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第13話 英雄と白銀の妖精

王都で奮戦している可哀想な人の話です(オ

「ところで「しばさん」、お前は家に帰らなくて良いのか?」

肉と格闘していたレイラが思い出した様にアナスタシアに尋ねる。

「しばさん」は何かのはずみで言ったニックネームみたいなものだ。

冒険者ネームとでも言うのか。


「あー、色々あって、帰りづらいと言うか」

目を逸らすアナスタシア。


「家もそうだが、王太子殿下の婚約者なのだろう?」

「私はまだ14歳だし…」

この世界の成人は15歳だ。


「いやいや、王家に嫁ぐのになんの準備もなしというわけにも行くまい?」

ここぞとばかり攻めてくるレイラ。

「今は魔王のダンジョンとかでそれどころでは無いと思いますし…」


アナスタシアは彼女の婚約者が急遽王太子になったことに嫉妬した姉のブラディスラヴァがアナスタシアを抹殺すべく連れてきた私設騎士団ごと姉を葬ってしまったため、帰りづらいのだった。

世間一般には魔王が現れて皆殺しにした、と噂されていたが。


王国の西の国境付近に出来た魔王のダンジョンにより王都が大混乱状態なのは事実だ。

王都からもさほど遠くなく、危険度が高い為、王都に居る騎士や軍隊のほとんどが警戒、要撃に関わっている。


「王太子殿下はお前がこんなところでウロウロしている事を知っているのか?」

レイラは興味津々ではあるが、悪気はない様だ。

「いえ、さすがに娘が家出したとか、口外はしていないのではないかと…」

「ふーん…」

アナスタシアが小さくなってしまったので、これ以上の詮索は止めることにしたレイラだった。




ラインハルトが初めてアナスタシアに会ったのは10歳の頃だった。


当初はアナスタシアの姉、ブラディスラヴァと婚約と言う話だった様だが直接会うまでもなくゴタゴタしていた。

子供の頃のラインハルトは太り気味でのんびりしたお坊ちゃんタイプだったのでそのせいだろうと自覚していた。

相手は我が強くわがままだと言う噂だったこともある。

せめて顔合わせでもと出かけた先で、芝生に座り、小鳥と戯れる銀髪の少女を見かけたのだった。


「その鳥は…」

「ここに居たら遊びに来てくれたの」

その姿と雰囲気から、彼女は精霊か何かではないかと思った。


根拠もなくアナスタシアが特別な存在ではないかと思ったラインハルトは、勝手に彼女の騎士になろうと決めた。


そして、ある事件がきっかけで、その考えが真実だと確信する。

彼女の騎士を目指し励み出した剣術の訓練中の事故だった。

その剣は怪我をしない様に刃を潰してはあったが先端はわりと鋭利で、ラインハルトの首筋に突き刺さったのだ。


誰もが死を確信した。


だが、ラインハルトは見た。

競技場の観客席の一番後ろ、自分が誘い見学に来ていた少女が自分に向け手を伸ばしていた。


ほぼ即死の傷を。

間近に居たとしてもどうすることも出来ないであろう傷を。

一瞬にして癒し、彼の命を救ったのだった。


誰もその事に気がつかなかった。気づいていたとしても、そんな事を言えば常識を疑われてしまっただろう。

その場に居た全員が何が起こったのかすら分からないまま、事故はなかった事になった。


「君が、いや、貴方が私を救ってくれのか?」

「もう、痛くないでしょ?」

傷があった辺りに手を伸ばすアナスタシア。

「ああ、ありがとう…」

目の前に天使が居る。いや、女神かもしれない。だが、そう言って崇めたりしたら嫌がるだろうかと悩むラインハルトであった。


そして、ラインハルトが11歳、アナスタシアが8歳の頃、2人の婚約が決まり、ラインハルトはこれまで以上に努力した。それはそうだろう。勝手にとは言え自分が仕え守ると決めた相手との婚約だ。張り切らざるを得ない。


アナスタシアは普段は普通の、いや、どちらかと言うと大人しい女の子だったので、紳士的に扱った。

心酔いているとは言え、それを表に出して崇める様なことはせず、普通の子供として遊んだり一緒に勉強したりした。

彼女もその対応を気に入ってくれていると信じて。


しばらく修行のために王都を離れていたラインハルトは魔族による攻撃の一報を受け、取るものもとりあえず戦場へと向かった。


長く平和の続いていた王国の兵士には戦う力も覚悟も知力も足りなかった。

その中で、あらゆる事態に備えられる様研鑽を積んでいたラインハルトが活躍する事になるのは必然だった。


実の父親の目論見をも脅かすほどに。


前線の兵を奮起させ、王都に侵入した魔物を蹴散らし、国王の元に馳せ参じたが、そこには既に遺体となった王家の人々の姿があった。

ラインハルトはそのまま戦場に取って返し、そのまま魔族の軍勢を押し戻した。

そしてそのまま忙しい日々を送っていた。

アナスタシアが王都を離れ旅をしていることすら知らないまま。




「叔父上、今の国王は勇者というものを誤解していて、その力で隣国を攻めようと考えている…」

レイラが身の回りの人間だけ連れてここに来た経緯などを話した。

「…」


「だからあんな森の中に出されたのか」

ルークが最初の森を思い出して呟く。

「あ、それは仕様」

「…」

「…」



アナスタシアの婚約者が居るのは、元々は婚約破棄されて追放される人ブームに乗ろうかと思って考えてた設定なんだけど、別に婚約破棄なんかされてないし、自分で逃げただけですた(

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