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ある魔法使いの旅路 〜儚げな公爵令嬢だと思っていたら、ただのチート主人公でした〜  作者: 大貞ハル
異世界から召喚されし勇者アナスタシアちゃん14歳さん
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2-30 旅立ち

まとめ、みたいな話です。

第2章最終回。

「君は息をするように魔法を使って来ただろうから知らないかもしれないが、魔法と言うのは白魔術だろうが黒魔術だろうが、最終的には精霊に働きかける事で物理現象を引き起こす技術だ。つまり、君の神よりも精霊に対する影響力が高い存在の前では発動自体しないんだよね」




敵兵士や怨霊はほぼ壊滅し、魔物も概ね討伐された。

自らの手駒がなくなった割には余裕を見せていた悪魔も、魔法が効かないどころかそもそも発動しないと言う事態にさすがに狼狽を隠せない。


のこのこと砦から現れた無能な勇者を灰も残さず消し去るはずだった。


まるで急に雨雲が太陽を覆い隠したかのように一帯が暗くなる。

見上げると上空に巨大な生物が飛翔していた。

全長200m近くはありそうな巨体に、不釣り合いなサイズの蝙蝠の羽。


ドラゴンだ。


最強の生物、もしくはこの世界に顕現した神。ドラゴンの強さの理由の一つがこの世界にいる限り精霊に対して何よりも強い影響力を持つところにある。


ドラゴンを見上げて呆然としている悪魔の前に立ったアナスタシアはセフレにひとつのスクロールを手渡した。スクロールに込められた儀式によって生み出された聖域の浄化作用によって悪魔は声を発することもなく消え去るのだった。



「なんだか、呆気無かったですね…」




一旦全員が砦に戻り、アナスタシアたちが城壁の上部にのぼると戦いが行われていた荒地にドラゴンが舞い降りた。あまりにも巨大すぎる存在が降りたにしては静かに。


「食べられたりしないよね?」

命が放心したように棒立ちのまま呟いた。


『私はそもそも不滅の存在だ。嗜好品以外を口にする事は滅多にないぞ』

「滅多に?…」


「えっと、とりあえず、どう言うことか教えていただけるかしら…」

セフレがアナスタシアに助けを求める。


「そもそも、私を呼んだのは彼?彼女? らしいのです」

「え? 勇者召喚は関係ないの?」

『これまでの勇者召喚で呼び寄せられた人間はいかにもと言う人間ばかりだったから、私は気にしていなかったのだが、今回召喚された3人は、例の悪魔が干渉して性格的にも能力的にもおおよそ勇者らしくないものが呼び寄せられた。本来与えられるはずだった勇者の力も無いままで。そこで私が能力を付与し、オブザーバーとしてこの娘、アナスタシアを付けたのだ』

ドラゴンの声は音声という感じではないが一応耳から聞こえて来た。

精霊が空気を振動させているらしい。


「私はあまり役には立てませんでしたが…」

「いやいやいや」

アナスタシアが申し訳なさそうに謝るのを全員で否定した。


『魔法陣も改造されてしまってこれまでのような召喚はできぬであろう。小さき王よ、今後は勇者召喚を諦めてもらいたいのだが…』

「承知しました。と言うか、私は勇者召喚を良いものだとは思っていませんでしたので、今後召喚させるようなことは無いと思います」


「それで、元の世界に帰りたい人は?」

アナスタシアの問いに全員が手を上げたが、不安は残るようだ。

「だいぶ長い事こっちに居たから、向こうは騒ぎになっていないだろうか?」

『それなら大丈夫だ。向こうを離れた直後に運命線を繋げることも可能だ。なんならこちらでの記憶も消去できるぞ』

「うーん、向こうで記憶の混乱とか起こさないなら忘れたくはないかなぁ」

命が笑いながら答える。

「そうだな」

「ええ」


「あの、別れの前にせめて宴でも、と思うのですが…」

ドラゴンの方をちらっと見ながらセフレが提案した。


『私のことは気にしなくても良い。私にとっては1年も2年もわずかな時間だ』

「いやいや、さすがにそこまでは粘らないですよ?」

命が否定した。


城壁から降りると騎士たちが馬の世話を終えて集まって来てた。

ここでの決戦は終わったが国中が混乱しているはずなので人員を振り分けたりして、いくつかの部隊は早速砦を発った。


奥側の城の部分に入ると既にバックアップの人たちが食事の準備などを始めていた。




結局こちらに居る時間は意味を持たないこともあって1週間ほど過ごした。

敵国の上層部もあの悪魔が違う名前で操っていた上に、不在の間にかなりの人数が謎の死を遂げたとかで既に戦争は終了、ほぼ撤退を完了しており、戦後処理も進んでいるらしい。

魔物に関しても、王都周辺は巨大ゴーレムが活躍してほぼ沈静化、砦の周りは勇者たちの助けもあって事件前と変わらないくらいに落ち着いていた。



「うううう、アナスタシア様が行ってしまわれたら、私は、私は…」

リョナがアナスタシアの手を握ったまま泣いていた。

「大丈夫、あなたはもう夢みる事を覚えたのですから。後は叶えるだけ」

「!?」

驚いて目を見開くリョナ。

アナスタシアはそんなリョナを優しく見つめ返した。


そっと手を離す。


『もう良いか?』

ドラゴンが大きな顔で覗き込んでいる。顔だけで相当なサイズだ。おそらく手が届く距離まで近づいたら鼻先しか見えないだろう。


ドラゴンが今回自分で干渉しなかったのはこの巨大さが一番大きいと思われる。


「ええ、お願いします」

勇者3人も頷く。


4人が光に包まれて消えた後、アナスタシアは真っ白な空間に1人いた。

『約束通り、他の3人は元の世界に送り届けたが、お前はどうするね?』

「そうねぇ、どうせ最後は旅立つ前に戻れるなら、もう少し色々見て回りたいかも」

「分かった。また他の世界に移りたくなったら、その世界の私を探すと良い」

「よろしくね」


真っ白い世界の先に何かが見えた。

相変わらず戦いはあっさりしすぎで申し訳ないんだけど、割と綺麗に片付いたんじゃないかしらん?

と言うわけで、第2章はこれで終了になります。


一応第3章も用意しているので、良かったら

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