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5-22 最深部で待ち受ける者ですか

タイトルを変更しました。

本日3回目の更新です。

最深部、その中でも一番奥にある広い部屋。

ボスモンスターが待ち構えるドーム状の空間だ。


本来ならば、そこは謎の光で明るく照らされているはずだ。


しかし、魔王のダンジョンのボスだったと思われる魔王そのものは既に討伐済みであり、ここには存在しなかった。いや、はじめからここには居なかったのではないかと思われた。




「ここがあの魔王のダンジョンね」


魔王のダンジョンは、地面が縦にずれた様に出来た段差というか崖の手前に野外ステージの様な階段状になった凹みがあり、そのステージにあたる場所が入り口になっていた。

あの戦いの時、ここよりも遥か手前で魔王が自ら待ち構えていたため、勇者パーティーはここまで来なかった。


中は人工の回廊の様になっていて、両側に魔法の松明と思われる物が取り付けられており、そこそこ明るい様だ。


「心の準備はOK? お祈りは済ませた?」

「あ、ちょっとお花摘みに…」


ダンジョン突入時のお約束が済んだところで、2列になって侵入を開始した。

本来なら職種などを考慮した並びになるのだが、このパーティーにはあまり意味がないのでしなかった。

先頭はルークとレイラ、その後ろにラインハルトとアナスタシア。

侍女2人、ソフィーとサラを挟んでリリィとメアリーが続き、最後尾にソロが着いた。


ラインハルトも普通の冒険者とは比べ物にならないほど強いが、場所が魔王のダンジョンだけに、やっかいな魔物が多く、やはり勇者と聖女のペアは圧倒的だった。


「魔族って、こんなに低能だったかしら」

ダンジョンを進むと魔族も現れる様になったが、全体的に知能が低い。あまり考えて攻撃してくる感じもしないし、何より言葉も話せない様な個体が多いのがアナスタシアには疑問だった。


「魔族なんてこんなものじゃないっけ?」

「でも、十賢者にも魔族が居るのよね。その人だけ特別変異的な何かなのかしら」

先頭を行く2人が返す。


「魔王を失ったのが影響しているのでしょうか。王都を襲った魔族達は狡猾で危険な魔法とかも使ってきていた気がしますね」

雑魚を剣で払い退けながらラインハルトが自分の記憶にある魔族の話をする。


「くぁwせdrftgyふじこlp〜」

横にいるアナスタシアを避けながら剣を振り回すのが難しいと感じ出したラインハルトが抱え上げたので、言葉にならない声を上げるアナスタシアだった。



「ぎゃあああああああ」

ダンジョンにメアリーの侍女、サラの叫び声が響き渡る。

「うおえああああ」

戦闘班が優秀なので幸か不幸かサラのところまで魔物の攻撃が届くことが無いため、逆にアナスタシアの防御魔法で全く危険がないことをサラは知らなかった。


「大丈夫ですか?」

対してレイラの侍女ソフィーは戦闘中にお茶の支度でも始めそうなほど落ち着いている。流石にしないが。深部までは行っていないためレベルはそれほど高くはないが、ダンジョンなども同行しているのでサラに比べたら余裕だ。


もともとそれほど怯えたりはしていなかったが。


ちなみにレイラ達が本格的にレベリングに使用していたダンジョン下層部、深部は経験値がダンジョン外や上層部より3桁から4桁違う。


全体的に弱体化しているダンジョンに、伝説級の戦闘力を持つパーティー。

街の周辺を上級冒険者がうろつくかの様に探索は進み、最深部と思われるエリアに到達した。


アナスタシアを先頭に、ボスエリアと思われる大空洞に踏み込む。



暗い大空洞は自分たちが立つ入り口の外から入り込んだ光が照らす範囲以外闇に包まれているが、壮絶な戦いが行われたのではないかと想像できる惨状だった。地面は抉れ傷だらけで、焼け焦げた後が無数にあり、見慣れない全身タイツのような格好の怪人が大勢倒れている。ただの大男ではない。薄く細い身体に細長い手足、その首の上に乗っているのは宝箱だった。


徐々に目が慣れてくると、はじめ思っていた何倍もの怪人が倒れていて、中には引きちぎられたり食い散らかされた様にバラバラになっている者すら居た。


しばらくすると闇の中から一体の怪人がゆらりゆらりと歩み出てきた。

肩までで2m近くある割に細身の身体は全身タイツでも着ているかの様な不気味な感じで、その上にはひと抱えくらいある宝箱が乗っている。少し開いた蓋の縁にはギザギザの歯が生えていて、長い舌の様な物がにょろりと出ていた。


一行はその異様な光景に声も出ない。


アナスタシアは迷いもなくその怪人に歩み寄る。

怪人は恭しく膝を付いてまるで騎士の様に挨拶をしたかと思うと、その頭部にあたる宝箱の中から白い立方体を取り出した。


「………」

そっとアナスタシアに差し出す。


アナスタシアは両手でそれを受け取ると胸に抱いた。


「貴方達が、守って、くれていたの?」


怪人は何も言わなかったが、笑った様な気がした。

顔もない宝箱の頭で。


「貴方が私を呼んでくれたの?」


「ずっと、待っていて、くれたの…」


もう、返事をする事は無かった。


「ごめんね、随分と待たせてしまったね…」


横向けに崩れ落ちる。


地面に叩きつけられた宝箱がバラバラに砕けちるのだった。



ミミックことダンジョンの精でした。

本来戦闘はしないのですが、凄く強いです。

魔王より、次回登場するおっさんより、もっともっと。

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