5-17 勇者ですか
朝から更新すみません。
ちょっと通りますよ。
「俺のことを偽勇者か何かだと思っているかもしれないけど…」
「違うんですか」
「藁にもすがる思いとは言いますが、私のような小娘に何を求めているんでしょうね」
街についたアナスタシアは再び聖女がどうとか言って絡まれたので、認識疎外の魔法を調整して聖女だと認識されないようにする事で事なきを得た。
「これだけ国が疲弊していると仕方ないのかもしれませんね。頼られる方は大変でしょうけれど」
ラインハルトはアナスタシアの信奉者の1人ではあるが、救われた事に感謝してる面が強く、助けを求めるつもりはない。
「私は縁あって過大な力を得る事が出来ましたが、それでもやはりアナスタシア様に憧れがありますし、より良い世界へ導いていただけそうな気持ちはあります…」
メアリーはアナスタシアと言うか伝承に憧れている少女だ。アナスタシアに導いて欲しいと言うよりは、一緒に居れば面白い未来が見れるのではないかと思っている。
「そんなのはないですよ…」
「私の計画を邪魔してくれた償いをしてもらいますよ」
フード付きのローブを着た魔法使い風の男が杖を掲げるとゾンビやら何やらが地面を掘り起こして現れた。いわゆるネクロマンサーと言うやつだろうか。
「ちっ、お前が黒幕かよ」
偽勇者風の勇者が大剣を抜く。一緒に来ていたパーティーのメンバーも武器を構える。
戦士系2人に魔法使いだ。
「「俺じゃねえよ」とは言わないんですね」
「言ってどうするよ」
せっかくの2人旅(侍女付き)を邪魔されて少々苛立っていたレイラは気晴らしに受けたクエストの為に街の外に来ていた。にもかかわらず、しつこく付き纏われた上に面倒な事になっているわけだが。
「弱っちくて大した事は出来ないけど、これでも俺も勇者なんでね」
「修行が足りないね」
「そうだよね」
「え」
ルークとレイラにボコボコに言われる勇者。
「勇者職は初期ステータスが高い上に魔法も使えるから気が緩みがちだけど、実は上昇率が低いからしばらくすると伸び悩むんだよね」
「え?」
ルークが前に出る。彼は一般的な戦士と勇者の両方を経験しているのだ。
「勇者の真価が現れるのはレベル30に達して聖剣が使えるようになってから」
ルークの手に青い光を宿した大剣が現れる。
軽々とアンデッド達をなぎ払うルーク。
「あ…」
「き、貴様の方が本物の勇者だったか。小癪な真似を」
「別に騙したつもりはないけどね」
新たに呼び出されたアンデッドも聖剣でなぎ払う。
「勇者は聖剣を得る事でかなりパワーアップするのはするんだけど、まあ、レベル90超えるとあんまり関係ない」
「レベル、90、だと…?」
新しく呼んだアンデッドは先のものより上位だったらしく、ほとんど違いを感じさせないルークに真実だと思い知らされるネクロマンサー。
「はいおしまい」
一撃の下に魔術師を倒した。
「勇者レベル90以上って…」
「彼女が断った理由が、少しは分かってもらえたかな?」
「お、俺にも、なれるかな、本物の勇者に…」
「それは分からないなぁ…」
「無理じゃないかしら」
「ひ、酷い」
「彼、15〜16歳よね…」
「あ、ああ。俺らよりかなり若そうだったな…」
「どんな修行したんですかね、レベル90って…」
「それな…」
「あら、新しいダンジョンの調査について行ったんじゃなかったんですか?ポーターさん」
受付嬢が相変わらず冷たい。
「裏技使って早めに帰ってきたんだ。どうしたかは企業秘密だけどな」
「何をしたんだか…」
「そのうち報告が回ってくるとは思うけど、ラインハルト達は他の仕事でしばらく帰ってこない。あと、新しいダンジョンもしばらくは使用禁止だ」
調査報告はダンジョンの側にある冒険者ギルドに報告したので、そこからギルド内の情報共有メール的な物で周辺のギルドにも情報が回る予定だ。
「そうですか。ポーターさんはこちらでの仕事を優先して戻ってきたんですか?」
「嬉しいだろ?」
「そんなわけないじゃないですか」
ふふんと鼻で笑われた。
「ま、今日は帰ってきた挨拶だけな」
「しっかり働いてくださいね、ポーターなんてたいして儲からないんですから」
「ああ」
「旅の途中で寄ってみたラインハルトと言います」
冒険者の間では割と良くある挨拶だった。長期滞在はしないが情報を得たり、短期間で可能な仕事や次の街まで行く商人の護衛をしたりするために冒険者ギルドを利用するのだ。
「え? あ、Aランク冒険者のラインハルトさんですね?」
受付嬢が目を輝かす。
「どこに行っても大人気ですね」
アナスタシアが渋い顔でぼやく。
ラインハルトは見栄えも良いがやはりフリーのAランク冒険者と言うのが人気の理由なのだが、やはり受付嬢の喜ぶ顔というのは不安になるのだった。
「私としては貴方以外に気に入られても困るだけなのですが」
ラインハルトが真顔でアナスタシアを見つめながらいうので、耳まで真っ赤になるのだった。
「にゃー」
「こんな事を言ったら不敬に当たるかも知れませんが、なんと言うか、可愛い人ですね」
サラが呟く。
「イエス、可愛い」
「間違いない」
「やめてー」
関係ない話でもアナスタシアちゃんを赤面させる事に成功したぞ(オイ