5-18 狩猟ですか
本日2回目の更新です。
なんとかメイドさんを出したい感が溢れていますが、あまり活躍しません。ぐぬぬ
「魔物ではなく、ただの猪ですか?」
「普通の獣ですが、ただの猪よりは大きくて危険なやつですね」
アナスタシアの問いにラインハルトが答える。
「あー、アレのことかな」
アナスタシアもそれなりに旅をしているので見たことはある、気がする。
「冒険者ってそう言うこともするんですね」
「普通の猪用の罠とか武器では倒せない大猪が出たそうです」
「なるほど」
冒険者の仕事をする事はないメアリー。
元魔王のダンジョンへの旅を続けるアナスタシア班は、途中の街で路銀稼ぎのために依頼を受注した。この世界のお金は基本的に硬貨であり、金貨銀貨銅貨などになる。正直持ち歩くのは大変だ。アナスタシアやメアリーはインベントリとかストレージなどと呼ばれる能力が使えるので、本当は金貨を1000枚持って歩いたとしてもなんと言うこともないのだが、そこは気分の問題である。
普通の冒険者が旅のついでにする仕事といえば商人の護衛などになるのだが、アナスタシアの班は、メンバーがアナスタシア、メアリー、メアリーの侍女のサラ、ラインハルトと言う構成なので、ちょっと受け辛い。
ルークの方も、ルークとレイラとソフィーの3人なので、同じであろう。
そもそも受けさせて貰えないか、他の理由で採用されるかになってしまいかねない。
これがラインハルト、ルーク、ソロ、アナスタシア、くらいならまだ違っただろう。
「山に入った村人が襲われたり、畑を荒らされたりすると言う事で、冒険者ギルドに依頼が入ったようですね」
「私の魔法で済ますのも味気ないので専門家にレクチャーして貰おうと思います」
街を出ると1人の男が立っていた。見覚えのあるその男はアナスタシアの家来の猟師だ。見た目も猟師だし、普段していることも猟師だが、密偵みたいなものだ。ダンジョンなどで斥候も出来るが、アナスタシアがハイスペック過ぎて正直出番はない。
「うーん、気がついてないだけで、薬草とかキノコとか生えているんですねぇ」
森の歩き方、レベルでレクチャーされるメアリーとサラ。
野鳥や動物など目についたものを教えてくれるが、正直半分は教えられても発見できなかった。
「これは、私にも分かります…」
普通の猪の移動痕跡は言われてもメアリーには分かりにくかったが、ハッキリと獣道になっていた。
獣道とは言うが、人が行き来しやすいように山刀などで切り開いたような道だ。
「猪が通っただけで出来た道、なんですか? これ…」
サラが青くなっている。サラは一般的なメイドだ。体力的にはアナスタシアのバフで超人レベルになっているので、疲労感は全くなかった。魔法の知識はあまりないサラだったがこれが非常識な状態である事は容易に予想できた。さらに言うと防御力も格段に上がっているので、たとえ猪に撥ねられても怪我一つ追う事はないだろう。
「こう言う動物は一般的に夜行性なのですが、このレベルだと昼間普通にうろついている可能性が高いので罠を張ってみました」
「仕事早いですね」
獣道に布が巻かれた木の棒が立っている。
猪にはバレないようにしつつ、人間が間違ってかからないようにと言う対策だ。
一旦開けたところに出て休憩にした。
普通の冒険者ではあり得ない事だがサラが一番活躍できる場面である。
お菓子を摘みつつお茶を飲みながら雑談をする。
依頼を受けて山に入った冒険者には見えない。
片付けて獣道に戻ろうとすると、何かが爆発するような凄い音と、猪の甲高い鳴き声が響いた。
驚いた鳥が飛び立っていくのが分かる。
「掛かったようです」
罠の張られた地点にたどり着くと、ワイヤーをかけた木をへし折って暴れる大猪が居た。
背中までの高さがラインハルトの身長よりも遥かに高い。
「いかがなされますか?」
余った罠を無効化させつつ聞いてくる。
はじめから罠だけでどうこう出来るなどとは誰も思っていない。
「私がやりましょう」
ラインハルトが剣を抜く。
「私もお手伝いしますわ」
メアリーも抜刀した。
「お、お嬢様っ!!」
メアリーの実力は承知しているが、立場上反対しないわけにも行かないサラが叫ぶと、振り向いたメアリーがニッコリと微笑み、再び大猪に向き直った。
「こっちだ」
ラインハルトの挑発が大猪に入る。敵のモンスターなどに自分を攻撃させるヘイトコントロールスキルだ。
地面を何度か蹴った大猪がラインハルトに向けて突進してくる。
「パリィ」
この世界にはいくつかのルールがあった。
完璧なタイミングで敵の攻撃にカウンターを入れれば敵の攻撃を無効化しつつ体勢を崩すことが出来る。
大木に激突しても止まりそうにない巨体がその場で体勢を崩して立ち止まる。
すかさずメアリーが斬りかかる。
ほぼ同時にラインハルトも反対側から剣を突き刺した。
巨大な猪の首が飛ぶ。
「さすがですね」
アナスタシアが手を叩きながら称賛するが、微妙に複雑な表情だ。どの道一瞬なのだからアナスタシアがやっても変わらなかったと言うのもあるだろうが、即席のコンビネーションにしては息がぴったりと合いすぎだ。おそらくどちらかのスキルに連携攻撃的な物が含まれていたのだろう事は分かっているが釈然としないのだった。
金貨は一枚30gくらいなので金貨100枚持ち歩くと3kg?