2-18 分断された王都
状況説明みたいな話です。なんか盛り上がらなくてすみません
「んお?」
シリアナがリョナを背負い直すために少し上に勢いを付けたのに反応してリョナが目を覚ました。
「お、気がついた?」
いつの間にかシリアナに背負われて移動していた。騎士たちも一緒だ。騎士2人の後ろにリョナを背負ったシリアナ、その後ろに残り2人の騎士。先頭の騎士は少し先に居る。森を抜ける道は3〜4人横に並んで歩けるくらいの幅だが一列に並んで歩いていた。
「あれ? 私…」
まだ少しぼーっとしている様だ。
「大丈夫?」
首を横に向けて目をこちらに向ける様にしてシリアナが尋ねる。
自分の背中に乗っているので顔は見えていないだろう。
「え? ああうん、下ろしてくれる?」
「ああ、ちょっと待ってね」
シリアナがしゃがんだので背中からゆっくり地面を確かめる様にしてシリアナの背から降りるリョナ。
離れると同時にシリアナが手を貸す。
呆然としつつ周りを伺っていたが、シリアナに促されて歩き出す。
シリアナは今度は騎士の方に駆け寄った。
「荷物、ありがとう」
「いや、このくらい問題ない。なんならこのまま持ってやろう」
「何言ってるんですか。とっさに戦えなかったらその方が困りますから」
そう言ってにかっと笑うシリアナ。
なんだかんだ言ってメイドと言うのは普通、あまり感情を表に出さない物なので、こんな風に笑うのは珍しい。
「あ、ああ。すまんな」
「なんで謝るんですか」
そう言ってまたクスクス笑うと当然の様にリョナの分も一緒に背負う。最初は代わりにリョナを担ぐと提案していたが、未婚の女の子に無闇に触ってはダメだと止められたのだった。
荷物を受け取ったシリアナは再びリョナに寄り添うように歩く。
「そうだ、あの人は…」
リョナはそこまで言って考え込む。
「なんだっけ? 誰かに助けてもらったはずなんだけど…」
首を捻る。
「そうなんだよ。私たちも後で話そうとしたら、なんだか思い出せないんだ」
「思い出せない?」
「思い出せないと言うか、ぼんやりするんだ。リョナを抱いて空から降りてきたのに。超ガン見してたはずなのに、こう、顔はおろか、髪が長かったのか短かったのかすら分からない。背格好も…」
「…本人は『魔王』だって言っていた」
「魔王…?」
シリアナの背負った荷物に掴まりながら後ろを振り向くリョナだった。
王都の王城とその周辺の貴族街は戦場となりそこここで黒煙が上がっていた。
王都に残ったグループは物陰を伝って南下していた。
貴族の屋敷が立ち並ぶエリアを抜けると、商業エリアであり、その先が平民街だ。
構造的にこの三つのエリアは隔離されており、商業エリアには火災などが起きている様子がない。
立ち並ぶと言っても貴族のお屋敷なので広大な敷地にポツンと屋敷が立っていてその周りは庭だったり立木があったりする。王城から商業エリアまでは林の様になっていて戦闘のあとなども見受けられた。
商業エリアへの門に斥候が近付くとそこには勇者の姿があった。
「ご無事でしたか」
斥候の騎士が話しかけるが勇者の表情は硬い。
「悪いがあんたらを通すわけには行かない」
「と、申しますと?」
「王都の半分は俺たちが第三勢力として掌握した。向こうとは、どちらにも加担しないと言う条件で停戦協定が成立済みだ」
「なんと!」
驚いてはいるが、どことなく嬉しそうだ。
王都に残った2人の勇者は人間同士の戦闘に加担しない、と言うことにしていたため、予め非殺傷用の武器と、相手を圧倒しつつなるべく危害を与えないで済む魔法を用意していたため、侵略軍も相応の対応をしていたらしい。もっとも、自治権などを要求しているわけではなく、戦闘による被害を最小限に止めたいと言う方向で話し合ったのも大きいだろう。戦争に勝利すればその後は取り込まれることになるのだ。
「それで、物資とかは大丈夫ですか? ポーション等…」
アナスタシアの残していった物資を自分たちだけで使って良いものか、と言う考えから尋ねる。
「備蓄もちゃんとあるし、いざとなったら作ることも可能だ」
「ああ、あのお方はいったいどこまで見通していらっしゃるんだ…」
「ふっ。そうだな。不思議な人だよ」
一瞬、すべてがアナスタシアの働きでは無かったかと訂正しようとしたが勇者からは同意の言葉が返された。
「では、市民はお任せしてもよろしいですか?」
「悪いが、状況を見て条件の良い方と交渉することになると思う」
「それは当然だと思います。我々も一旦王都を離れると思いますので、少し時間を頂けると幸いです」
「そうですか。気をつけてください」
「はい。お互いに…」
リョナを届けた直後に掻き消える様にいなくなったと思われていたアナスタシアだったが、そう遠くないところにいた。
認識疎外の魔法でメイドや騎士に気づかれない様になっただけだった。
「さて、ついつい手を出してしまったけど、この先どうしようかしら」
歩きながら腕を組んで頭を捻る。
戦争が始まっている。
王女がかなり先にいる。
一時的に振り切ったとはいえメイド2人に敵が迫っている。
王都からさらに出発した集団もいる。
どこまで干渉するか。どの程度まで能力を使うか。最後まで普通の女の子で通すのか。
そして何より
観光もしたい。
アナスタシアはかなり人間同士の争いについて興味がないと言うか、勝手にしてって言うスタンスなので、だいぶ酷い人っぽく見えるかも知れない




