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4-18 試練の塔

「おー、でっかい塔ですねぇ」

アナスタシアがそびえ建つ塔を見上げる。

上の方は霞んでいて見えない。


「お姉さんやアナスタシア様はエンジョイ勢って言うかこの世界を冒険したい派っぽい気がしたから後回しにしたけど、レベリング施設、ですね」

案内してくれたマテラが説明してくれる。


「ダンジョンが自然と言うか、魔物とか人間に敵対する感じの誰かが作った場所に対して、試練の塔は人、いや、神様かな? が作った施設、になるんですかね。探索要素とかはなくて、ひたすらモンスターを倒しながら先に進むコンテンツです」


「なんとなく分かる」

「ですね〜」

特にこの世界ではダンジョンは洞窟だった。まだちょっと覗いただけで攻略と言うほど潜ってはいないが。それに対して試練の塔は明らかに建造物だ。


「ここは入ると渦巻状の通路になっていて、真ん中まで行くと階段があって上階に上がって、今度は外側まで行くと階段があって〜、とひたすら敵を倒しながら上を目指す感じですね」


「何階まであるの?」

アナスタシアが首を傾げて聞いてくる。マテラも背が低めなのでアナスタシアと身長は同じくらいだ。アナスタシアが長い髪を下ろした大人びた外観に対して、ツインテールでチマッとした美少女なのでマテラの方が年下に見える。


「最上階はありません。無限に登り続けることになります。なので、何階まで登れたかを競う人たちが居ますね」

「あー、なるほどー」

この世界は基本的にはオープンワールド、一枚のマップの上に全てあるのだが、こういった施設は別の空間にあって、数百階まで登っても空気が薄くなったり重力が無くなったりはしない。


「どうしますか? 魔法使いが必要ならお付き合いしますが」

アナスタシアとイノは2人とも近接職だ。

マテラは魔法使い。メインは攻撃魔法だが支援魔法、回復とかバフ、デバフなんかも使える。

何より打撃無効の敵が居た場合は魔法使いなしでは攻撃ができない。


「まあ、せっかくだし、一回ぐらいは入ってみようか」

「レベル上げとかはまた他で考えれば良いですし一緒に行きましょうか」

「じゃあ、今日は3人で。ふふふリッカにバレたら怒られるかな」

「怒りはしないんじゃない?」

「あらあら」


試練の塔に近づいてみると大きな岩のブロックを積み重ねた作りの塔だった。

正面の大きな観音開きの扉が自動で開く。


「左は行き止まりみたいですね」

アナスタシアが中を見て呟く。


入って直ぐ正面は壁になっていて、左は少し通路になっているが行き止まり。右は左にカーブしていて先が見えない。

天井は高く、幅も剣や槍を普通に振り回せる程度には広い。

窓はないが壁の両側に松明が取り付けられていて薄暗いが見えなくはない。

通路には等間隔で柱の様な出っ張りがあるため松明の明かりが遮られて影になっているし、柱そのものの死角もある。おそらくその陰からエネミーが襲いかかってきたりと言う事もあるのだろう。


イノ、マテラ、アナスタシアの順に並んで進んでいくと、案の定、柱の影から猿の様なエネミーが飛び出してくる。マテラを庇う様にイノとアナスタシアが前に出てエネミーを切り倒していく。


「まだ1階だし余裕かな」

「ですね」


突然出てくるので警戒はしつつも順調に進んでいく。

1階は犬や猿系モンスターのエネミーが中心で、サイズは大小さまざまだ。


「あ、螺旋階段ありますよ」

「ここが塔の中心かな」

「そうですね」

円柱から段が突き出した様な螺旋階段を3人でじゃれあいながら二階へ登ると1階と同じ様な通路に出る。


「通路の見た目はずっとこのままなんですかね」

アナスタシアが先を覗きこむ。

通路が渦巻状になっているので先はほとんど見えない。


「もっと上に行くと大型エネミーとかも出てくるので通路も広くなりますね。途中だけ広くなっていたり」

「1本道のダンジョンみたいな感じかな」

「ですね」




「………」

50階を超えた。今のところ、打撃無効のエネミー意外、マテラは特にする事がない。

と言うか、そもそもレベル40にも満たない2人が中心に戦っていて50階はかなりの成績だがペースも速い。いつもの3人でもここまで短時間で50階はまず無い。


「右、お願いね」

「はーい」

身長3mくらいあるゴリラの魔物っぽいエネミーが2体現れた。

1体でも数人必要なエネミーを1人1体で行くらしい。


「んー、確かに打撃職が2人居てこそってのは有るかもしれないけど…」

マテラのパーティーは大火力の打撃職はリッカ1人で、マテラが遠距離攻撃した後、リッカが戦闘に入り、セーヤとマテラは援護射撃になる。


このパーティは大火力の前衛2人、と言えばそうなのだが、リッカのレベルは99だ。


などと考えているうちに1体目が倒れ、2人で残りの1体に止めを刺した。


「…なんか、違う」

マテラが思わず呟いた。


「おまたせ〜」

アナスタシアとイノが手を振っている。

軽く頭を振って気持ちを切り替えて2人の元まで小走りで近づいて行った。


その背後で、本来試練の塔では後ろにエネミーがポップすることはないはずだが、何か黒い塊が蠢いた。

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