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第8話 必殺技すら覚えてないのにドラゴンの襲撃を受けました

えーっと、既存の話はこの辺で終わりかな。

最後にちょろっと主人公も出てきます。

曇っていた空から雲が消し飛び緑がかった青空が広がっていた。

神殿が吹き飛んで出来た広場の真ん中まで歩み出る。

それを見たドラゴンが目の前に降り立つ。

怒っているようには見えないが、見逃してくれるつもりも無さそうだ。


ドラゴンの前足による引っ掻き攻撃。前足はワニに似ているが鋭い爪が生えている。

おそらくドラゴンの攻撃の中では一番弱い攻撃だろうが、食らったら一撃で肉片と化すのは想像に難くなかった。


だが、この世界にはいくつかのルールがあった。


シールドでガード。当然、ぴったりタイミングを合わせてガードスキルを発動させる。

本当ならこんな質素なシールドでどうこうなるはずもないが、この世界ではジャストガードに成功すればどんな攻撃でも無効化できるのだ。

ダメージどころか衝撃もほとんど感じない。


右、左、右、ドラゴンが攻撃するたびにガードスキル発動とジャストガードを示す光が放たれ、少年を中心に光の波紋が広がる。


「凄え」


瓦礫の影に隠れていた冒険者が思わず感嘆の声を上げる。

ドラゴンは前足の攻撃に加えて回転しっぽ攻撃や魔法のブレスを織り混ぜ始めるが、こちらもガードスキルと回避スキルを巧みに使い分けて攻撃を凌ぎ続ける。


「信じられん」

「俺、感動しちゃったよ」

「でも、防戦一方じゃ圧倒的に体力で不利よ」

「そんなこと言ったって、攻撃してどうなるって相手でもないし、逃げようもないだろ…」


瓦礫の影に隠れながらヨーコはただ逃げられないわけではない事を感じていた。

ジャストガードの成功を示す光が届くたびに、わずかずつではあるがダメージが回復しているのだ。

先ほど取ったスキルの一つがジャストガードのボーナスで自分を含む仲間を回復するスキルだったのだ。


「私のせいで逃げられない?…」


だんだんとドラゴンと少年の気配が近づいてくる。

「弱気になってはダメだ。彼は勝利するために戦っているはずよ」


ガードと回避を駆使してドラゴンの攻撃を凌ぎつつじわじわと後ろに下がっていく。

一か八かの賭けだった。

ドラゴンが突進しつつ噛みつき攻撃を仕掛けてくるのを回避スキルを駆使してすり抜ける。

「師匠!!」

「おおっ!」

ボロボロの身体を無理やり起こしたヨーコの剣がドラゴンの頭に突き立てられる。

刺さりはしないがカウンター成功のエフェクトとともに全身の傷が消え、全てのパラメーターが最大になる。


「クラスチェンジ、武闘家レベル99」


ヨーコは任意に職種を変更するスキルを持っているのだ。

剣を捨て、拳を握るヨーコ。


「人類の終極点、打撃全振りカンスト武闘家の一撃を受けてみよ!」


やっぱり、ゴリラ、とか言わない。


左手の甲に光が宿る。

「バックハンドストライク!!」

防御結界の内側、ゼロ距離からの直接打撃。

衝撃波によって描かれた波紋と、ドラゴンの鱗が弾いた火花が飛び散る。

「おりゃーっ!!!!」

大爆発。


白い煙が晴れると、全力攻撃の硬直で動けないヨーコを避けるように地面がえぐれている。


「ガードが間に合ってよかった」

少年がドラゴンの攻撃反射による衝撃波を間に入って防いだのだった。


『君は、本当に強いな』


ヨーコの声とハモるように脳内に声が響く。

ドラゴンだった。


『また会おう』


そう言ってドラゴンは飛び立って行った。


「見逃して、貰った?」

「そう、みたい、ね…」

時間にして十数分の戦いだったはずだが、何十時間も戦い続けたような疲労を感じていた。


「えっと、チュートリアルの続きはまた明日にしませんか」

「そうね。そうしましょう」


これから冒険の生活が始まるはずだったが、なんだかもう全て終わった気分だった。

まだ、必殺技も覚えていないのに。




「へえ、じゃあこの神殿をこんなにしちゃったのって、あなた達なんだ」

スキルを振り終わったアナスタシアがからかう。

「ちゃんと話聞いてた? 俺悪くないよね?」

ちょっと不機嫌を装って答える。


「と言うか、ドラゴンうんぬんは疑わないんだな」

「だって、それでしょ?」

後ろを指差されて振り向くとあの時のドラゴンと思われるそれがそこに佇んでいた。

「おうっふ」


『私の姿を見ても動じないとは、さすがはお前の(つがい)だな』

ドラゴンが脳内に直接話しかけてくる。

「番違うわっ!!」

思わずハモる2人。


『違うのか? ずっと2人で旅をしておったからてっきりそうなのかと』

「覗いてたのかよ」

最強の存在、ほんのおふざけで都市が滅ぶほどの力を持つドラゴンを相手にしているようには見えないツッコミ。

『見なくともどの辺にいて誰と居るかくらい分かる。そう言う物だ』

「便利ね」

「いや、便利と言って良いのかどうか…」

アナスタシアの肝の据りっぷりに呆れる。


「そうね、知りたくないことまで分かってしまうのも大変かもしれないわね。ドラゴンにはそんな心配はないかもしれないけども」

『そうだな。何を心配しているのか良く分からん』


「で、今日はどうしたんだい?」

『うむ。この身体だからな、こう言う広い場所でないと直接会えんのだ』

「あーっ」


『そう言うわけだから、派手に何かする時は私も呼んでくれ。街を丸ごと焼き尽くすとか』

「しないからっ」

2人がハモった。

少年の過去話、では有ったのですが、どちらかと言うとドラゴンさんが後で少し重要な役割を担って再登場する、予定。

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