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4-19 侵略者

試練の塔の攻略は順調に進み、とうとう100階に達していた。


ダンジョンの時も感じていたが、この2人、アナスタシアとイノの戦闘はとにかく速い。

そして、連携が凄い。なぜそんな風に動けるのかマテラには理解できなかった。


あまりにも洗練された動きに見入ってしまいエネミーに狙われてしまう事が何度かあったが、2人とも自分の仕事をこなしつつマテラを守ってくれる。普段は遠近両方に対応できるセーヤがカバーしてくれるがそれは常に斜め前で弓を使い、リッカの攻撃を潜り抜けてきたエネミーは剣に持ち替えて攻撃するのだ。


アナスタシアとイノの間を潜り抜けた犬の様なエネミーを振り返ったアナスタシアが瞬く間に追いついて倒したと思えばその開いた空間をイノが埋める。そしてそれによって開いたところを今度はアナスタシアが埋めた。


「あれ? 私の方が50以上もレベル高いんだけど…」

マテラも魔法職では有るがレベル99、カンスト組で有る。

アナスタシアとイノのレベルを足しても足りない。

なんならサブ職もレベル99だ。


「い、いやいや、抜かれたからって直ぐにやられたりするわけじゃないし。うん…」


30体近くいたエネミーが瞬く間に片付いた。


「ご、ごめんなさい。あまりにも手際が良くてぼーっとしちゃった」

「こっちも付き合わせちゃってごめん。退屈だよね」

戦闘中に助けてもらったことを謝ると暇すぎてつまらないのだと思われてしまった様だ。

むしろ、この階になると本当ならクリアできるか不安になる難易度だ。


「いえ、そんな…。お二人の連携は凄いですけど、何か特別な練習とかしてるんですか?」

ほとんど使わなかった身長より長い魔法銃を抱える様に持って2人の方に歩きながら尋ねる。


「別にそう言うことはしてないですよ。ねえ」

「うん、まあ、ここのとこと何かする時はいつも一緒だったくらいだね」


 実際に異世界で命のやりとりをして来たから判断力とかは有る方かも


とは言えない。


マテラが2人のそばまでたどり着くと同時にイノがマテラを掴んで引き寄せ、何かから隠す様に身を捩った。


「【カウンターアブソリュート】」


スキル発動と同時にマテラに向かって飛んできた黒い物体を蹴り上げる。

「え?」

マテラは状況が理解できない。

試練の塔はプレイヤーがエネミーを倒しながらひたすら前に進むコンテンツだ。

塔の内部は別空間にあって、パーティーごとに生成される。

後ろから何かが来る、などと言うことはない。いや、なかったのだ。


ほぼ同時、僅かに遅れて飛んできた黒い物体が防御壁に当たって跳ね返っていく。


【カウンターアブソリュート】

カウンター成功時に1秒間の防御壁を発生させてあらゆる攻撃を遮断する。

リキャストは4時間。

大袈裟に言えば、この世界の1日は8時間だから、1日に2回しか使えないスキルだ。

妹のただの友人を庇うために、そんなスキルを使うとか、ゲームでも惚れてまうやろ、と言う感じだ。

惚れないが。


地面に落ちた黒い物体、溶岩石の様なものが合体して蟹の様なモンスターになる。

本体が40cmくらいで足やハサミが生えている。


蟹なのに真っ直ぐ向かってくるのをイノが蹴っ飛ばす。

「なんだこれ」

「なんでしょうか」

「蟹?」


アナスタシアとイノは見覚えがあるがマテラは知らないと思うのでそれは言わない。


蟹がぞろぞろ現れる。


「あ、あの」

「ん?」

「下ろしていただいて大丈夫です」

「あ」

イノはマテラを抱えたまま戦っていた。


「これは失礼」

「いえ…」

マテラを後ろにそっと下ろす。

後ろと言っても、本来は進行方向だが、まだここでエネミーが湧くことはないだろう。


「倒した方が、良いのでしょうか?」

「好戦的、な、気はする?」

「どうしますか? 攻撃した方が良いですか?」

ゲームなので相手が好戦的だったとしても、わざわざ乗らないといけないわけではない。

逆に言うと、敵を倒したところで本当に死んでしまうわけではないから遠慮は要らない。

一応、未知のエネミーでこの世界の存在ではない様だが、死ぬことはない、だろう。


「とりあえず、アレと戦って今日は帰るって感じでどうかな」

イノが剣を抜く。

「そうですね」

アナスタシアも刀を抜く。


「じゃあ、私が先制しても良いですか」

「お願いします」


マテラが実際の兵器で言うとアンチマテリアルライフルの様な魔法銃を膝をついて構えると魔法陣が銃身に被さる様にいくつも描かれた。魔法陣が回転し出し、銃口に光が吸い寄せられる様に集まってくる。


引き金を引くと激しい光が蟹の群れを撃ち抜いた。


同時に2人が突入して斬りつける。


さらに頭上に撃ち込むと今度は地面に向けて雨の様に降り注ぐ。

着弾寸前にアナスタシアとイノがマテラのところに戻ると蟹の群れが光に包まれる。


「全く効いてないっぽいね」

「そうですね」

「じゃ、そう言うことで」


踵を返した3人が走って逃げる。


階段のところまで逃げ切れればゲートで出れるのだ。

途中でエンカウントしたエネミーを巧みに避けつつ走る。

蟹の攻撃を避けるためにイノがマテラの襟首を掴んで持ち上げるとそのままお姫様だっこした。


「!?!?…!!!」

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