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ある魔法使いの旅路 〜儚げな公爵令嬢だと思っていたら、ただのチート主人公でした〜  作者: 大貞ハル
異世界から召喚されし勇者アナスタシアちゃん14歳さん
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2-21 騎士の称号

オチがちょっと下品です。すみません。

「大丈夫ですか?」

「あ、ああ。アナスタシア殿が作ったポーションのおかげで怪我は残っていない」

「良かった」

メイドのシリアナと騎士の1人がいちゃいちゃしている。

どうやら今回の旅の間に仲良くなったらしい。

先ほどの戦闘で怪我をした騎士にポーションを渡し、血で汚れた顔を拭いてあげたりしている。


「「異常な状況で結ばれた男女は長続きしない」と言う話があるらしいけれども、実際のところどうなんだろうか…」

命が微妙な顔で2人の様子を伺っているのだった。




物凄い破壊音と振動に慌てて広間に向かうと広間の壁に大きな穴が開けられていた。

「なによ、アレ」

命が広間に飛び出すと巨大なメイスを手にした牛頭の大男が目に入った。

メイスで壁を粉砕して侵入して来た牛頭の大男は、ガタイがいい甲冑姿の騎士達と比べても二回りほど大きく、筋肉も発達していた。


騎士たちを何人も戦闘不能にした牛頭の大男が広間の中央で威嚇の咆哮を上げている。


盾や鎧をべっこりと凹ませた騎士達が倒れていて、何人かは壁にめり込む様な姿になっている。外にも何人か居たはずだが警告を上げる声も聞こえなかった。


あっという間の出来事だったことが窺える。


また1人大盾を持った甲冑の騎士がメイスによる攻撃を防ぎきれず、アナスタシアたちが居た部屋の入り口の方へ吹き飛ばされ転がってきた。鎧は凹み、顔面をガードする格子状の部分から血を吹き出している。

「いやあああああああ」

後ろから来たシリアナが悲鳴を上げる。

部屋にいた騎士達が前に出ない様に女性達の前に立ちはだかる。


「くそっ」

飛び出そうとする命をアナスタシアが左手を横に広げて制する。


「え? いつの間に前に出たの?」


驚いていると、アナスタシアが仰向けに倒れた騎士に感情の籠っていない声で語りかける。


「立ちなさい。騎士でしょう?」


その言葉に驚き声をなくす女性陣。

まさかアナスタシアの口からその様な言葉が発せられるとは予想だにしなかったのだ。


だが、言われた騎士の目は違った。

何か閃いた様な、思い出した様な目をしている。


アナスタシアが続ける。


「主の前で立てた騎士の誓いはその程度の物なのですか?」

さらに語気を強め、他の騎士たちにも聞こえる様に訴える。

「己がなんであったか思い出すのです。貴方たちは何者ですか?!」


倒れていた騎士の歪んだ鎧がギシギシと音を立る。

攻撃されて歪み、動きの邪魔をしている鎧を力任せに押しのけて身体を起こし、膝をついて剣を顔の前に翳した。


「我は剣」

「我は鎧にして盾」

別の騎士が続ける。

「この血の一滴まで主人とその財産たる国民のために」

他の倒れていた騎士たちも起き上がり唱える。膝をつき、剣を翳す。


()()、御命令を!」


アナスタシアが王女を振り返って促す。


「!…、騎士たちよ、その邪悪なる化物を倒しなさい」

王女が怯えながらも気丈に叫ぶ。


「これは勅命である!!」


王女の言葉を受け、騎士たちが一瞬オーラの様なものを放つ。


アナスタシアたちの目の前に倒れていた騎士が立ち上がり牛頭に向かって突進する。

牛頭は迎撃しようと騎士に向かってメイスを振り下ろすが、牛頭の予測より早く懐に飛び込み振り下ろされたメイスではなく、それを持つ手に盾をぶつけた。

それですらとんでもない破壊力だが盾を凹ませ、足元を砕きながらも受け止めた。


周りの騎士たちが一斉に牛頭の右足を攻撃する。彼らも先ほどまでよりも速く力強かった。


たまらず膝をつく牛頭。


最初に仕掛けた大楯を持った騎士が右手に持った剣で首を落とす。

巨大な牛の頭がドゴっと派手な音を立てて地面に落ちた。

崩れ落ちる巨体。



「な、なに? 今の」

命が唖然としつつ呟いた。


「称号【騎士】の力です。『勅命』に対して1.2倍の能力が得られます」

アナスタシアが説明する。

「1.2倍…」

王女が呟く。


「そう、わずか2割、たかが2割されど2割です。今回はギリギリのところで勝てる戦いでしたが、必ずしも勝てるとは限らない、そのくらいの力です」

「…」

アナスタシアの説明に押し黙る王女。


「彼らは王の剣であり盾ですが、彼らの命は貴方の判断に掛かっています」

アナスタシアが王女を見据えて言う。

「はい」

王女が神妙に答えた。


倒せたとはいえ、本当にギリギリの戦いであった。

牛頭の大男が侵入する際に通ったのと反対側を見張っていた数人以外重症だったが、アナスタシアが用意して備蓄してあったポーションを持って来ていたため怪我人は居ない。ただし装備の損耗を考えたらかなりの戦力ダウンになっただろう。ポーションも無限ではない。


一応、敵が魔物などのエネミーである場合に限り、勇者である命と言う秘密兵器が存在するわけだが。




シリアナが牛頭にとどめを刺した騎士に駆け寄る。

この騎士は王都でシリアナがアナスタシアを追うと言った時に同行を言い出した騎士だ。

ここまでずっと一緒に旅をしてきた。


「大丈夫ですか? 騎士アナル」

「?!」

騎士達の様子を見て回っていた命が、シリアナの声にびくんと反応し、愕然とした顔でアナスタシアを見たが、アナスタシアには分からなかった。


 シリアナとアナルだとーっ


命の心の叫びは誰にも届かなかった。

勅命と言うのは正確には帝国の帝からの命令と言う事なので、王国の君主が使うのは意味が違う気がしますが、なんとなく、カッコいいので使いました(

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