第4話 ダンジョンからの帰還
えーと、『支援職なのにダンジョンに独り取り残されまして』の内容はとりあえず入ったかな。
まあ、間挟んで『攻撃技すら覚えてないのにドラゴンの襲撃を受けました。』をいじった話になるんですけども(
「あのー、今回はどの辺まで行く予定ですか?」
アナスタシアはダンジョン初挑戦なので勝手が分からなかった。
「え? ああそうか、みんなは割と入り口の辺りをうろうろするだけなんだっけ。最深部まで行くよ」
普通のことのように少年が答えた。
「さ、最深部?」
最深部とはもちろん一番奥のことである。
ダンジョンは奥に行くほどエネミーが強く、最深部にはボスと呼ばれる強力なエネミーが控えていると言われていた。
「最深部には外に繋がるゲートがあるから、最深部まで行った方が出るのも簡単なんだ」
「と言うか、もうこの先がボスのいる部屋だし」
「えーっ」
「良かったらさっきの支援魔法セットと、そうだな、君も攻撃してくれるかな? 相手はヒュドラだから遠慮は要らない」
「あ、はい」
少年は突き当たりの巨大な扉を軽々と開ける。部屋に入ると何もいない。
床は人工物っぽい謎床のままだが、岩をくりぬいた巨大なドームの様な部屋だった。
一応、マクロを使う。
支援魔法だが自分の攻撃力も確実に上昇している。
間髪入れずに攻撃魔法を使った方が威力は高かったかもしれない、などと思いつつ部屋に踏み込むと、奥の壁がぶっ壊れて出来た穴から巨大なヒュドラが飛び出してきた。
なんで、知ってたのかな…
攻撃を促された。攻撃魔法は習得していないが魔導書にあるので、多分使える。どうせ彼がやっつけてくれるだろうと言う事で、初級魔法でちょっと攻撃してみました、みたいな感じで、炎を放つ。
大炎上
「えーっ?!」
怒り狂って暴れるヒドラを少年が何回か攻撃して倒した。
足元から光が出たと思ったが、自分が光っていたらしい。
レベルが一気に上がり6になっていた。大幅なレベルアップは始めてだ。
それもそのはず、これまでモンスターなど倒したことはなかったのだから。
「そうか、今回はモンスターにダメージを与えたから、その分の経験値も入ったのね…」
「なんかうれしくなさそうだね」
「いえ、ちょっと。うん、大丈夫です」
部屋の真ん中に魔法のゲートが開く。
「じゃあ、ダンジョンから出ようか」
「はい」
促されて少女が先にゲートを潜る。
出口は入り口よりももっと山の上、ほぼ頂上付近にあった。
街に戻ると見覚えのある騎士隊が待ち構えていた。
「魔法で予測していたとは言え、本当にダンジョンを攻略して出てくるとはなぁ」
甲冑の騎士の後ろから、アナスタシアと瓜二つのドレス姿の女が現れた。
「姉さん…」
少年にもなにやら面倒な事になっている事だけは分かった。
「必要な時は言ってくれ」
一言だけ言って、一歩下がった。
「もうやめませんか。私は戻るつもりも、あなたをどうにかするつもりもありません」
「いくらお前がそんな事を言っても聞かない人間も多くてな。生かしておいても面倒なだけだ」
「私はあなたを殺したくないのです」
「はっ、随分な自信だなぁ」
そう言って自分は騎士たちの背後に下がっていき命令を出した。
「殺せ」
「はっ」
それで全てが終わった。
騎士たちが膝をつく。
姉のブラディスラヴァはそのまま地面に倒れ込む。
「な、なんだ」
「私のユニークスキルです。私に敵対した人間に各種状態異常が掛かります。回復魔法やポーションも効かなくなるので、たぶん、助かることはありません」
「た、たかがレベル3の癖に」
諤々と震えながらも意地だけで顔を上げアナスタシアを睨み付ける。
「さっきの戦いでレベル6になりました…。魔導師は魔法系職種の上位職なので、実質105相当になりますが」
姉のブラディスラヴァはレベルは18、騎士たちもほとんどが20そこそこ。魔法をエンチャントしている装備も、付与された魔法のレベルは高くても10程度であった。桁が違う魔法を防ぐ事も解除する事も、叶うはずもなかった。
本来なら動きを止める、僅かずつ体力を削る、など攻撃を補助する魔法も1桁違うとなると、もはや即死級だ。
ブラディスラヴァがまだ生きているのは、本人が魔法使いであり高度なスキルをいくつか持っていたからに他ならない。
「な、なん…」
「ごめんなさい。パッシブスキルなので、私にはどうする事も出来ません…」
騒ぎを眺めに来た野次馬たちが騒ぎ出す。
何かやましい事でもあるのか、錯乱した男が弓を構えようとする。
「よせっ!」
近くにいた冒険者が止めるが間に合わなかった。
そのまま倒れてしまう。即死だった。
「私にも『敵対』の定義が分からないので、しばらく隠れていて貰えますか? 私はここを去りますので」
50人ほどの死体を囲む野次馬に向けて語りかける。
少年の方に向き直って謝る。
「あなたにも迷惑をおかけしてすみません。ここまで連れて来てくれてありがとうございました」
「いや、良いよ。と言うかオレも一緒に行って良いかな?」
「え? でも、私と一緒だとろくな事ないと思いますよ?」
「ああ、その辺は大丈夫。オレも国から追われてるから」
「え…」
「と言うか、君とのパーティを解除するのが怖い」
「あー。ですよねぇ」
2人はパーティを組んだまま、そそくさと街を離れていくのだった。
お姉さん、悪役令嬢なので活躍させてあげたら悪役令嬢要素もあるよって宣伝できたんじゃが(オ
アナスタシアのチート級スキルがもう非道なので、逃げ延びてくりかえしって言うのが無理なのがアレ(語彙




