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5-23 神なる力ですか

神回(間違い

「それを渡してもらおうか」


金ピカの鎧にマントを付けた大柄のゴリマッチョ男が闇の中から現れた。


「それは人間如きには過ぎた物だ。この神たる私が接収してやろう」


先ほどまではアナスタシアに感知出来なかった事を考えると転移して来たのだろう。この世界の魔法に転移はないからユニークスキルなどの何か特殊な力を持った存在なのは本当だろう。心なしか光っている様に見えなくもない。


「………何を言っているんだお前は」

アナスタシアが吐き捨てる様に応えた。



王国の南に生まれた構造的におかしなダンジョンからメッセージを読み取ったアナスタシアは、西の果てにある元魔王のダンジョンに来ていた。果たしてそこで待っていたのはアナスタシアが生み出しダンジョンの精と呼んでいた擬似生命体だった。


彼らはアナスタシアが創り出しソフィア=エレノヴァ=ヴォーセンブルグに託されたマスターコアをアナスタシアに返却するべく守っていてくれたのだ。


「貴様が一連の騒ぎの犯人か。ひり潰してやるから泣き叫びながら死ね」

完全に目が座っているアナスタシア。

禍々しいオーラでも出ていそうだ。


仲間達は少し下がって黙って見ていた。

こうなったアナスタシアを止められる者は居ないし、むしろ邪魔をするのは無粋だと思われた。


「な、貴様っ。愚かな、愚かな生き物の分際で、神であるこの私にその様な口をきくか」


怒りを露わにする自称神。


「死んであの世で悔やむが良い」


金ピカ鎧の自称神が何やら唱え始める。

みんなには何を言っているかすら分からなかったがアナスタシアには覚えがあった。


「この呪文は…」

「ぐっはっはっはー。今更気がついたところでもう遅いわー。ここまでたどり着ける手腕はなかなかな物だったが、この魔法は貴様ら人間如きには止められん。神なる力見るが良いいいいいいいっ!!」


高速多重詠唱をしながら無駄口を叩けるのは流石神と言うべきだろうか。

本来は多人数で行う儀式魔法が見る間に組み上がっていく。


膨大な力が最高点に達した頃、アナスタシアが呟く様に呪文を唱えた。


「契約者アナスタシアの名において命じる。キャンセル」


自称神の組み上げていた術式が全て解除された。


「な、なにいいいいいいっ?!」


「何を驚いている。神と契約した本人が魔法の行使をキャンセルする事が出来るなど当然だろう?」

「け?契約した…本人?…」


「呪文にも対になる魔法陣にも記名してあるだろう? アナスタシア=フォン=バーンシュタイン、それは私の契約名だよ」

「なななな、なん、だ、と…」

「もしかしてお前は神代文字も読めずに翻訳魔法か何かを使って呪文を唱えていたのか?」

「え?」

「自分が魔法を使える仕組みすら理解していないのか…。どうせダンジョンマスターになれば膨大な魔力が手に入るとでも思ったんだろう。愚か者が」


アナスタシアが呆れを通り越して疲れた様に吐き捨てた。


「お、お前は、いったい、いったい何なのだあああああ!!」


錯乱した男が剣を抜いてアナスタシアに襲いかかる。


アナスタシアは掌に球状の光を浮かべて剣を受け止める。


男は自分の胸の辺りまでしか身長のないアナスタシアをめったうちにしようと剣を振り回すが、全てアナスタシアの手にある球体に弾かれた。その速度はもはや人の目で追い切れる速度ではなかったが、アナスタシアはあまり動いている様に見えなかった。


不用意に剣を振り上げた瞬間にアナスタシアの手の球体が脇腹にめり込む。

比喩ではなく、身体を構成していた何かを分解して実際にめり込んでいく。


そのまま吹き飛んで転げ回る男を冷めた目で見下すアナスタシア。



アナスタシアが魔導書を取り出し呪文を唱えると、光り輝くページが舞い散る。

地面がまるではじめからブロックを敷き詰められていてそれが反転するかの様にめくり上がり裏返しになって整地されていく。綺麗な平面になった地面に巨大な魔法陣が浮かび上がり、周辺には燭台などが立ち並び、10人の魔導師が取り囲んだ。


響き渡る呪文、高速多重詠唱はもはや人の言葉には聞こえず、荘厳な鐘の音の様に鳴り響く。


「こ、こんな…ことが…」


魔法、それは神との契約。神を介して精霊に働きかけ物理現象を起こし目的を達成する。

その前提で言えば、この儀式は魔法ではなかった。

無から有を生み出し、有を無に返す。

この世界の住人には実現できない神の力。


それは奇跡。


為す術もなく立ち尽くしていた金ピカの鎧にマントを付けた大柄の男は、わずかに光る粉の様なものを残して消えてなくなった。



「神、と言うのは全くの嘘では無かった様ですね」

その光の粉を回収するアナスタシア。


「それは、なんです?」

メアリーが尋ねた。もはや慣れたのか驚いている様子もない。


「神気、とでも言うのでしょうか。意思を失ったエネルギー体です。これは後で使いましょう…」


一応、周囲を確認したあと最下層ボスエリアにある退室用ゲートでダンジョンを出た。


「肝心な時にお役に立てなくてすみません」

ラインハルトが謝る。

「いえ、こう言う時のために私が居ると言っても過言ではないので…」

「いいえ、それは違います。貴方は別に戦うために存在するわけではありません」

「………」


他のみんなも軽く微笑んで同意した。

厳密には、この世界の神様は創造神1人なんだけど、ほぼ神と言うか、どちらかと言うと神みたいなのが発生してしまっていて、今回出てきた自称神とか、ドラゴンとかはそれに当たります。

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