第20話 勇者転生
サブタイトルは勇者になってるけど、勇者はあまり活躍しません(
「ワッハッハッハッハー。この結界は魔法やスキルを無効化する。例え勇者と言えども身体能力だけで魔族たるこの私には適うまい」
身長2.5mは有るかと言う黒い肌をしたヤギ頭のマッチョ親父が巨大な剣を振り回しながら煽る。
「くそっ、それ以前に、こっちはまだレベル上げの最中だっつーの」
勇者と呼ばれた少年は、たまらず吹き飛ばされ、転がってしまった。
「終わりだ」
そう言って巨大な剣が振り下ろされた。
おかしな結界に気が付いたアナスタシアは中に人の反応を感知して、確認のために進入していた。
「わざわざ死地に踏み入れるとは愚かな」
安っぽいセリフを吐く魔族が現れた。
「ふーん」
「自分の置かれている状況が分かっていないようだな。魔法でしかダメージを与えられぬ我々を相手に、魔法が無効っ」
魔族の額に穴が開く。
アナスタシアの手には魔法銃が握られている。
「これは魔法無効でも使えるんだって。しかも物理とか魔法とか関係ないらしいよ」
連射する。予め弾を生成しておけば10発撃てる。
魔法銃は制限が少ない代わりに威力が低いネタ武器と呼ばれていたが、無駄に高いアナスタシアのステータス補正で、そこそこの火力が出ている。
そして、アナスタシアの武器スロットには6丁の魔法銃がセットされていた。
穴だらけの魔族が累々と横たわっている。
「さて、せっかくの余興だし、私も少し遊ぼうかな」
アナスタシアは魔法銃をしまって歩き出した。
この世界には勇者がいる。
特別なギフトをもって生まれた人間に限られるが、職業として勇者をしている者がわずかだが居るのだ。
少年は生前も勇者だった。ただし、異世界から召喚された特別な勇者だった。
世界の歪みから生まれる、職業ではない特別な魔王と戦うために。
その戦いで肉体を失い、魂も傷つき、完全にその存在が消えゆくと思ったその時、彼を呼ぶ声があった。
「冒険を続けますか?」
気がつくと、あの森に降り立っていた。
「やあ少年。またあったね。説明は必要かな?」
そこにはボーイッシュなお姉さんが立っていた。ヨーコだ。
「付き合ってもらっても良いかな? 1人はなんだか寂しいから」
「ふふふ。またドラゴンに吹き飛ばされたりしないなら」
「今度は大丈夫だと思うよ」
お互いに懐かしい人との再開のような気分だった。いや、1年近く経っていれば十分懐かしいの範疇か。
「君の職業は勇者だね」
ヨーコは相手の職業を判別するスキルを持っているのだ。
「職業勇者かぁ」
ちょっと苦笑する。
「勇者は戦士、魔法使い、弓士の武器やスキルを一通り使えるようになるよ」
「便利だね」
「元々のステータスも高いから、初期で苦労することもそんなにはないんじゃないかな」
アイテム管理などの謎能力も普通に使えるので、予備の装備も含め武器を拾い軽くレベルを上げ、神殿でヨーコと別れた後、強くてニューゲームを始めることにした。
魔族を自称する大男が振り下ろした巨大な剣を、紫の長髪に金属の仮面、青地に白のラインや模様の入ったローブを纏った小柄な人物が片手で受け止めていた。
「な、なにーっ!」
信じられないと言った感じで魔族が叫ぶ。
「魔法無効、面白い余興だが、私の素の物理防御力は8600だ」
「8600だと?! あ、あり得ん」
この世界の普通の人間は50〜100程度。
それなりに訓練して武装した戦士や冒険者が300〜500程度だろうか。
「ちなみに打撃耐性は120だ」
「なっ」
打撃耐性の最大値は本来100、普通に上げられるのは50程度だ。つまり
「たまに殴られて体力が回復したりするぞ」
「バ、バケモノめ」
「お前に言われたく無いな」
受け止めた剣を毟り取ると魔族の指も一緒に千切れ飛ぶ。
奪い取った剣を投げ捨てると、凄い音がして地面が抉れた。
ストレングスもまともな数値ではないのが一目瞭然だ。
「どうした、本気を出さないと死ぬぞ。魔力で直接炎を燃やせ、大気を操り敵を切り裂け、大地を揺らせ、己が体を作り替えその牙で砕け。さあ、さあ、さあ」
「な、何を」
あまりの迫力に思わず後ずさる魔族。
「…なんだ、お前ら魔族などと名乗っておきながらその程度のことも出来んのか…」
そう言うと青ローブは右手を横に伸ばした。
手元に十字の光が現れる。
「ま、魔法無効の結界が…」
「これは魔法じゃない。魔力で直接現象を起こしている」
「い、意味が分からない」
魔族は完全に戦意を喪失していた。
「つまらんな」
その光を剣のように操って魔族を斬り伏せた。
次の瞬間結界が解かれ、巨大な火の玉が降ってくる。
「残念だったな。私の本職は魔法使いだ。魔法耐性は300」
300以上には上がらないので300だった。
上空にいた魔族の後ろに現れる青ローブ。
「大丈夫?」
魔族の破片と共に少年の前に降り立った。
「ありがとう。それと、ひさしぶり。しばさん」
少年、ルークの生まれ変わりは恥ずかしそうに立ち上がりながら正体を言い当てた。
「えーっ、わざわざ変装してきたのに…」
人気のないところまで行って装備をいつもの黒基調の服装に変更した。
別れる前とほとんど変わっていない。
「さすが、7つの二つ名を持つ女だね」
「7つなのか二つなのか。と言うか7つも無いよ」
少年が旅の途中で聞いた噂を上げて行った。
白銀の妖精
銀翼の天使
白い魔王
黒衣の聖女
護国の女神
光剣を携し勇者
七つの二つ名を持つ女
「え、最後の一つ違わない? てゆーか、知らないの混じってるんだけどーっ」
サブタイトルは光剣を携し勇者と迷ったけど、まあいっか、つて(オ




