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第27話 侍女

ソフィーさん回

魔王のダンジョンへの旅が終わり、レイラ様や護衛騎士たちと共に王都へと帰還した。


アナスタシア様は王国の軍勢が押し寄せてきているという知らせを受け行ってしまわれた。

どうやら王都には戻りたくないらしい。


ソロ様も自分は平民で王族とか貴族とかの相手はしたくないと同行を固辞。


レイラ様やアナスタシア様の様子から勇者…、ルーク様は再びこの世界に戻ってこれたのではないかと言う気はするが、それも確認することは出来なかった。


私はレイラ様の御側仕えを解任され、故郷に返されることとなったからだ。

向こうの都合は分からないが、とにかく私がそばにいる事をよく思えない状況、なのだろう。

正直その辺はよく分からないし、異議申し立てしたところでどうなるものでもなかった。


実家は王国の南東にある国境に接する領だ。

馬車を使っても結構な旅である。


「本音を言えば最後まで仕えたかったな」

遠く離れつつある王都の方を眺めつつ独言てしまった。

最後とはなんなのか、我ながらよく分からないが、あの旅でレベルも上がり、おそらく人間の刺客程度なら対処出来る気がするが、この先その能力を活かすこともないのだろう。




レイラ様専属の侍女になったのは(一部削除)歳の頃。

レイラ様は10歳だった。

「今日からお世話させていただきます、ソフィーと申します」

「うん」

大人の腰ほどしかない小さな身体に、背中まで伸ばしたボリュームの少ないストレートな金髪。

一見無表情に見えるが強い意志を感じさせる瞳。

小さな王女の姿があった。


私は辺境伯の三女で第二夫人との娘、と言えば聞こえは良いが、要は使用人との間に出来た子供だ。

それでも実子として育ててもらい教育まで受けられたのは幸運だった、のかもしれない。


王族の専属メイドとして働くと言うことはつまり侍女としての仕事も当然だが、いざと言う時にその盾となって死ねと言うこと。一応の戦闘訓練などは受けたものの、そもそも王女の命を狙おうなどと言うやからが相手だ。敵うわけもない。


こんな仕事についてはそう長くは生きられないだろうと思っていたが、意外とそう言った事は起こらなかった。


レイラ様はちょっと変わっている、と言うか、これこそ王族の血なのか、敵対するものを寄せ付けない威厳のような物を持ち合わせていた。そしてそれは支える側からしたら絶対の忠誠を誓うに相応しい姿だった。

当然、良からぬ事を考え、何か画策して途中で失敗に終わる、と言うことは何度もあったのであろう事は想像に難くないが、幸い、直接何か、と言うことはなかったように思う。



「ソフィーにいくつかしてもらわなければならないのだけども…」

「何でしょうか」

レイラ様が13歳になった頃、なぜか秘密を打ち明けられた。

自分は異世界から勇者を呼び寄せることができる召喚の巫女だと言う。

勇者と言うのはギフトを持って生まれた者の職業ではなかったか。

それとは違う、何かを呼ぶことが出来ると言うことだろうか。それは一体どれほどの者なのか。


「髪を切って欲しいの。そうね、ちょっと常識ではあり得ない感じでバッサリと」

「?!」

「…どうしたの? これはお願いではないのよ?」

「…申し訳ありません、私には…」

城に居る勇者の力を悪用しようと言う不届き者の目を欺くため伸ばした美しい髪を切りたいと言い出したので、髪を上げるだけで勘弁してもらうことにした。いわゆるツインテールと言う奴だ。雰囲気を変えるために毛先にカールを入れてみたりした。


「…仕方ないわね。これで我慢するわ」

「申し訳ありません」

深々と頭を下げて謝った。

本当に無理だった。

想像しただけで手が震えた。


レイラ様は次第に行動やら雰囲気やらも変えていき、頻繁に人目に触れるようになる頃には我が儘で何を仕出かすか分からないお姫様と言うイメージを作り上げていた。


時は流れ、レイラ様がもう直ぐ14歳になると言う頃、王都の西、国境付近に魔王のダンジョンが発生した。

ダンジョンは作られた、とかではなく、突然発生するのだ。

そこから溢れ出したのは魔族。人の姿をし、武器を使い、強力な魔法で攻撃してくる。

当然、防御力も高く、魔物を使役し、戦略を練って王都を襲ってくる。


最初の襲撃で国王と王太子、つまりレイラ様の血縁の方々が命を落とされた。

表向きはあれこれ言っていたが、私にはまるでこうなる事を知っていたかのように思えた。

今考えれば、あのレイラ様のことだから城の中で何が起こっているのかだいたい把握していたのだろう。


ギリギリまで勇者召喚を拒否していたレイラ様だったが、結局召喚の儀式をしなければならない状態に追い詰められ、儀式を執り行った、と言う体を装った。


そして、予め信頼をおける騎士を10人待機させており、儀式の終了後、魔力を使い尽くして自室に運び込まれる途中で城から脱出したのだった。




ある日、魔法の窓と思われる、半透明の板のような物が目の前に現れた。

レイラ様からの召集だった。

「はい」と「いいえ」と選択肢があった。

私に「はい」を選ぶ勇気はなかった。


だけど今、私は王都へ向けた馬車の中に居る…

ソフィーさんは最終局面には登場しない事にしようと思ったんだけど、やっぱレイラと一緒にいて欲しかったのでこんな話が湧きました

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