3-11 悪役令嬢とブラザーコンプレックス
本章ヒロインの1人エミリアとあれやこれやする回です(
前書きに何書いて良いかよく分からないのです…
最初の頃こそ、3人で悪役令嬢と取り巻きゴッコをしていたりもしたが、しばらくすると別に悪い事をするわけでもない事がバレてしまい、わりと普通の学園生活を送るようになっていた。
一部の生徒から敬遠されたり粘着されたりと言った事は当然のように有るわけだが。
今は剣術と言うか護身術の授業、と言うか、そんな感じの時間で有る。
男子はわりと気合を入れて木剣を打ち合わせたりしているのだが、女子は完全に見学かお遊び状態だ。
女子の黄色い声援が飛び交っているが、アナスタシアはマーガレットとラダに剣を教えていた。
2人も特に男子の中に気になる相手も居ないらしい。
「そんなに硬くならなくても大丈夫よ。木剣じゃ切れませんし」
「でも、結構ずっしり重いですわ…」
マーガレットが両手で短剣サイズの木剣を構えていると言うか持たされていると言うか、そんな感じで震えている。
確かに硬い木で出来ているので軽くはないがたかが知れているし、本来男であれば片手で丁度くらいのサイスだが、手も小さいマーガレットはまるで両手剣のように構えている。
((なんか可愛い…))
アナスタシアとラダも両手で持ってみるが柄が短くて手が余ってしまう。
実際に木剣を合わせるとすぐに落としてしまうし、転がって行った木剣を追いかける姿も愛らしい。
((………))
そう言えば、この世界にはレベルや経験値、スキルなんてのも無いのよね…
3人で到底剣の練習などとは言えない事をしていると、横から割り込んで来る者が居た。
「勝負よ、アナスタシア=フォン=バーンシュタイン!!」
エミリアがアナスタシアに木製の短剣を向けて勝負を挑んできた。
「私が勝ったらお兄様にちょっかいを出すのは止めてもらうわ!!」
別にこちらから声をかけたりはしていないのですが
とは言わない。
「私が勝ったらお兄様を頂けるんですか?」
「そんなわけないでしょおおおおおおおおおおお!!」
別に要らんが。
「バーンシュタインさま、今ちょっとよろしいかな?」
「独身の男女が2人で話をするのは良くないと思いますが」
そう言う世界観では有るが12歳のセリフではない。
校門から校舎へと向かう道で待っていたのはエミリアの兄、ハリスである。
マーガレットやラダとは一緒になればそのまま来るがわざわざ待ったり待たされたりと言った事はしないことにしたので、その日はアナスタシア1人で歩いていた。
「別に2人で密室に入ろうと言う事ではないし、いつものおふたりが一緒でも構わないのですが…」
「半分冗談ですので、お気になさらず続けてください」
「…。妹がいつも世話になっているようなので、お礼を言いたくてね」
「お世話はしておりませんが」
「当然といえば当然なんだろうけど、だいぶ嫌われているようだね」
「いえ、別に私はどうとも思ってはいないのですが…」
「あーっ、ちょ、お兄様、こんなところで何をなさっているのです」
お決まりのエミリアの乱入である。
肩を竦めるアナスタシア。
「なるほど。ほんとにいつも申し訳ない」
良かったらこれに懲りずエミリアの相手をして欲しいと言うような事を言いながら連れ去られてしまった。
物陰から2人が出てきてアナスタシアと並ぶ。
「「「あらあらあら〜」」」
と言うような事を何度か繰り返しており、最近ではハリスもわざとやっているのでは無いかと思っている3人ではあった。さて今回はどうやってからかおうか、いや、対応しようかと考えているとさらなる乱入者が現れる。
「やあエミリア マイトロベル様、そんな剣も持てないような娘さんを相手してないで、私と試合しませんか」
ガタイの良い男子生徒が近寄って来た。
「その腰に下げた剣は伊達ではないのでしょう? マイトロベル家は武勲に秀でた名家だ。あなたも嗜まれるのでしょう?」
取り巻きとニヤニヤ笑っている。
「こ、この剣は…」
男たちから剣を隠すようにするエミリア。
アナスタシアはその後ろから忍び寄りエミリアの上着に下から手を突っ込んだ。
「あひゃあ」
意味不明な言葉を呟くアナスタシア。
「な、何をするのよ!?」
「素早く動けるようになる御呪いです」
実際には上着で隠して魔法陣を展開し、回避アップの魔法を使ったのだが。戦闘であれば回避+1など気休めにすらならないだろうが、所詮は子供のする事だ。十分だろう。
「はっ、そんな可愛らしい御呪いで俺の剣が躱せるかよ」
いきなり腰に下げている剣を抜いて襲いかかって来た。木剣ですらない。意外と本気で怪我をさせるために喧嘩を売って来たのだろうか。
避けるそぶりすら見せずに躱すエミリア。いつの間にか離れているアナスタシア。
速すぎて常人にはむしろ何が起こったのか理解できない。
訳もわからず剣を振り回す男と、無理な動きもせずに躱すエミリア。
「お前ら何をしている」
教師が気がついて近づいて来た。
「女子は指導員が付いてくれないので、護身術ゴッコですよ、先生」
アナスタシアが戯けたように答える。
「そうね、お遊びよ。ね」
エミリアが続ける。
「くっ…」
奥歯が割れそうなほど奥歯を噛み締めながら去って行った。
「御呪いって…」
また3人で戯れはじめたアナスタシアを見つめるエミリアだった。
一応、伏線とかアレした様なそうでもないような




