに引っ掛かったら分かる様な仕掛けを用意すべきだったかしらね…」
手にしていたカップをローテーブルに置くと、ソファーに深く寄り掛かった。
見上げるとアーニャが嬉しそうにこちらを見ている。
「お嬢様に危害を加える可能性がある人間など、人知れず消滅すれば良いのです」
「…さすがにそう言うわけには行かないわ」
「…確かに根絶やしにするには背後関係とか調べる必要がありますね」
うんうんと1人で納得するアーニャ。酷いことを言っている様に聞こえるが、今日のアーニャは上機嫌だ。怒ってもいなければ悪気もない。
この世界にはアナスタシアが設置したダンジョンがいくつかある。
入り口は遠く離れたところにあったとしても、ダンジョンそのものは何もない空間に隣接していて入り口だけがこの世界に繋がっている。その特性を利用して、アナスタシアの部屋に侵入した者たちを、遠くのダンジョン内に用意したダミーの部屋に転送したのだった。いや、転送された者がいたかどうかは確認していないのだが、ダミーの部屋から出るとそこはダンジョンと言う趣向だ。
「ダンジョンももう出来てから6年とか経つのね」
「そうですね。魔物とかもだいぶ増えたのではないですかね」
「基本的にダンジョンは全て繋がっているから、確認に行くにも距離は気にする必要がないけど、魔物や侵入者は制御できないのよね」
「危険なところにわざわざ行くのはダメです」
「うん。そうね。ちょっと行ってみたいけれども。ふふふ」
腕を上げてアーニャの腕の辺りを撫でるのだった。
「えっと、これは…」
アーニャが2m以上はあるそれを見上げている。
「ダンジョンと言えば宝箱、と言うことで宝箱の精です」
大丈夫と言わんばかりに、それをぽんぽんと叩いて見せるアナスタシア。
「妖精さんなのですね…」
アーニャですら目を白黒させてしまうそれは、痩身の全身白タイツみたいな身体の上に宝箱の顔が乗った大男だ。
顔はないがこちらを見ているのか猫背になっている。
ここはダンジョン空間内に作られたダミーの部屋だ。
部屋の隅には武器や防具などが並べられている。
どうやら侵入者の遺品らしい。
アーニャへの紹介が終わると妖精は部屋から出て行った。
各ダンジョンに数体ずつ配置されていて、巡回警備しているらしい。
ダンジョン内の適当なところに宝箱を設置し、遺品の武器や防具、アイテム、それにアナスタシアが用意した回復アイテムなどを入れておくなどのメンテナンスもしている。
「人と遭遇したら宝箱に化けることが出来るのよ。便利でしょ?」
「………」
「それで、この、遺品? はどうなさるのですか?」
「本当は遺族に返却すべきだとは思うのだけれども、魔法で改造してダンジョンの深いところにある宝箱に入れるお宝にさせてもらうつもりよ」
「お宝ですか」
「この世界にはダンジョンがなかったから馴染みがないでしょうけども、ダンジョンってそう言うのがあるのよ。でも、武器を1から作るのは私には難しいから、ちょっと拝借したの。最終的にはそう言う作業も自動で出来る様にしたいけどもね」
「さようですか」
「あら、不審がっていたわりに、随分あっさりしているわね」
「お嬢様が危ないことをしようと言うのでなければ、武器だろうとなんだろうと、問題ないです。お嬢様が楽しそうなのであれば、むしろ探索者を雇って向かわせても良いですね」
「さすがにそれは止めてね…」
みみっくさん。
この本編内では冒険者に優しい存在ですが、のちのち野生化します(?




