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ある魔法使いの旅路 〜儚げな公爵令嬢だと思っていたら、ただのチート主人公でした〜  作者: 大貞ハル
異世界から召喚されし勇者アナスタシアちゃん14歳さん
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2-15 上級ポーション

なんとなく俺的ポーション設定をつらつら打っていたら人が死んだ。何をry

「オイ、そこのお前、お前が上級ポーションをギルドに売ったと言う薬師だな?」

「売りに行ったのは私じゃないですけど…」




アナスタシアが空き地でキノコを干していると、護衛付きのやたら豪華な馬車がやってきて直ぐそばに止まった。

別にアナスタシアにとっては貴族だろうが魔族だろうが、いちいち相手にする必要もない程度の存在だが、今は何となく旅の薬師ムーブなので、それっぽい対応をしようかなと思っていた。


しかし、アナスタシアは薬師がどんな人たちか知らなかった。


そもそも貴族は平民街をウロウロしないし、平民も貴族街には行かないのだから、変に貴族の扱いが上手い薬師と言うのも変かもしれない。


いや、薬師と言うのは考えてみたら結構元手の掛かる商売だし、庶民では無いのかもしれない。

もしかして、薬師と言うのは金持ちやら貴族だったりするのか?

などと考えていたら高そうな服をきたおっさんがズカズカと近づいてきて、上級ポーションを売れと言う。


今日のアナスタシアは地味な上にそれほど仕立ての良くないワンピースにボレロなので貴族と言う感じでは無い。

と言うか、貴族は空き地にキノコを干さないだろう。


「有りません」


あまり態度が良いおっさんではなかったのでついつい雑な返事をしてしまい、ちょっと反省。

でも、上級ポーションはたまたま持っていた事にしていた。

一本で年収みたいな価格の物をたくさん持ち歩いているやつなんて噂になったら面倒なことになるのが目に見えている。


「どう言う事だ、アレは貴様が作った物では無いのか?」

なぜ平民相手にものを言う貴族と言うのはキレ気味なのか。

まあ、平民街に来る貴族と言うのがイレギュラーなわけで、そっちを基準にするのは貴族に失礼か。


「確かに私が作った物ですが、お金がわりに持ち歩いていた虎の子なので、他はありません」

「では作れ、今すぐだ」


「無理です」


「貴様!」

おっさんが声を荒げる。


「上級ポーションは希少な素材や、入手に危険が伴う素材が必要ですし、大量の魔力を込める必要があるので、薬師1人だけで作る事は出来ないのです」


素材集めに冒険者を雇い、集まった素材を複数の薬師で加工し、最終的に魔力を込めるので、魔力の高い薬師数名、可能なら魔法使いなどの魔力量に余裕がある職業の人間によるサポートが必要なのだと説明した。


本来なら嘘では無いのだがアナスタシアは1人で何の問題もなく作れる。

素材の入手もいざとなれば可能だし手持ちもそこそこ有ったりする。

と言うか本当は上級ポーションの手持ちもある。


なんか嫌だったので言わないが。


「なんだと、もう既に入手できる当てが有ると言ってしまったのだぞ」


そんなこと言われても知らないのだ。


「素材や人材が揃っていても10日は掛かる物です。どちらにしても作れと言われて直ぐにはちょっと」

「ふざけるな」

おっさんが怒鳴り出す。

「たかが薬にそんな時間が掛かるわけがあるまい」

「うーん、それではあなたは骨折が薬草で治ると? そう言う事です」


この世界のポーションは患部に直接かけることで軽度の傷や打撲を瞬時に治す下級。

直接かけたり飲んだりすることで、下級よりは酷い傷も治し、飲んだ場合は効果が全身におよぶ中級。

骨折、大きな傷など、ほんらいなら自然治癒が難しい怪我も治せる上級。

ほとんど知られていないが、欠損なども完全に回復し、服や装備まで元に戻す最上級に分けられている。


中級以下のポーションは薬草などの効能を魔力によって高めたもので、それでも普通に考えたらおかしいレベルで回復するのだが、上級ポーションになると、擬似生命体、目に見えないほど小さな魔法使いを体内に送り込む様な物なのだ。だから、そもそものコンセプトも必要となる素材も、魔力量も全くの別物だった。もっと厳密に言うと、上級ポーションを作れる薬師は無意識に魔法の儀式を薬瓶の中に組み込んでいるため、普通の薬師が材料だけ用意したところで作る事が出来ないのだった。


「このっ」

逆上してアナスタシアに掴みかかろうとしたおっさんが膝をつく。


「貴様、何をした」

護衛の騎士と思われる男が支えようとするが、ぐんにゃりと倒れ込んでしまう。

「あらあら、興奮し過ぎて発作でも起こしたんですかね」


もちろん嘘である。


アナスタシアは敵対した人間に対して、各種のデバフが自動で付与されるスキルを持っている。

強力過ぎてデバフ云々以前に相手は死ぬが。


「ではなぜそんなに落ち着いているのだ?」

「いえ、相当驚いていますよ、これでも。でもたまにあるんですよね、薬師と医者を勘違いして突っかかって来ておいて倒れる人とか」


嘘である。

薬師を名乗り出したのもこの街に来てからだ。絡まれたことも、多分ない。はずだ。


「なんとか、ならんのか?」

「薬師は医者では無いので。すみません」

護衛の騎士は蹲み込んで服を緩めたりしているが、既に死んでいる。どうしようもない。


「い、医者は分からんか?」

「すみません、ここの人間では無いので…」

「と言うか、これは、もう助からん、か」

「ちょっと分かりかねます」


騎士たちは男を乗って来た馬車に乗せて去っていった。


「上級ポーションを集めて何をするつもりだったのか、最初に聞けば良かったかしら」



戦争が始まっている。


テレビやラジオがあるわけでは無いこの国では直ぐには情報が広まらない。

その隙をついて儲けようと言う魂胆だったのかもしれないが真相は闇の中である。


今日はキノコが良く乾燥しそうな良い天気だ。

最上級のポーションはエリクサーとか言うのかしらん

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