第22話 溢れ出すダンジョン
おてんばなお嬢様が超強くなる話です(そうかな
「お父様。私はお父様を倒さねばなりません」
ダンジョンから溢れ出した魔物が迫りくる中、少女は甲冑を着込み騎乗した騎士と向かい合っていた。
「と言うわけでやって来ましたダンジョンの深部です」
ポーターの男が現在位置を教えてくれた。
自分は冒険者ではないと繰り返すその男は、ここまで来るだけで数百のエネミーを屠っていた。
「深部とは、どう言う事でしょうか」
少女はダンジョンの知識どころか、冒険者と言う存在も、噂で聞いたことがある、程度の知識しかないお嬢様だった。
「一般的な冒険者がたどり着けるのが上層。高ランクの冒険者ならなんとか生還できると言われいるのが、中層。そしてそのさらに奥が、ここ深部ですね」
何か子供に説明するような口調になっている。
「…危なくはないのですか?」
「まあ、ダンジョンだからね、それなりに危ないけど、君もそろそろレベル25だし、そうそうやられる事もないと思うよ」
「へ? レベル、25?」
特に気にしていなかったのでうろ覚えだが、ダンジョンに入る前は10台だった気がするが、ステイタスは確かにレベル25になっていた。
「この規模のダンジョンをクリアしたら、それだけで30くらいまで行くからね」
男は大した事じゃないように言っているが25と言うと、もはやベテランの騎士クラスだ。
もっとも職種が戦士や騎士ではないので、そのまま比較して良いのか少女には分からなかったが。
アナスタシアは宿で借りた部屋に入る時、一拍動きを止めた。
「フェット、居ますか?」
「はいお嬢様」
どこかから声が聞こえる。
「あまり良くない噂を聞きました。動いて貰っても良いかしら」
噂を聞いたと言っても本当に聞いたわけではなく魔法である。
「かしこまりました」
返事とともに気配が消えたのを確認して、アナスタシアは部屋に入っていくのだった。
「で、これが深部でしか出会えない魔法の物資箱だ」
「物資箱」
「神様か誰かが冒険者のために置いてくれている支援物資らしい。詳しい事はよく分かってないっぽいけどな」
「はあ」
少女の訓練ついでにエネミーを退治しつつダンジョンを進む。
途中、要所要所に箱がある。
「カタナ…」
全長1mほどとソードに比べて小振りにも関わらず柄の部分が3倍くらいある剣をゲットした。
「結果発表〜。ででん」
「えーと、武器防具一式、携帯食料、水、お弁当、各種ポーション。そして、なんか凄いポーションこと最上級ポーションは3つ出ました」
「おおー」
拍手し合う2人。
「お金や経験値も凄かったので、レベルキャップ開放までしてしまいました」
ここは街の神殿。スキルを取ったりと言った手続きをしてくれるところだ。
レベルがカンストした状態で経験値だけ溜まった状態だったので、開放と同時に30になっていた。
「俺もそこそこ補給できた。コツさえわかれば意外と簡単に手に入るだろ?」
「コツと言って良いのかは分かりませんが」
「ああ、あと、これもやるよ」
指輪を投げ渡される。
「毒無効の指輪だ。変な話だが、今のあんたはそれがあれば基本安心だと思う」
「えっ、あっ、その、すみません。ありがとうございます」
顔を真っ赤にしてしどろもどろになっている。
この指輪にマジックアイテム以上の意味がない事は分かっていた。分かっていたが嬉しかった。
とあるダンジョンからエネミーが溢れ出した。
上層のエネミーだから雑魚だが数が半端じゃない。津波のように付近の町に雪崩れ込もうとしていた。
ダンジョンの最寄りの町は元々一番近かった街よりもかなり近くにあったが、冒険者の行き来が便利な分、塀や門は木製で、これだけのエネミーが一度に押し寄せたら保ちそうもなかった。
その時、上空に魔法陣が浮かび上がり無数の矢が降り注ぐ。
逃げ遅れた冒険者の先に黒い玉が付いた矢が突き刺さり、鈍い音と共にエネミーを吸い寄せた。
少女が門の前に躍り出て3本の矢を同時に放つと、放たれた矢が巨大な狼になりエネミーを蹂躙していく。
「ミーシャ…」
後から現れた騎士が少女の名を呼んだ。
「後どれだけの事をしたら、お前に信じてもらえるだろうか」
馬の横に降りた父親である騎士が問いかける。
「後?」
町を迂回する形で現れた騎馬隊が、門の前で合流してエネミー討伐に向かう。物凄い数だ。
「これは?」
「この町を守るためにかき集めて来た戦力だ」
「え? じゃあ…」
見つめ合う父娘。
「ぐうっ?!」
騎士が突然うめき出し、背中から貫通した剣が鎧を突き破って現れる。
「な、なに?」
騎士の後ろに男が現れる。同じような鎧を着ている。
「くっくっく、ダンジョンに細工して町を危機に陥れた罪を擦りつけようと思っていたが、わざわざこんなところまで出張ってくれるとは思わなかったよ」
騎士に刺さっていた剣を引き抜き、少女に向かってくる。
「せめてもの慰めだ、娘も一緒に送ってやろう」
剣を振りかぶると弓を持っていたはずの少女の武器がいつの間にかカタナに切り替わっていた。
ひと太刀にも充ない一瞬で無数の太刀筋が交錯する。
「なに?」
男は両手首と両足首を切断されてその場に転がる。
少女が刀を鞘に収めた音と同時に全身から血が吹き出す。
「急所は外しました。簡単には死なないと思います」
「え?」
「お父様」
「…もう死ぬと言う時に、娘にそんな爽やかな顔をされるほど嫌われていたのかと思うと…」
「何を言っているんですか」
そう言いつつ取り出した小瓶の蓋を折るようにして開けると、小瓶が砕け散るように光に変わる。
「!?」
致命傷と思われた傷が完全に治っていた。
もっとこう、つらつら書き込んだ方が良いような気もしますが、個人的にどんどん削っていくスタイルに慣れすぎてて、そこまで説明せんで良いやろとか思ってしまって文字数が伸びないんですけど、どうなんですかね




