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5-16 偽聖女ですか

本日3回目の更新になります。たしか

「あれは本物の幽霊船かしら」

「そうだと楽で良いね」


レイラとルークはソフィーと共に王国の南に広がる海を一旦沖に出て西の港へと向かう輸送船に同乗する事にした。船体はかなり大きく、荷を中に仕舞い込めるタイプで、旅人などが甲板に上がっている。一応、船室もあるにはあるが、本当に寝るだけのスペースと言う感じで暗く狭いためだ。


先ほどまでの晴天が嘘のように暗くなったかと思うと霧の中からボロボロの帆船が現れたのだった。




「見つけたぞ、偽聖女め!!」

山を越えて街に向かおうとしていたアナスタシア一行の前に少年が立ち塞がった。


「なんですか貴方は、失礼な」

メアリーがアナスタシアを庇うように立ち塞がる。ラインハルトはアナスタシアの斜め後ろで待機している。少年に彼らをどうこうするだけの力がない事はすぐに分かった。


「黒服に銀髪の聖女がこの辺りで奇跡を起こして歩いていたって話は有名なんだ」

「それが私となんの関わりが?」

「お前が、お前が、俺の村を素通りしなければ、そうしたら…」

少年は言いがかりを並べ立てて喚いた。


「良く分かりませんが、もしその偽聖女が私だったとしても、少なくとも私は自分で聖女と名乗った事は一度もありませんね」

「そんな事、関係ねーよ」

「聖女どころか、私は魔法使いであって信仰職ではありませんから、他人を救う義務もないと思いますが」

「え…」


「ところで、貴方、歳はおいくつですか?」

「…15、だ」

「私は14です」

「え?」


この国の成人年齢は15歳。アナスタシアから発せられる雰囲気のせいか言われるまで気がつかなかったが、少年よりもひとまわり小さな少女である事に気がついて愕然とする。


「特別なギフトも持たず、たまたま少し魔法が使えると言うだけの子供が、たまたま自分に救える人たちを救って歩いただけだったとして、その時、貴方は何をしていましたか?」

「俺は…」

「本当に困っている人が、少し手を差し伸ばしてもらえた喜びを、聖女に救われたと、そう感謝している人を見て、貴方は何を思い何をしました?」

「………」

「神に縋るのは構いませんが、子供に責任を押し付けるのは大人のすることではないと思いますよ」

「………」

俯いたまま動かなくなった少年を放置して街に向かうアナスタシアだった。




「ゆ、勇者様、なんとかこの船を救ってもらえませんか」

勇者と言う単語に驚いてルークが振り向くが、その言葉は自分に向けられた物ではなかったと気がついてほっとする。甲板に冒険者と思われるグループが居て、その中の1人が派手な鎧を装備して大剣を背負っている。


職業勇者はルーク以外にも何人か居る。多くはないがそれなりに存在している事は確かだ。

目の前の彼らはルークの目には勇者パーティーには見えなかったが。


「いくらなんでも海の上じゃ…」

勇者風の男が口籠る。


「どう思う?」

「偽物じゃないかしら」

「だよなぁ」

「どうしようか。手伝う?」

「と言うか、やらないと沈んじゃうんじゃないかな」

「だよねぇ」


「失礼ですが、アレは幽霊船に見えますが、そちらのパーティーに聖者か神官はいらっしゃらないのですか?」

レイラが船主らしき男と勇者風の装いの男の話に割り込む。


「そ、そうなんだよ、ちょうど今うちのパーティーには聖職者が居なくて」

渡りに船と派手な鎧の男が答える。

「差し出がましいようですがお手伝いしても?」

「ああ、むしろお願いしたい」

「私からもお願いします」

船主の同意も取れた。


レイラが幽霊船に向けて手をかざす。

魔法を発動する時に使う魔法道具はペンダントなので常時装備状態だ。

いきなり激しい光が迸り、一撃で幽霊船が消滅する。


「「「「え?」」」」


誰もが信じられないと言う感じで呆然としていた。


「まあ、幽霊船は所詮幽霊船なので、神聖術が使えればこんなものですよ。ええ」

なんでもない事のように言って平然としているので、周りもそうなのかな、と言う雰囲気になったがレイラはレベル97の聖女だ。一般の聖職者より桁違いの力を持つ職業で、レベルも伝説の領域だった。


「の、後ほどお礼をさせていただきます」

「あ、はい。ありがとうございます」


そう言ってルークと共にまた海を眺め始めた。


「………」



船旅を満喫して、港に降り立った三人を追いかけてきた勇者風の冒険者が声をかける。


「なあ、君、名乗らなかったけど聖女だろ? 俺とパーティーを組んでくれないか?」

「何故です?」

レイラの反応が容易に想像できたのでルークは黙って見ている。


「俺たちのパーティーに聖職者が必要なんだよ」

「私を勧誘するより、自力で幽霊船くらいなんとかできるようになるべきでは? まあ、私には私の勇者が居るので、貴方とパーティーを組む事はありませんが」

「いや、アレは聖職者じゃないと…」

「では、魔物が出たら? 魔族が出たら? 魔王が出たら? 魔神と遭遇したら? 貴方は神聖術の方が有効だと言って私に任せるのですか?」

「え、いや、その…」


「別にそれでも良いと言う方もいらっしゃるかもしれませんので、仲間を探す事自体は反対しませんが、私はお断りさせていただきますね」





この世界の強さ設定はだいぶ雑なのですが、一般人がレベル20前後。

聖女や勇者はそれだけで2〜3倍の能力、レベル90は単純に4.5倍の強さではなく10倍とか20倍とか、みたいに考えていました。が、それだとつまらんのでレベル29までは少し強い程度、と言う事にしました(適当すぎだろ

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