第6話 森の中の神殿
元になった話はゲーム世界っぽいやつだったんですが、流れ的に「ゲームかよ(ツッコミ)」くらいのノリで読んでもらった方が良いかも。あまり具体的な設定は考えていないのでー
緑がかった青空を囲むように白い雲が浮かんでいた。
ここは森の中の高台。遠くには王都も望める静かな場所で、冒険者が最初に訪れる神殿が、在った。
現在は床の部分と祭壇、壁の一部しか残っていなかった。
石組みの床の隙間からは草が生えていた。
「レベル上がってたけど、スキルの取得とかしてなかったよね。王都まで行かなくても、ここで出来るから」
少年がアナスタシアを連れてここまで来た。
特に行くあてもないと言うので王国のほぼ中央にあるこの山に案内したのだ。
王都は王国の中央より、西寄りにある。
「スキルかぁ」
憂鬱そうに目を逸らすアナスタシア。
「あまり乗り気じゃない、かな?」
「実は私の職種『魔導師』は魔法系職の上位職で、いつでも解放可能なスキルが100近くあって、スキルポイントで開放するスキルも同じくらいあって…」
そう言って目を逸らすアナスタシア。
「?」
「考えるのもめんどくさくて…」
「そっちなんだ…」
「やあ少年。ここは初めてかい」
アナスタシアと出会うずっと前、気がつくと森の中で、目の前にパンツルックの軽装な女性が立っていた。
ロングの黒髪を後ろに束ね、腰には剣を下げている。
「あ、はい」
少年、確かに少年っぽい。背はこの女性より少し低いくらいか。
手もそれほどゴツくはない。
口から出た声も、少年のそれだ。
「私の名前はヨーコ。二次職のレベル上げをしようと思ってここに来たんだけど…、ここで会ったのも何かの縁だ、案内してあげよう。私のことは師匠とでも呼んでくれたまえ」
いかにも勝気なお姉さんと言った風貌のヨーコと名乗る女性は、慣れた感じで話しかけてくる。
「はあ、よろしくお願いします」
特に理由はないが、なんとなくこの人に従っていれば大丈夫な気がした。
「とりあえず、周りを見渡したり、移動したりは大丈夫?」
「え?」
「まあ、お決まりのネタみたいなものだから、問題ないなら気にしなくて良いよ」
右手を上げて止めるような仕草をする。
「あはは…」
どこかに入力反転ボタンとか、は特に見当たらなかった。
「とりあえず、君の職業は戦士ね」
講義開始です、と言う感じに向かい合って立ち、説明を始める。
「え、でも、武器とか使った事ないんですが」
自分の格好を確認するが特に何も装備していない。
「大丈夫、この世界の人間は、勇者とか聖女とかの特殊なギフトを持って生まれた人以外、ほとんどが戦士だから。農民とか商人とかも、基本的にはみんな元戦士。と言うか戦士が畑を耕したり物を売ったりしている」
「そう言うものですか」
「中には稀に初めから魔法職や射撃職とかの人も居る事があるけど、ここに来るのはほとんど戦士だねぇ。私は一応相手の職業が分かるスキルを持っているから、偽装でもしていない限り間違いないと思うよ。」
そう話しながら歩いていくと、森の中なのに何故か各種武器が揃っている。
とりあえず、小さな盾と短めの剣を手にした。
大振りの剣とか持っても使える気がしない。実際にはそれほど変わらないのだが、この世界では。
「当分先になるとは思うけど、職業には例えば、戦士のサブ職に回復職を取って回復しながら戦うとか、複数の職業を習熟して必要に応じて切り替えたり、と言う事も出来て、転職は初期職をレベル10まで上げないと出来ないから、まあ追々ね。私も今は戦士だけど戦士をレベル10まで上げてすぐに転職して、今は戦士に戻ってレベル上げをしているってわけ」
「こう見えても私の戦士レベルは20だから単純に君の20倍以上の基本戦闘力があって、そうだなぁ、スキルで強化してるから実質40〜50倍くらいにはなるかな」
何がどう40倍か分からないけど、見た目に反してゴリラって事かな? とか言わない。
「ああ、あと二次職のパラメーターも影響するから、組み合わせに寄ってはまた変わってくると思う」
そんな事を話つつ、練習がてらエネミーを倒したりしながら森の中を歩いていくと、開けたところが一段と高くなっていて石造りの神殿が建っていた。
「スキルの習得とか新規の職業を選ぶ時はこう言った神殿や、大きな街の大聖堂で行うの。王都とかね」
神殿は森の木々よりも高いところにあって、白い雲で覆われた空と遠くに王都や海が見えた。
中に入ると一番奥に質素な祭壇があって、どうやらそこで祈るようにするとスキルが取れるようだ。
「君もいくつか取れるはずだから、まあ、適当に取ってみたら。はじめは割と適当でも大丈夫だから」
ここまで来る間にいくつかレベルが上がっていた。
「そうですね、とりあえず…」
スキルの習得が終わって、振り返ろうとした瞬間、轟音と共に神殿が崩れ落ちた。
「な、なんだ?!」
突如起こった爆発で神殿が吹き飛ばされたのだと分かるまでにそう時間は掛からなかった。
見上げると上空にあった雲は吹き飛ばされて丸く穴が開いたように晴れており、正面の森の上空にトカゲとロバを足して二で割ったような姿に、その巨体には似つかわしくない小さな蝙蝠の羽を持った巨大なモンスターが飛んでいた。
世界最強の生物、ドラゴンだった。
一応矛盾があまり目立たない様に調整したつもりですが、なんか変だったら申し訳〜。




