第28話 奇跡
クライマックスでございます。クライがマックスなのです(オ
「私の勇者、その太くて硬い聖剣で私を貫いて」
「ここにきて下ネタかぁ〜」
アナスタシアとルークが王都にたどり着くと、そこは既に廃都と化していた。
斥候のフェットから知らされていたため大体の様子は分かっていたが、惨憺たる有様だった。
城壁は破壊され、街は焼け落ち、住人たちは亡者のようになって徘徊していた。
空には暗い雲が覆い、地獄の様相を呈していた。
「ゾンビ?」
ルークが呟く。
「いえ、これは朽ち果てぬ遺体、なるべく攻撃しないで進みましょう」
朽ち果てぬと言いつつだいぶ傷んでいるし、ゾンビと何が違うのか分からないが、それには触れないでおく。
王城は王都の中央に聳え立っているので近そうに見えるが、実際には真っ直ぐには行けないように出来ているため、見た目よりも遠い。城がデカすぎるのも影響しているのかもしれない。
所々で襲ってくる魔物はルークが背中に装備した聖剣を抜いて倒していく。
「わざわざ来たは良いけど、正直なところ俺は要らなそうだからな。これくらいは」
「何言ってるの、お姫様を救うのは王子様の仕事でしょ」
「いや、俺は王子様じゃないんだが」
「そう言う事じゃないのよ」
王城にも人気はなく、魔物と朽ち果てぬ遺体が徘徊するのみだった。
謁見の間と思われる広いスペースにそれは居た。
吹き抜けの高い天井。幅も広いが奥行きはもっと広く、運動場として使えるのではないかと言うほど広い空間の一番奥に段差があり、巨大な椅子が据え付けられている。
「ラスボスかな?」
「ラスボスはレイラかぁ」
2人ともやる気なさそうに呟く。
「なんだ貴様ら」
玉座に座った男が口を開く。
「私が呼んだのですよ…。玉座欲しさに王や王太子のみならず、事実を知った己の息子まで殺したにも関わらず、隣国の侵略に恐れをなして禁呪に手を出した、小さくて惨めな叔父様に最高の最後をプレゼントしようと思って」
その横に立った、何か禍々しいものに黒く染められたいかにもと言う姿のレイラが答えた。
「貴様」
国王、だった男、が玉座から立ち上がる。
身長3mはあるだろうか。もはや人間ではなさそうだ。
いや、アナスタシアに敵対して生きている時点で人間ではないのは明白だが。
「まあいい、この魔王レベル99の力を試させてもらおうか」
自称魔王が何か黒いガスを吹き出す。
「御座り」
アナスタシアが冷たい声で言い放つと、魔王が地面に跪く。
「な、なにっ」
「伏せ」
今度は地面に這いつくばる。
「な、何故だ、こんな小娘に」
「確かに、この身体は14歳の小娘ですが、あなたがそこで最強の王様ごっこをしている間に、私は7つの世界を渡り11の国を旅し、9億6千万のエネミーを倒し、体力値で470兆の回復をしてきました。あなたがそこで最強の王様ごっこをしている間に」
「な、何を?」
「この世界に戻ってくる際に時間は出立前に戻りましたが経験値自体は引き継ぐことが出来たので、今の私は大賢者レベル99です」
大賢者とは賢者レベル100相当
賢者は大魔導師・大神官レベル100相当
大魔導師は魔導師レベル100相当
魔導師は一般の魔法職を統合した物のレベル100相当である。
魔王はただの魔法職の一つだった。
「ふふふふ」
聖剣で貫かれルークに抱き抱えられたレイラが笑った。
レイラが魔王に余計な事をさせないために抱え込んでいた力を聖剣が全て消滅させたので、禍々しい姿から元の美しいお姫様に戻っていた。いや、アナスタシアたちと旅をしていた頃のレイラの姿は多少いじったものだったので、その時よりも遥かに清楚で高貴な姿だった。
「全ての責任を1人で抱え込んで、気になる殿方の胸で死を待つ私って、なんだかヒロインっぽいですね」
「分かる」
アナスタシアが何故かドヤ顔で答える。
「わかっちゃうかぁ…」
ルークがガッカリ顔で天を仰ぐ。
「分かるけど、そんな事は私が許さない」
アナスタシアが魔導書を取り出す。
「神様が決めた定でも?」
「例え神の定めだろうと!」
魔導書がアナスタシアの前に浮遊する。
「あなたは残酷な人だね。これだけ多くの犠牲を出したこの国で、この街で、生き続けろと言うのね…」
「違うね。私は物凄く我が儘なんだ」
アナスタシアの手に光が集まり鍵の形になる。
「第1、第2封印解除」
魔導書の表紙に描かれた鍵穴に光の鍵を差し込み回すと、鍵本体と鎖の絵が弾け飛び、たくさんの翼を持った神とも悪魔とも取れるイラストが現れた。
空中で寝かされた状態になると勝手に開きパラパラと捲られながらページが舞い散る。
「儀式魔法セットアップ」
アナスタシアの声と同時に地面が整地され、魔法陣や祭壇などが地面から生えてくる。
「第3封印解除」
足元の巨大な魔法陣の外周に10個のドアが地面から生えてきて、その封印が一斉に解かれ、中からローブを着た何かが現れた。そして各自も魔導書と同じような本を開き呪文を唱え出す。
人の言葉ではない呪文が響き渡る。
それはまるで荘厳な鐘の音のように。
そもそも魔法とは魔力を持たぬ人間が超常の力を得るために、神や悪魔、精霊などと契約し、その力を借りて不可能を可能にするものであった。
いつしか人はその身に魔力を宿し、魔法と言う概念をねじ曲げて、自ら限界を定めた。
だが、本来魔法に必要なのは契約とそれを行使するための儀式。
そして、アナスタシアの魔導書には一つの契約が記されていた。
それは奇跡。
雲間を突き抜けて幾重もの日差しが降り注ぎ、王都全体を照らすのだった。
もっと良い話になるはずだったんだが(棒読み




