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第30話 最強の魔法使い

エピローグと言うかプロローグと言うか、そんなのです

目を覚ますと聖女が死んでいた。


寝かされていた自分の横に膝をついて祈るようなポーズのまま力尽きていた。

「バカね。私を蘇らせるくらいなら2人でどこか遠くに逃げれば良いのに…」

涙を堪えながら、聖女を寝かせてあげる。


聖女と勇者は愛し合っていた。

公然の秘密というやつだ。


だが、最大火力である魔法使いの自分を復活させて力尽きて死んだらしい。

むしろ自分の命と引き換えにする魔法だったのかもしれない。

とにかく、全てを自分に託して死んでいった事には代わりなかった。




「貴様らがいるからこんな事になったんだろうが」


魔王と呼ばれた何かとの、長い長い戦いが続いていた。

人類は次第に追い詰められ、多くの都市、いや、国が消滅して行った。

滅ぼされた地域は大量の魔物が徘徊し、人が近くことも出来なくなっていた。


街の人間たちが勇者のパーティーに言いがかりを付け出した。

これまでずっと皆んなを守ってきたと言うのに。


1人が騒ぐとそれに便乗して喚き出す者が出てくる。

気がつくと勇者パーティーが戦闘を招き、現状に至ったかのような騒ぎになっていた。


自分たちも多くの犠牲を払ってきた。

最大で10人居たパーティーも5人しか残っていなかった。

パーティーだけではない。多くの冒険者や騎士や兵士たちと共に戦ってきた。

たくさんの物を失ってもなお戦い続けた。


その結果がこれか…




「冒険者の1人が剣で君を刺殺し、それによって結界が消滅して街は滅んだ」

勇者は項垂れながら状況を説明した。

街の人間に追われるうちに仲間が死んだ。

その後、魔物が押し寄せて街の人間が大勢死に、もう1人の仲間が死んだと。

「…」

「俺は聖女を連れて、緊急避難用のスクロールで転移して、ここに逃げてきたんだ」

人間の遺体もアイテムとして格納することができる。

もう2人の遺体もあるがしまったまま、と言うことなのだろうと思う。

もはや復活させる当てはないが…


「ここは王都の大聖堂?」

「ああ。ここも既に人は居ない。もともと設置されていた結界の外は魔物だらけだ」

転移してきた直後は何故か中にも魔物が居たらしい。

人間が居ないのはその為か。

だが、現在外の魔物が入ってこれないのに中に魔物が居たのは…。

今更考えたところで不快な理由しか思いつかない。


「もう、ここには私たち2人しか居ないわけね」

大聖堂と言うより、この国に、と言うことだろう。

2人とも言わないが。


「そうなるな」

石の床に座ったまま答える。


「お誂え向きに、ここは大聖堂。儀式魔法を使うわ」

「1人で行けるのか?」

儀式魔法とは魔法陣や触媒を使い、大勢で呪文を唱えたりして強力な魔法を発動させる方法だった。

本来魔法使い1人でやるものでも、出来る物でも無かった。


「ええ。私なら出来る、はず。時間を稼いでもらえるかしら」

「ああ、俺にはもうそれくらいしか出来そうにないしな」

勇者と言っても普通より少し攻撃力が高いだけの剣士だ。

魔法や弓も使えると言っても、本職には劣る。

大量の敵をまとめて倒すことも、巨大な敵を倒すこともできないのだ。


魔法陣を描き、呪文を唱え出す。


魔物が大聖堂に押しかけてくる。

結界を守るために勇者が迎え撃つが半端な数ではない。

魔物の死骸で埋め尽くされ、身動きが取れなくなっていく。


呪文の詠唱で集中していても分かるほどの脅威が迫っていた。

敵も強力な魔法でこちらを狙っている。

今更止めることも、逃げることもできない。


視界の隅で勇者が魔物の群れに飲み込まれるのが見えた。


敵の魔法が発動した気配を感じたが、こちらに届くまで時間がある。


「3秒差で人類の勝ちだ」

儀式魔法が発動する。


敵の魔法が大聖堂の結界に激突して火花を散らす。

結界が破壊され大聖堂が倒壊するが、それと同時に大陸の上空に巨大な球体が発生する。

球体が放つ重力波が大陸の南側1/3を押し潰して陥没させ海底に沈めた。

そして今度は魔物を吸い寄せながら落下していく。

着水と同時に大爆発を起こして魔物の大半とそれを操っていたであろう何かを、そのダンジョンごと消滅させた。




 ああ、ダメだ。身体が動かない。と言うか感覚がないわ


よく見ると目の前に女性の足が転がっている。

周りに他の人間は居なかったはずだ。

聖女も勇者が仕舞ったのではなかっただろうか。

首の骨がいってしまったのか、顔を動かすこともできない。

動こうにも自分の腕がどうなっているのかも分からない。


感覚がないからよく分からないが、地面が揺れている気がする。

実際には魔法の余波であちこちからマグマが吹き出しているが、知る由もない。


「………」


もう、目も見えないが瞼が開いているのか閉じているのかも分からなかった。

とても疲れた。もう終わりにしても良いだろうか。そんな風に思ってた時だった。


「冒険を続けますか?」


どこかから、そんな声が聞こえた気がした。


 冒険? 冒険かぁ。冒険は好きだよ。もしも、もしも嫌な記憶を、全部、無しにして、人間に襲われる心配が、ない、のなら、また、みんなと…




ぴろん


『新しい職業が解放されました』




【魔導師】




「新しい冒険をはじめますか?」




一応、アナスタシアがしょっぱなから最強な理由。

蛇足とか蛇角とか蛇羽とか盛大に生えてる気がしますが


一応、ここで本編は終了になります。

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