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SS 冒険者

だいぶ救われない内容なのでご注意ください。

主人公たちにはイージーモードの世界だけど、普通の冒険者は大変なんだ、と言うお話。

「ぐぎゃぃいあがあああああっ!!」

ダンジョンの中におよそ若い女性のものとは思えない叫び声が響き渡った。



この世界には無数のダンジョンが存在していた。

その構造は石造りの回廊であったり、アリの巣状の洞窟だったり様々であったが、共通するのは自然に出来た物でも人の手によって造られた物でもないと言う事だろうか。いや、人が作った物ではないと断言できる証拠も無いが、簡単に人が作れるような規模ではなかった。


それどころか外の地形と矛盾があるダンジョンまで存在するため、入り口から中は魔界や地獄に繋がっていると言う者まで居るのだった。


ダンジョンの中には魔物が住む他、外では手に入らない鉱物や苔などが手に入る。

最深部では伝説級の武具やアイテムなどが手に入ると言われている。

ただし、一般的な冒険者が深部だと思っているエリアはせいぜい上層部、行って中層であり、下層や深層にたどり着けた人間はごくわずかだ。



今日もダンジョンを攻略しようと探検していた冒険者が魔物と戦闘していた。

1人の女剣士が剣を持った左手を食いちぎられ、普段からは想像できない叫び声を上げた。

普通の獣は首に届くようなら急所を狙う。届かない場合は転ばしてから急所を狙うから、わざわざ腕を食いちぎったりは、あまりしない。運が良かったと言うべきか、悪かったと言うべきか、女剣士は左腕を失った。




「ん…」

目覚めると自分の部屋のベッドで横になっていた。

冒険者パーティーが拠点にしている町外れにあるちょっとした屋敷だ。

頭が重くて起き上がれそうに無い。


物音がした気がして、なんとか首を動かしてドアの方を見ると少女が入ってきた。

冒険に出ている間、この拠点を管理してもらっている娘だ。


「あ、起きました?」

少女の言葉に答えようとするが、口がハクハクと動くだけだった。

「あ、無理しなくて良いですよ。お水、飲んでくださいね」

そう言ってチューブ状の物を口に差し込んでくれる。


3日ほど眠り続けていたらしい。


起きられるようになるのにさらに数日掛かった。

片腕を失い、他にも怪我を負っていたにしては回復は早かった。

この世界には回復魔法やポーションなどが存在するのだ。

自然治癒や、医療よりも早い。のでは無いだろうか。


「あの…、ね、みんなは…、どうしているのかな…」

ずっと聞けずにいた事を少女に尋ねた。


「えっと、みなさんも怪我をしてた事もあって2日ほどはお休みしていたんですが、ダンジョン攻略に出かけて行きました、よ…」


ダンジョン攻略に数日かかるのは珍しいことでは無い。

無いのだが、不安が拭えなかった。


「何か、聞いていない?」

「…」

「みんな、は…」

「…あの、はい…。その…、ダンジョンの深部に行けば、上位の回復薬が手に入るかもしれない、と…」

「あ…」


上位の回復薬には普通のポーションでは直せないような傷も治せる。最上位の物になれば欠損すら治る、と言われている。そんな物は一般には出回らないし、冒険者が買える値段では無い。


だが、手に入るのがダンジョンなのであれば冒険者にはもう一つ入手する方法があるのだ。


「そんな…」

「…」


もともとダンジョンの攻略はしていたわけだし、いきなり無理をするような事はない、かもしれない。だが、不安が拭えず重苦しい空気が流れた時、来客があった。


少女が確認に行くのに付いて行った。


入り口には白いローブを着た金髪の美少女と、光の加減で青みがかって見える黒髪の冒険者の少年、それに2人より年上に見えるワンピースの女性が立っていた。


「すみません。宿を探しているのですが、こちらなら今部屋が空いているのでは無いかと紹介されて…、一晩停めていただけないでしょうか」

「あ、大丈夫ですよ」


ローブの美少女の問いに少女が即答した。

この屋敷はもともと普段は部屋が余っている事もあって宿屋も兼ねていた。

流石に少女1人では対応しきれないので、近所に声をかけて手伝ってもらう形だが。


ローブの美少女が女剣士の姿に気づく。


「あの、良かったら治しましょうか?」

「え?」


少女の提案に本能的に気がついた。

この少女は凄い魔法使いか神官だ。

常人にはない雰囲気が漂っている。


「あ、いきなりそんな事を言われても驚くよね。この子は聖…いや、高位の聖職者だから場合によっては欠損も治せるんだ」

一緒に来た少年冒険者が代わりに説明する。


 違う。そうじゃない。そうじゃないんだ。ただ、なぜ、今。なぜ今日なのだ…


聖女の力は女剣士、いや、元女剣士の傷を癒し元よりも健康なほど回復した。

冒険者は皆、危険を承知でダンジョンに挑んでいる。

怪我をするのも治らないのも、他人にとやかく言うことでは無い。

ましてや治してもらって愚痴を言う事ではない。分かっている。



翌日彼らが旅立ち、それからまた数ヶ月の日々が過ぎて行った。

少女と2人で宿屋の仕事をしたり、冒険者ギルドの安全な依頼などをして待ったが仲間たちが帰ってくる事は無かった。

本当は本編で書ききれなかったところを補足するようなのを書きたかったんだけど、全く関係ない話になりますた…

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