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4-30 星降る夜に

本日2度目の更新になります。

第4章最終回

「なんだ貴様は…」

「交渉に来ました」


いかにも執務室と言った部屋。

大きな窓を背にして重厚な机の前に社長と言った風態の男が座っている。


対してその前に現れたのはジャパニーズファンタジーで見かける様な恥ずかしいコスチュームを纏った銀髪に灰色の瞳の少女だった。




ネーアと黒い巨人だったそれは、黒光りする少し人よりは大きい程度のツルツルした人型の何かに生まれ変わった。

頭の上には天使の様な光の輪を浮かべ、両腕は肘から先が光の爪の様になっていた。

背中には幅広の剣の様な羽が生えている。


見た目にあまり意味はないが、何か神々しいものがある。


どんどん調子を上げて化物達をなぎ払うプレイヤーキャラクターの戦士達を遥かに凌ぐ力で敵を殲滅し始める。動きの速い敵の攻撃も、遥かに巨大な敵の攻撃も物ともせず、地平線まで突き進む。


イノやリッカたちの戦いはどうあがいても、途中変換処理が入る電子戦だが、彼女はむしろ仲間達の目に見える様に変換されている、既に行われた処理のビジュアル化である。




アナスタシアと対峙した男に内線が入る。


「どうぞ、連絡を受けてください」

アナスタシアが応答を促す。


「な、なんだと?」

この男の通信装置はAR技術を応用した物で、他人には音も聞こえなければ目の前に表示されたコンソールも見えないはずだった。


「交渉には材料が必要ですからね。お互い」


「…」

訝しみながらも内線を受けると、それはエターナルエンパイアオンラインのサーバに対する攻撃の失敗を告げる物だった。それは一瞬の事だったらしい。優勢に運んでいたはずが一瞬にして状況が覆され、3台のスーパーコンピューターを逆に乗っ取られたと言う。


「手をひいては貰えませんか?」

アナスタシアが控えめに提案する。


「そうはいくか、アレは、あの技術は、素人のおもちゃにして良い代物じゃない」


「いいえ、アレはみんなの遊び場です。貴方達がおもちゃにして良い物じゃない」


「ふざけるな。どんな手を使ってでも手に入れる。妥協はしない」


「………交渉は決裂か?」

「初めから交渉などするつもりはない」

「そうか、ならば絶望を知れ」


アナスタシアが手をかざすと魔法陣が描かれた。


「サテライトフォーオール」



その日、10万を超える流星が大地に降り注いだ。

衛星軌道上に漂っていたスペースデブリと呼ばれる物が一斉に地表に向けて移動を開始したのだ。

人工衛星を破壊し、その破片もろとも大気圏に突入した。

本来なら大気との摩擦で燃え尽きるはずの小さな物まで殆どが何かに守られる様に、音速を遥かに超えて降り注いだ。


いくつかの国の通信インフラが破壊され、電子技術、宇宙開発は振り出しに戻った。

エターナルエンパイアオンラインのプレイヤーも何割かがアクセス出来なくなり引退を余儀なくされた。




「もともとニッチなゲームだったけど、寂しくなったね、アレから」

「ごめんなさい、ちょっとやり過ぎました」

「なんも言えないなぁ…」

「まあ、ボチボチやっていくしかあるまいなぁ」


あの日の参加者のほとんどにはあの戦いと海外での大規模災害の関連性は知られていないが、イノこと命とヨルムには話してあった。


セーヤには話してはいないが気づかれていただろう。

だが、セーヤはそれどころではなかったのだ。


あの戦いの最中、現実世界ではネフィリニーアが亡くなっていた。


「良かった。セーヤがログインしてくれて。来てくれなかったらどうしようかと思ったわ」

「えっと、ネーア、なの?」

「ちゃんと書いてるでしょ、ほらほら」

そう言ってエルフの女の子が自分の頭の上を指でなぞる仕草をする。

微妙にそこじゃない。


「なんて、本当は私にも良く分からないんだ。あの子と融合してしまったみたいでね。あの子としての経験も混ざっているんだ。だから、自由に駆け回ったり飛び跳ねたりすることも出来るし、見た目はエルフにしてもらったけど、生物なのかどうかも定かではないのよね。ふふふ」


「…ずっと、この森で暮らす事を夢見ていたものね。叶って、良かったわね」

「そうね。いつか、セーヤもこっちに来てね」

「簡単に言うわね。例えエルフが滅んだとしても、あの森を捨てるのもちょっと忍びない、かなぁ」

「そんな、滅んで欲しそうな言い方」

ネーアが苦笑する。


エルフは人間に比べて遥かに長寿だ。

長老を含む何人かは強い力を持っていたり、知識を持っていたりするが、大半はただ長く生きてきただけの子供大人だ。それこそ、知識や思考能力ではネーアに敵う者の方が少なかったりする。

精神年齢で言えばセーヤがダントツに大人だ。


どちらにしろ、ネーアが生まれてからこっち、新たな子供は生まれていないし、そんな風な様子のあるエルフがいない以上、遠くない将来あの国のエルフは滅ぶ。


「とりあえず、こちらにはヨルム様とアナスタシア様が居るから、私のことを忘れなければ良いわ」

「忘れないよ。どうやったら忘れるって言うのよ」




「これから…どうしましょうか」

アナスタシアがイノに尋ねる。

「そう言えばゲームの方はまだ中級なんだよな。またレベル上げでもするかなぁ」

「お主らはもうボスエネミーで良いじゃろ」

ヨルムがニヤリと笑う。


「やだよ」

話の中でも触れてたと思いますが、第4章のアナスタシア様は他の世界のアナスタシア様と違って、もともと分身であり、さらに分裂してネット上や世界中に居たり居なかったりしています。

これからも世界を徘徊しつつゲーム世界でみんなと遊んだりする事になります。


命に確保されたアナスタシア様もそのまま生活を続けますよ。


と言うわけで第4章は終了です。

良かったら第5章も読んでね。ふひひ。

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