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ある魔法使いの旅路 〜儚げな公爵令嬢だと思っていたら、ただのチート主人公でした〜  作者: 大貞ハル
異世界から召喚されし勇者アナスタシアちゃん14歳さん
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2-11 王国の崩壊

突然血生臭い戦闘がはじまってます。

ご注意ください。

切断された手首が視界の隅を落ちていく。

私の手首ではない。いつの間にか敵兵との間にシリアナが立ち塞がっていた。

頭を庇うように上げた腕は無残にも切り落とされ、そのまま振り下ろされた剣はシリアナの身体を切り裂いた。


「うわあああああああああああ」




私は王宮支えのメイド。名前はリョナ。

孤児だった私は6歳くらいの頃、ある男爵家に拾われて養子となった。

正確な年齢も本当の名前も知らない。


さて、メイドと言うのは所詮下働きなわけだが、王宮や上流階級の屋敷で働くとなると、平民、ましてや孤児ではなりようがないわけだが、なぜ私がここで働いているかといえば、そう言うことだ。


男爵やそれを操っている者たちの思惑は知らないが、おそらく有事の際に暗殺などをさせようと言う魂胆だろう。実際、それに必要な技術を嫌と言うほど叩き込まれた。私はむしろそちらの方が得意で、素性を隠して有力者の側に忍び寄るには芝居が下手だし容姿も良くなかった。礼儀作法などもギリギリなんとかと言うレベルだ。


刺客としては落第点だが、それが功をそうしたかも知れない。


その人はある日異世界からやってきた。

勇者として招かれたにも関わらず、普通の少女よりも力はなく、儚げだった。


元の世界では公爵家令嬢だったと言う彼女は本当に気品に溢れ高貴さを漂わせていた。

この国にも貴族や王族は居るが、それら全てが作り物に思えた。


本物の貴族だ。


一緒に担当になったシリアナは「可愛い」と称したが、貴族たちは彼女を外れと言いながら恐れ、私のことを充てがった。外れ勇者に対して外れメイドなのか、いざと言う時には抹殺するためなのか。


彼女は魔法がほとんど使えないと言いながら、様々な物を魔法で作り出した。

だが、それは特殊な物ではなく全て既存の知識や道具の組み合わせらしい。

貴族であり研究者。その柔軟な考えと行動力は私たちを驚かせた。


そんな不思議な日々も、ある日突然終わりを迎えた。


「短い間だけどお世話になりました」

ローブにマント姿に杖をつき、肩から斜めにカバンを背負ったアナスタシア様が挨拶をした。

勇者でもなんでもない娘をいつまでも置いておくわけにはいかない、などと言われたらしいが、どう考えても彼女を畏れた者が遠ざけるために決めたに違いない。そもそも異世界から無理やり連れてきておいて、何を言っているんだ。


王都を離れ竜の谷を目指すらしい。異世界観光だとかなんとか。別れは残念だが、私にとっては、最悪の場合彼女を殺さなければならなかったのだから、そうならなくて良かった、と言う安堵が先に立つ。




とっさにスカートの中に隠していたナイフ2本を両手で抜いて、侵入してきた敵兵を倒した。

ここは怪我人を収容した臨時の救護所だ。


アナスタシア様が旅立った後、その暗殺を目的とした部隊が後を追い、それに気がついた王女と勇者命が騎士を従えて出立した。


その直後、隣国が侵攻を開始、一気に王城まで攻め込んだ。城壁の一部を破壊して。


王都には勇者が2人残っていたが、人間同士の争いに加担する事を固辞。市民を誘導して避難した。

王都は段々畑の様な構造になっているため、戦力が待機しているエリアや王城とは隔離されたエリアがいくつもあるのだ。


救護所と油断して侵入してきた敵兵を2人瞬殺した。

続いて3人目の脇腹、鎧の隙間にナイフを突き立てたところでふと考えてしまった。

自分はなぜ飛び出してしまったのだろうかと。むしろ1人ででも逃げれば良かったのではないか。

多少なりとも勇者と面識があるし、王都の外に逃げてもなんとかなる自信がある。


そんな一瞬の油断を突かれ、ナイフを突き刺した方の腕を取られてしまった。

もう瀕死の兵士の腕だ、振り解けなくもない。時間さえあれば。


背後に控えていた敵兵がすでに剣を振り下ろしてさえ居なければ。


これはこれでお似合いの最後かと思った。

吹き出す血飛沫。盾になって切られたシリアナが崩れ落ちる。

「シリアナっ!!」

切り落とされた手首が跳ねて鈍い音がする。

「貴様ーっ」

腕を押さえ込んでいた相手の腹に蹴りを入れて振り解き、両方のナイフを敵兵の鎧の隙間に突き刺し、両腕を切り落として倒す。

入り口付近に居た魔法使いが何か始めたのでナイフを二本とも投げて倒した。


「な、なんで、こんな」

シリアナに駆け寄る。出血が酷い。いや、それ以前に、傷が大きく深すぎて押さえることも出来ない。

「ふ、は、リョ、なら、敵を、みんな、を、げふっ」

シリアナの口から血が溢れ出す。

シリアナはいつも「お前は身体がデカい以外に何の取り柄もないんだから貴人の盾になって死ね」とか言われてたって愚痴っていたはずなのに。なんで私なんかのためにこんな事を…。

「ふっ、案外、悪く、な、な、こう言う、の、も」

こう言う時は、喋るなとか言うべき? いや、もうどう考えても、いや、まて、何か、誰か、誰かなんとかしてくれ。



なぜかこんな時にアナスタシアの顔が浮かび、スカートのポケットに手を突っ込んだ。

そこには不思議な光を纏った小さな鬼灯の様な形の物があった。


何か操作したわけでも、魔力を何かしたわけでもないのに、外側の半透明の殻がひとりでに展開して魔法陣が描き出され、周囲が眩い光に包まれた。

突然の方向転換で申し訳ないですけど、ずっとこんな感じでも無いので、多分大丈夫。きっと

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