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5-1 婚約破棄ですか

第5章はじめました。

最初の世界で、時期は第1章の後の話になります。

「貴方との婚約は破棄されました」

「はあ、さようでございますか…」


元婚約者による宣言に棒読みで答えるアナスタシアだった。




魔王と化した国王がアナスタシアの魔法によって干物になったため逃亡したアナスタシアは、一緒に居たルークやレイラと共にソロと合流し、ソロの家に厄介になっていた。ソロの家は、王都より東、王国の中央にある山の麓にあり、スキル取得やレベルギャップ開放が出来る神殿に比較的近い場所にあった。近いと言っても山の中腹なので普通の人には少々大変だが彼らに取っては散歩と変わらない距離だ。


本来なら王都にもそれなりに近いわけだが、王都は先の事件からの復興がまだまだ掛かるだろう。


「なぜ貴方がここにいるのですか」

アナスタシアが緊張して小さくなっている。

「敬愛するアナスタシア様の力になれないかと馳せ参じた次第です」

ラインハルトが恭しく挨拶をした。


ソロの家、とは言うが実際にはかなり大きな建物だ。もともと冒険者であるソロはいざとなったら他の冒険者を泊めたり、冒険の準備などを出来る様にかなり大きな建物を購入した様だ。作り自体はログハウスの様な感じだし、常時管理している者がいるわけではないので隅々までは管理が行き届いていないが、規模自体は貴族のお屋敷に近いかもしれない。


今いるのは、共有スペースの食堂だ。大きなテーブルをアナスタシアとラインハルトとレイラ、ルーク、ソロ、ようやく命名されたソロの奴隷リリィが囲んでいた。給仕はレイラの侍女ソフィーだ。食事など手がかかる時はリリィも手伝う。


「貴方がアナスタシア様の婚約者?」

興味津々のレイラ。


「いえ、元、婚約者、です」

「え?」

婚約が破棄されたであろう言い回しにアナスタシアが驚きの声を上げ、慌てて手で口を塞ぎ目を逸らす。




「父があれだけの事をした以上、本来であれば私も死罪になるのが当然だったのですが、先の戦いでの功績などを考慮されて爵位や領地の返上で許されました」

「無理やり貴方を王位に付けようと言う勢力もあったでしょう?」

レイラが口を挟む。他の者たちは相槌も打てないメンバーだったので。


「そうですね。ですが流石にそれでは(おさま)りませんし私も遺恨を残すのは良くないと判断しました」


物理的にも崩壊していることもあって、王都は大混乱だ。今はこの様な状態だが、そう遠くない将来再びレイラやラインハルトに王位を継ぐ様に言ってくる者たちが現れるだろう事は想像に難くない。


「………」

アナスタシアは微妙な顔で黙っている。


「と言うわけで、私は平民の冒険者と言う立場になってしまったので、公爵令嬢のアナスタシア様とは結婚できなくなってしまいました」


「その割に余裕に見えますが」

むしろ嬉しそうに語るラインハルトにルークが聞いた。


「今はアナスタシア様が冒険者をしていてくださるので、私でもそばにいられますからね」

その声は本当に嬉しそうだった。


「あー、アナスタシア様が王都に籠って貴族の生活を始めたりしたら、俺たち冒険者じゃ会いに行くこともできねーもんな」

ソロが頭の後ろで手を組んで天を仰ぐ。


「と言うわけで」

ラインハルトは席を立つとアナスタシアの横に跪き、手を取ってアナスタシアの目を見つめた。ラインハルトは長身でアナスタシアは小柄なのもあって膝を付いても椅子に座ったアナスタシアの方が低いくらいだ。


「貴方の側に仕える事をお許しいただけますか?」

「んんんんんん〜〜〜〜」

真っ赤になって声にならない声を上げるアナスタシア。

みんなこんなアナスタシアはほとんど見た事がないのでびっくりしている。


ラインハルトはアナスタシアより3つ上、背も高く体格もがっしりしていて胸板は厚い。アナスタシアの手を取るその手は大きく硬いが繊細さも感じる綺麗な手だが良く見ると無数の傷跡がある。


顔は美形というよりは勇壮な感じだが、アナスタシアは子供の頃のぽっちゃりした優しげな頃を知っており、その面影がそこここに見受けられ優しさを感じられる。


「あわわわわわ」

真っ赤になって慌てふためくアナスタシアに目を細める。


「あ、え、お、その、そう、ソロが構わないのであれば、別に、良いのでは?」

アナスタシアの声が所々裏返る。

ラインハルトの笑みが深まる。

「な、なんですか??」

「貴方の声は気持ち良いですね。声を聞いているだけでも幸せになれます」

「うにゃーっ」

耐えきれなくなったアナスタシアが手を振り解いてレイラの後ろに隠れた。


「と言うわけなのですが、ソロ殿」

「ソロで良いぜ」

「では、ソロ、私もここに置いていただけないだろうか」

「良いぜ、部屋は空いてるし、あ、アナスタシア様と同じ部屋の方が良いかな?」

「ヤメてっ」


「まあ、どちらにしろ、冒険者がずっと家に籠ってるって事はないわけで、部屋は貸せるがその先は自分で頼むな」

「ええ、アナスタシア様に置いていかれない様、頑張りますよ」

「そんなに頑張らないでください」


レイラの影から覗く様にして声を掛けるアナスタシアに、また目を細めて微笑むラインハルトだった。

アナスタシアとラインハルトのラブコメになる予定(嘘

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