表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/165

第23話 謎の占い師

お嬢様編ラストになります(お嬢様編?

「お父様が、この町や、この町に住む冒険者を嫌っていて、排除するためにダンジョンを溢れさせようとしている、と言う計画を聞いてしまって、私は暗殺されたのです」



ダンジョン。それは生きた迷宮であり、素材などを生み出す鉱山でもあった。ダンジョンが魔物を生み出すとも、周辺に存在する魔物を呼び込むとも言われているが、ダンジョンの中には多くの魔物が存在し、その素材を求める冒険者たちが探索をする。


魔物の素材は鱗や革、牙や角などと言った物も重宝されるが、最近では魔物の体内で魔素が凝縮されて出来た石だったり、魔物の活力源として生成された魔素の塊だったりを収集し、それを加工して魔道具にしたり、魔道具の燃料として使ったりするのがトレンドのようだ。


人間に対するダンジョンの立ち位置も様々な説が囁かれているが、実際のところはよく分かっていないのが現状だ。場所にもよるが、だいたいのダンジョンは松明などの照明を必要としない程度には明るく、また、一部の上位冒険者しか知りようのない事だが、深部と呼ばれる奥のエリアには、冒険者を支援するように置かれた魔法の支援物資箱や体力回復用の施設などが設置されていた。人間を助けたいのか、誘い込む為の罠なのか。



このダンジョンから南に4kmほどの距離に、わりと大きな街がある。一般市民がメインで戦力の方が少ないこの街は大きな壁に囲まれ、門も頑丈だが大きく重く開閉にはそれなりに手間が掛かる。いつでも出入りできるわけではない上に1時間以上は歩く距離、いつしか冒険者たちはダンジョンの南西に小さな町を築いた。


中継基地が出来れば冒険者の利便性は上がるが、商売や税の問題が出てくる。

それをよく思わない者達も出て来たわけである。



「暗殺()()()?」

「はい…。いえ、本当は殺すつもりはなかったのかも知れません。私が逃げ回ったので馬車で追ううちに轢いてしまった、と言う方が正しいかもしれませんが、どう考えても助かるとは思えない、と言う状態になったので、森に捨てられました」

娘の姿を上から下まで確認する。

特におかしな様子はない。


「お父様、たった今ご自分も体験されたばかりではありませんか」

くすくすと娘が笑うのを見て、自分の身体を確認する。

幅10cmはあるソードで貫かれたはずなのに、全く痛みも何もない。


「なるほど、私も暗殺された、のだったな」

「はい」


2人の先では騎士や兵士たちが魔物と戦っていて、こちらを見ている者は少ない。

あのまま死んでいたら何故死んだのか分からないままと言う可能性も否定できない。


「助けて頂いた方の導きで私も『英雄の領域』レベル30です。そのうちお父様を追い抜いてしまうかもしれませんね」

可愛らしくガッツポーズをする。

「な、む、娘が身を守れるのはありがたい事ではあるが、それは…」

「ふふふ、冗談ですわ。私は何か有事にでもならない限り再び弓を取るつもりはありません」

「そ、そうか。それは良かった」


そう言いつつどこかから弓を取り出し、エネミーの群の中に矢を射る。

低い音を立ててエネミーが吸い寄せられる。スキルの一種だろう。

それに気づいた兵達が槍で滅多差しにしている。


「…」

「ところで、お父様はどうしてこちらに?」

「お、おお、お前が行方不明になってしまったから、方々に手を回して調べたのだが一向に分からなくて困っていたところに、占い師を名乗る女性が現れてな。あのダンジョンを溢れさせ、私を貶めようと言うやからが居ると教えてくれたのだ」

「困った果てに占い師を頼ったのですか…」

「いや、まあ、そうだな。だが、あの占い師、ただ者ではないのは間違いないのだ。出てくる情報も中途半端な物はひとつも無く、まるで見て来た、いや、調べたかのように正確だったし、その所作は上位貴族のそれだった…。もしかすると、どこかの国の密偵かもしれない」

「それは…」

「ああ、不味い事になった可能性も否定は出来ないが、お前の身の安全、いや、行方には代えられず致し方なかった。いや、私から出した情報など微々たる物だから、正直彼女の思惑は分からん…。とりあえず、この事件に関わった者は既に押さえているから、お前は安心して帰って来てくれ」


「なんだか親子2人して不思議な方に助けられたのですね」


指に嵌めたマジックアイテムのリングを愛おしそうに触る娘がちょっと心配になるが、このまま喋っているわけにもいかないので、娘には町の中にいるように指示して魔物討伐に赴いた。


その後も時折謎スキルと思われる矢が飛び交ったが気にしない事にした。




アナスタシアは人目につかないところから情勢を監視していた。


「さすがに占い師は胡散臭すぎたかしら。でも、噂話を耳にして密偵を走らせて情報を掴みました、とか言ったらむしろ捕まりそうだし仕方ないわよね」


ダンジョンの出入り口を中心に数百メートルに渡って広がっていたエネミーもだいぶ片付いて来た頃、ぴろんと言う音と共に目の前に半透明の板が浮かび上がるのだった。

お嬢様が馬車に轢かれた理由をもうちょっとそれっぽく出来たら良かったんだけど思いつかなかった。

本来は嘘の情報をわざと聞かせて泳がせる算段だった、とかかなぁ(自分でもよく分かっていない

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ