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第29話 救世主

もう1話ありますが、第1章のまとめみたいなお話です。

男は闇の中を彷徨っていた。


男は王都を、王国を守る騎士だった。

ある日、魔物の大群が王都を襲った。

外から侵入してきたのではなく、王都の中から湧き上がったのだった。


男は戦った。

国を、仲間を、力無き者たちを守るために。


だが、予想だにしない内側からの攻撃、魔物のレベルも高く、次々と倒れる仲間たち。

やがて男も力尽きた。


だが、男は歩き続けた。

声を聞いたからだ。


「決して諦めてはいけません。信じて…」


聞き覚えがあった。

かつて何度か会った幼き王女の声だった。


いや、それ以前に何か硬い決意を持って戦い続けたはずだった。

思い出せない。

この先に行けば、見つかるのか、それすら分からないが、重い足を引きずるようにして歩き続ける。


やがて彼方に光が見えた。

そこに行けば何かが分かる。

そう信じて歩き続けた。


高台に1人の少女が両手を広げ祈りを捧げる姿があった。




王都全域の死者をほぼ完全な状態で蘇生させる、超大規模魔法が発動し降り注ぐ光が王都を照らした。


「相変わらず信じられない魔法ね。流石は女神の異名を持つ魔導師。いえ、今は大賢者だったかしら」

ルークに抱き上げられたままレイラが呟く。

「王都の人たちを朽ち果てぬ遺体にして保存したのはあなたでしょ? アレだって相当非常識な規模だと思いますけど?」

アナスタシアが言い返す。いくらアナスタシアでも遺体すら残っていない者を復活させるのは難しい。


「そうね。あなたならきっと、なんとかしてくれると信じていたから」

ルークがレイラを立たせる。

「あなたも、帰ってきてくれて嬉しいわ、私の勇者」

そう言いながらルークに抱きついた。


再会を喜びつつ話し込んでいると謁見の間に何人かの騎士が入ってきた。

装備はボロボロだがアナスタシアの魔法で傷などは癒えているはずだ。

その中の1人を見てアナスタシアが後退りする。


この国の王太子にして英雄、そしてアナスタシアの婚約者でもあるラインハルトだ。


「ああ、やはり貴方はこの国の救世主だったのですね」

アナスタシアの前に跪いて頭を垂れる。

「そ、そう言うのはやめてください!!」


ぴろん


そんな音がどこかから聞こえたかと思うと抑揚のない声がアナスタシアの頭に響く。


『新しい職業が解放されました』


【救世主】


「やめて!!」




復興が始まった頃、ソフィーの馬車が王都に辿り着き、レイラに謝っている姿が見られた。


「むしろ貴方の対応が正解だと思うわ。ただ、どうしても貴方に戻ってきて欲しかったの」

ソフィーの手を取ってレイラが答える。

「そんな。勿体ない」


レイラの護衛部隊も、王都内と周辺の魔物などの討伐が済んで王都が平和になった事で、その分の騎士や兵士が全国に派兵され、レイラの元に帰ってきた。




「そんであんたらはこんなとこで何やってんだ」


魔物が減って普通に本職のポーターをしていたソロのところにアナスタシアとレイラとソフィーとルークが来ていた。


「王様が魔王化して王都を滅しちゃったんだけど、私の魔法で干からびちゃったのよね。別に殺す気は無かったんだけど、相性が悪かったらしくて」

アナスタシアが頬に手を当てて人ごとのように話す。

姉に続いて婚約者の父親である。どこの悪役か。


「一応、私は王位継承権あるけど、未成年だし聖女だから当面結婚とか出来ないからって言い訳して逃げてきた」

レイラはアナスタシアと同じようなワンピースにマント姿で、髪型も綺麗な金髪をストレートに下ろしていた。生意気な妹分と言う感じだったのが、ちょっと背が低いアナスタシアの別カラーバージョンみたいになっている。


「俺はもともと関係ないから逃げてきた」

ルークは特に変わった格好はしていないし、聖剣も格納しているので、普通の冒険者と言う感じだ。


「王太子だったラインハルトも、父王があんな事になって王位は継げないって言い出して、王都は大混乱よ」

「婚約者さんが説得して王と王妃になってくれれば安心なのですけど」

レイラが横目でアナスタシアを見ながら笑う。


「いえいえ、他の聖女を探して貴方が女王にでも成られては?」

アナスタシアがやりかえす。


「姫さんは随分と雰囲気が変わったな。髪型とかもだが、もっと子供っぽいと言うかアレな感じだったが…」

「アレは周りの目を欺くための芝居です」

ソフィーが代わりに答える。


「色々大変なんだな」

「そう言えば、貴方の嫁はどうしたのよ。名前は決まったの?」

「いや、まだなんだけどな。今は家に居るよ」


「家?」

ハモった。


「一応、ここで暮らしていく事にしている。先のことは分からんけどな」

意外と堅実なソロだった。

「割と大きな建物だから、なんならあんたらも来るかい?」

「邪魔じゃない?」

「もともとチームの拠点みたいな感じだから、夜派手にやってても揺れないくらいの強度はあると思うぜ」

「夜派手にって、貴方たちと…」

アナスタシアがレイラの方を見て止めた。

「私たちはまだそう言う関係じゃありませんよ」


「…そう言うってどう言う意味かしら?」


アナスタシアとレイラがホホホと笑い合う。


「とりあえず、当てもない事だし、しばらく世話になっても良いか?」

ルークが無難な返事をして話がまとまった。


これから自分たちがどうなるのかも、この国の行末も分からないが、とりあえず居場所を確保した一行だった。


「落ち着いたらまた、新しい冒険をはじめますか」

ラインハルトはもうちょっと絡ませたかったと言うか、いろいろ事情があるとは言え、仲良かった幼なじみで婚約者と言う感じが全くしないのがちとアレですね。


もしも、この後の話を作る様だったら…、新しい男だす?(エ

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