第25話 ゴーレムマスター
タイ○ンフォールレディ
ゴー、タイ○ン
と言うわけで(?)ほぼおふざけ回です
廃墟と化した街にエネミーが集結していた。
虫のような姿の魔物に、廃墟を拠点にして他の街を襲うような知能があるかは分からないが、放置しておけば近くの街への脅威になったのは間違いないだろう。
魔王のダンジョンの消滅に伴い、魔物の類は減っていくかと思われたが、それは一時的なもので、隣国の干渉などが落ち着いたはずの王国は相変わらず危機的な状態にあった。
そして、ついには王都の情報がその他の地域に伝わらない状況にまで陥っていたのだった。
上空で何かが日光を反射してキラリと瞬いた。
数秒後、街の広場だった辺りに何かが落下してそこに集まっていたエネミーを吹き飛ばした。
ある物は衝撃で砕け、ある物は建物に激突した。
地面は大きく揺れ、虫型のエネミーですらバランスを保つのがやっとのようだ。
落下して来たそれがスッと立ち上がる。
身長6mほどあるアイアンゴーレムだ。
ゴーレムにも色々あり、一般的なアイアンゴーレムは予め用意された鉄の人形にコアを埋め込み、その指示で動くが、このアナスタシアが作ったゴーレムは一味も二味も違う物だった。
その身体は小さな鉄の塊が寄り集まって人の形を成し、板状のパーツを鎧のように着込んでいた。
そして、その部品たちの8割近くがコアを持ち、相互に連携して動くことにより、普通の人と同等かそれ以上の動きを実現していた。
同じ、人が人より多少俊敏に動いたところで、それほど脅威にはなり得ない。
だが、物は6mのアイアンゴーレムだ。
それが、1/3も無い人間と同じかそれ以上の動きをするのだ。
エネミーに恐怖心があるかどうか分からないが、有ったらたまったものではなかったであろう。
もしくは遠近感が狂ったと勘違いして、正しく状況を判断できない、などと言うこともあるかもしれない。
その巨大なゴーレムが街の上空から降って来た理由はソロの奴隷の能力だった。
無限倉庫と呼ばれたその能力は、物を無限に格納するだけではなく、任意の場所にある物を仕舞い、好きな場所に取り出すことができる、と言うチート能力であった。
つまり、街の広場の上空に「取り出した」だけなのだ。
土煙が舞う中、立ち上がったゴーレムは背中に背負っていた魔法銃を構える。
長銃身の単発式魔法銃が6丁、銃口を円状に並べ、回転させた。
アナスタシアによって魔改造された魔法銃はそれだけでも高速で次弾装填を可能にしていたが、6つの魔法銃を順に発射する事でさらに6倍の連射速度を誇っていた。
この方式の場合、別に銃口を回転させる意味はないのだが、そこは見た目の問題である。
常に真上に来る魔法銃が発射されるように調節されていた。
弱いエネミーなら1発。多少強いエネミーでも数発で倒せる魔法の弾丸が物凄い勢いて撒き散らされ、次々とエネミーが葬り去られる。
と、その時、街の中央通りを巨大な黒い影が突進して来て、ゴーレムに激突した。
巨大な牛とサイを合わせたような黒い魔獣であった。
体高がゴーレムと変わらないほどあるそれとの間に、魔法障壁が生まれ火花を散らすが、抑え切れずに弾き飛ばされてしまう。
各部が多少損傷を受けたゴーレムだったが、もともとほとんどのパーツが独立したゴーレムであることもあり、大きなダメージにはならず、それも、魔力によって即時に修復されていった。
『魔力タンク残量低下、交換を要請します』
ゴーレムの擬似音声がソロの奴隷に告げる。
「はい」
ゴーレムの腰の辺りから生えた筒状のパーツを回収して新しいものと交換する。
無限倉庫の能力で交換も離れた場所から安全かつ楽々である。
新しいもの、と言っても放置しておけば空気中の魔素を自動で回収して満タンになる魔力タンクの満タンになったものである。
ゴーレムコア自体にも同じような機能があるが、それを補うために組み込まれた装置だった。
「エクストラウェポンの使用を許可します」
『サンキュー、レディー』
ソロの奴隷の指示にゴーレムの背中の装甲板が変形して、巨大な鉈のようなものが分離する。
ゴーレムがそれを引き抜くとさらに延長され、自分の背丈と変わらぬほどの大剣と化す。
果たして、炎がエンチャントされた大剣が、巨大な魔物を一撃の下に撃ち倒したのであった。
「凄いですね、ゴーレム様は」
「ゴーレム「様」って…」
アナスタシアが呆れる。
他の連中は凄いの部分に同意している。
「いえ、ご主人様のお仲間のアナスタシア様の従者ですから、私から見たら格上ですので」
「人ではないから格上とかじゃない、と思うんだけどね」
「それに、この子はあなたのために作ったから、私の従者ではなくて、あなたのだからね」
「私の、ですか?」
見上げると身長6mの鋼鉄の巨人が誇らしげに佇んでいた。
「それはそれとして、名前をなんとかしないとね」
「ゴーレムさんの名前ですか…」
「あなたのよ」
「私、ですか?」
「そうよ。てゆーか、あなたがちゃんとつけてあげなさいよね、ソロ」
「いや、いざ女の子の名前を付けろとか言われると、めっちゃ悩む」
「それは、分かる」
「だろ」
「うむむむ」
おふざけはおふざけだけど、別に笑える感じではなかった…




