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5-29 チート主人公は冒険に向かないですか

俺たちの戦いはこれからだ(マテ

「あ〜、もうボス部屋ですか。なんだか早かったですね」


アナスタシアとラインハルトは比較的街に近いダンジョンに来ていた。

色気のないデートである。


「最深部まで潜れば経験値もそれなりに入りますが、流石に手応えがないですね」


ラインハルトも人間を止めた強さなので、戦ってここまで来た、と言う感覚ではなかった。


ダンジョンの中は魔法の照明でほのかに明るい。

割と小綺麗な回廊風ダンジョンなので雰囲気が良いと言えなくはない。


一般的な冒険者が深部ではないかと思っている辺りから、さらに3倍以上深く潜った地の底である。

同じ距離上に登ったら寒く空気が薄くなるほど地表から離れているはずだが、実はダンジョンは地底ではなく異空間に有るのでそれほど不快感はない。実際の地下空間だったら地熱やらなんやらで大変なことになっていたかもしれない。


軽装備にソードを腰に佩たラインハルトと黒地に金糸の飾り模様の入ったローブにフード付きのマントを羽織ったアナスタシアが、まるで街を散歩するかの如く話しながら歩いていた。


ボス部屋に踏み込む。


「あ、ここのボスは…」

「はい?」


ラインハルトの忠告がアナスタシアに届く前にボスエネミーの口から発射された閃光がアナスタシアを捉えた。


「先制攻撃しかけてくるので…」

「あー」


アナスタシアは全耐性300である。


耐性マイナスは追加ダメージが入る事を示す。

耐性1〜100は敵の攻撃の減衰率を示す。

耐性101〜200は本来受けるダメージ分回復する回復率を示す。

耐性201〜300は攻撃してきた相手に反射するダメージ率を示す。


「すみません…」

「別に謝らなくて良いですよ」

「はあ…」


広いドーム状のボスエリアに2人ポツンと腰掛けてお弁当を食べる。

ボスを倒してすぐなのでしばらくは明るいのだ。

また何日か放置するとボスが住み着くが、普通の冒険者が知る事はない。


「あの、ラインハルトは私と一緒にいて楽しいですか?」

「…楽し…くは…ないかもしれませんね」

「え?」

「貴方の側に仕えることが私の存在意義なので、楽しいとかそう言うのとは違う気がします」

「…んー。貴方の反応は誰かに似ている気がするのですが、誰だったでしょうか」



「とりあえず素材を回収してダンジョンから出ますか」

「あ、はい」


ラインハルトがナイフでボスモンスター、巨大な火蜥蜴亜種を解体しだした。

全反射で自分が死ぬほどの攻撃力の先制攻撃だった。普通の冒険者だったら出会い頭の攻撃で死んでいただろうな、と思うが、特に何も感じない。緊張感も何もないのは冒険とは言わない気がした。




見晴らしの良い丘の上で2人並んで腰掛けて遠くを眺めていた。

世界樹も見える。


この丘の下と言うか、斜面の一部が削れていて、そこがダンジョンの入り口になっている。

実際にこの下に広大な迷宮が存在しているわけではなく、亜空間に存在する迷宮の出入り口とボス部屋のゲートがここに魔法で繋がっており、ボス部屋のゲートのみ、ダンジョンから出る方向にしか通れない様になっていた。


ボス部屋のゲートはダンジョン内では何キロも下だが、こちらの世界では出入り口の少し上にある事が多い。


アナスタシア達よりも先に入ったと思われる冒険者パーティーがボロボロになって出入り口から出てくるのが見える。これから街へ帰るのだろう。おそらく入り口からそれほど進めて居ないだろうし、手にした素材なども本当に浅い層でのドロップ品くらいだろうと思われるが、その顔は充実感に溢れていた。


アナスタシアは、ふと、ラインハルトを見る。

そこには充実感と言うか満足そうに微笑むラインハルトの顔があった。



「ラインハルトは冒険が好きですか?」

「うーん、そうですね。何をするにしても結果が出れば嬉しい物ですが、私は基本的に貴方の隣に立てる人間になるために修行として冒険者をはじめたので、冒険そのものが目的ではないんですよね」


じっと見つめる瞳に赤くなって目を逸らすアナスタシア。


「えっと、その…」

「…では、逆に貴方は何をしたいですか?」

「へ?」

「今の貴方は1人の冒険者ですから、自分の行きたいところに行ってしたい事をして良いんですよ」


「えっと、あの、そうですね。いろんなところを回って、本を読みたいです」

「良いですね」

「他の国とかも回って」

「ではいつ出発しましょうか」

「ほえ?」

ラインハルトの言葉に驚いて顔を向けると、楽しそうにこちらを見ていた。


「諸外国を巡って、書物を見て回る旅に出ましょう。お供しますよ。貴方の魔法があれば城の書庫だろうが屋敷の書斎だろうが自在に侵入出来るでしょうし、むしろ、人脈を作って正攻法で行くのもそれはそれで楽しそうですね」

「えっと、こう言う時は、なんて答えるべきなのでしょうか」

「貴方が望むままに…」


「ご迷惑おかけしますが、良ければ一緒に旅に出て頂けますか?」


「もちろん、よろこんで」


「じゃ、じゃあ…」

真っ赤になるアナスタシア。

「みんなには手紙を出して、今から出かけましょうか。2人で」

「良いですね。行きましょう」


立ち上がると手を差し出すラインハルト。

手を取って立ち上がるアナスタシア。


2人は着の身着の儘、旅に出るのだった。

アナスタシアはなんでも出せるので着の身着の儘ゆーても、手ぶらじゃないんですけどね。


と言うわけで、だらだらと続けてしまった連載ですけども、本編?はこれで終了です。

実際には明日、おまけの話と、あとプロットをいじった物をおまけで上げるつもりですので、興味がある方はよろしくです。

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