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黒紫色の理想  作者: 槻影
25/66

第十七・七五話:異国の民と王様の話

 

 

 

「それでは、皆さん。今日一日お疲れ様でした。ご協力感謝します」

 

 数百件にも及ぶ世帯調査を終えた時には、もうすっかり日は沈んでいました。

 広場はずいぶん前から薄闇に彩られ、あちこちに松明に似た光が灯され始めています。

 まだ五時ちょっと過ぎなのに……冬は本当に日が短いですね。

 

 今日一日協力してくれた子供達に感謝。

 貧困層の事は貧困層の方が一番知っているようで、子供とはいえ……いや、子供だからこそなのか、たった数時間で貧困層の世帯のほとんどの貯蓄状況を調査できたのは相当な効率だといえるでしょう。

 本当は相応の対価を払うべきなんでしょうが……シーン様が『子供への報酬は金ではなく、甘い物で払うべきだ。そうだな……クッキーとかでいいんじゃね? 貧乏人は甘い物なんて滅多に食えないだろ』とかおっしゃるので、報酬は一袋のクッキーです。

 それで十分喜んでいる姿を見ていると、私もシーン様の考えが正しいように思えてきます。相応の対価……奥が深いです。

 

 

 「いえ、こちらこそありがとうございました。」

 

 

 子供達の中のリーダーらしき女の子が丁寧に返事をして、頭を下げました。

 汚れてはいるものの、薄手のコートに映るほっそりとした身体つきと若草色の髪。将来きっと美人になりますね。

 いつかシーン様の目に留まって一緒に働く日が来るかもしれません。私がシーン様の目に止まったのも、彼女くらいの年の頃でしたし……尤も私と彼女じゃ少し事情が違いますが。

 

 子供達から受け取った書類をファイルにまとめ、Pocketの中に転送します。一つ数百万もの値段がするPocketは、需要と供給のバランスもありかなりの貴重品なのですが、シーン様は快く貸してくださいました。

 書類に書かれた内容は、住所と家族構成、貯蔵してある食物の種類や量など。

 今日の視察でシーン様が配ったのはトウモロコシの粉だけです。また、その恩恵を受けることができたのも首都付近に住む貧困層のみ。他の地域に後日配給を行ったり、たんぱく質以外の栄養素を含んだ保存の利く食材を配ったりするのは私とその部下達の仕事です。

 

 シーン様が思いつき計画を立案し、シルクがそれを現実的な計画に作り変え、私達が実際に行動に起こす。それが、私達の役割配分です。

 

 

「じゃあ、また来年――」

 

 笑顔で手を振って散らばっていく子供達。

 身を切る冷たい空気の中でも、子供達の顔は笑顔で輝いていました。

 任務完了です。

 

「また来年です」

 

 来年は何人が参加するのか……この仕事は、冬の間食べていけるだけの食料を持っていない家の子供達にのみ与えられます。毎年会っている顔ぶれが変わるのは寂しいですが、来年は今年よりも人数が減っていてほしいものです。

 仕事は大変になりますが、それでも欲を言うなら一人もいなくなってくれるなら――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この娘、買った」

 

 

 

 

 突然耳に入ってきたその声に、私の思考は強制的に中断、脳が凍りつくような感覚に襲われました。

 

 

 ……シ、シーン様一体何をやっておられるんですかッ!!

 

 

 広場の中心から聞こえてきた声は、間違いなくシーン様の物。

 シーン様の声には、他者の物と違った圧倒的な何かが存在します。どんな喧騒の中でも、決して埋没しないそんな声。

 

 ……まぁ、どんな声であれ、この奴隷の取引が禁止されているルートクレイシアの国内で正々堂々そんな事を言うような人物、他には思い当たりませんが。

 

 人ごみを掻き分け、自然となる早足。

 

 人々は、まず第一に私の髪に注目し顔を顰め、次に首元に掛けられた金のチョーカーに視線を落とし侮蔑の表情を畏敬に変え、頭を下げて道を空けます。

 ……シーン様が黒髪なのでルートクレイシア公国での黒髪差別は軽いほうですが、それでも全くないわけではありません。もともと"存在の属性"は完全に生まれつきで、自ら選択する事はできないので闇を持つ者が悪という認識はどこかずれたものがあると思うのですが、それでもやはり人間は闇を恐れるようで。黒髪に対する差別は明確に存在しています。

 シーン様の眼の前でそれっぽい態度を取ると殺されるので、誰もシーン様の眼の前でそれを表に出しませんけど。

 

 徐々に開ける視界。

 

 そこにあったのは、さっき聞こえてきた声から容易く予想できたもので、しかし私がもしそうでなかったらと願っていた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十七・七五話【異国の民と王様の話】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「か、買った……? そ、それは一体――」

 

 

 貧民如きが俺の言葉を聞き漏らすとはいい度胸だ。

 俺は、その声を華麗にスルーし、震えている身体を離して、その黒髪の一房を検分した。

 

 一般的に存在の属性を表すといわれる髪の色だが、俺の十年以上の月日を掛けて行った研究によると、その色はその者のメンタル面によって色合いが大きく変化する事がわかっている。

 具体的に言えば、持ち主が自分の存在に大きな自信を持っていればいるほど、その色は鮮やかな色を保つのだ。

 反対に、自分に自信を持っていない場合その色は、はっきり目で見て解かるほど褪せることになる。平民以下の人間の髪よりも、貴族の髪の方が色鮮やかなのは、貴族の方が自分の存在に自信を持っているためだ。

 

 ぼさぼさになっている髪を手櫛で梳かす。

 清掃の仕事でもしているのか、ぱらぱら舞い落ちる綿埃。ただひたすらに勿体無い。

 しかし、髪質はあまりよくはないものの、その色は今まで見た事ないほどの鮮やかさを誇っているのが判った。

 漆黒。夜を溶かしたような闇色。

 質はこれから気をつければすぐに元に戻る。だが、いくら解剖してもわからぬ人体のブラックボックス、メンタル面が大きく影響する"色"はそういうわけにはいかない。

 よくもまあ今まで、闇を差別する屑共の嘲笑にも負けずこれだけの色を保てたもんだ。

 奴等、貴族の俺すら侮蔑の対象にしようとしたんだぜい。全員首を刎ねてやったが。

 

 

「俺は黒髪を集めてる」

 

 

 戸惑う中年女に一言だけ述べる。

 髪の検分終わり。

 次に顔を覗き込む。

 疲労の色と、諦観が色濃く張り付いた容貌。

 髪と同じ色の黒曜石のような黒の瞳が、俺の視線におどおどと伏せられる。

 んー、素質はあるが、今まで苦労してきたのだろう。肉付きの薄い頬と、眼の下にできた隈。肌の質も一級だとは言いがたいが、環境さえ整えてやればいい所までいくとは思う。

 そして、

 

「んー……こっちの顔じゃないな。東の方の国から来た者か」

 

 母親の顔つきは、まだこの辺によく見られるタイプのものだったが、この娘の顔つきは明らかにここらのものとは毛色が違っていた。

 なんというか……純粋な顔つき?

 失礼な言い方をすればあまり切れ者には見えない顔って言うか……美しいというよりは可愛い感じ。

 

 まぁいいか。合格ラインに達している事に違いはない。

 手を離し、俺は雪の中座り込んでいるこの娘の保護者に向かって口を開いた。

 

「そこの者、この娘を俺に預けてみる気はないか?」

 

「あ……ずけ、る?」

 

 しりもちをついたままつぶやく女。

 

 貧民層には栄養不足の者が多い。

 特に、暗黒の一月の間に食べる物すら足りず、この配給の列に並ぶような者はなおさらだ。

 十分な食べ物すら与えれば、平民や貴族より貧困層の人間の方が美人になる素質を持っているのかもしれないな。今度試してみるか。

 

 預けるという言葉を使ったのは、一重にこの娘自身の中から"売られた"という認識をなくすため。髪の色が見事なこの子には本来必要ないが、俺は毎回人を買う時、なるべく"売る・買う"と言う言葉は使わないようにしている。

 "買われた"はともかく、"売られた"という言葉は、その売られた本人にとって自信をなくす要素としかなりえないためだ。無理やり手に入れて、その結果輝きが色褪せたら本末転倒だし。

 

「う、娘は、りょ、領主様に、預けられるほどの女では――」

 

 顔をこわばらせて反論する女。いい度胸だ。

 表情にちらほら見える陰。

 俺の勘が言っている。何か隠しているな。

 

「嘘つくなよ。娘? 顔が全然違うだろ」

 

「――ッ、し、親戚の、子なんです」

 

 必死に叫ぶその姿は、滑稽だった。

 こいつはアホだ。もしそれが真実だったら、初めから言ったって全然構わないじゃん。

 しかし、強情だな。腕の一本でも取り上げればおとなしくなるのだろうが……うーん。

 取り敢えずとことん追い詰めるか。

 こいつの言う事はどうせ全て嘘だ。この天才たる俺が言うのだから間違いない。

 

「親戚が、先日亡くなったので、それを預かって――」

 

「ダウト」

 

「ほ、本当です。信じてくださいッ!!」

 

「ダウト」

 

「ほ、本当に私は――」

 

「ダウト」

 

「レキトン共和国から――」

 

「ダウト」

 

「た、食べるものがなかったのでここに……」

 

「はいはい、ダウトダウト」

 

 

 ぶっちゃけ、真実が混じってたとしても俺には全然関係ないので。

 彼女がたとえ悪魔とのハーフだったとしても、呪いがかかっていて後数ヶ月でなくなる運命だったとしても、どこかの高貴な家柄のお嬢様だったとしても、実は魔王だったとしても、奇を照らして勇者だったとしても、新たなエラーだったとしても人造人間だったとしても二十年前に亡くなっていたとしても夜な夜な首が伸びるろくろくびだったとしても俺の命を狙う暗殺者だったとしてもそんな事はぜーんぜん関係ありませんよ。

 俺に関係があるのは、彼女が綺麗な黒髪を持っていて、和装の似合いそうな可愛い娘だという事だけです。

 

 

「ほ、本当に――」

 

 まだ何事か口走ろうとしている女の側にしゃがみこみ、睨みつける。

 俺に気を使ったのか、さきほどまで列に並んでいた連中は全員遠巻きに俺を見守っていた。よくできた奴等だ。

 

「百万でどうだ?」

 

 立ち尽くす黒衣の娘に聞こえない程度の声で問いかける。

 女の表情がぴくりと動いた。

 ちなみに、この国の通貨の単位は"円"です。百万あれば貧民層なら一年――いや、食べ物の値段が高騰しているから十ヶ月程度か。少なくとも十ヶ月は生きていける。

 

「う、売り物じゃ――」

 

「二百万でどうだ? それに"売る"んじゃなくて"預ける"だ。平民がどこぞの貴族の所に奉公に出すのと何ら変わらないだろ」

 

 エルフの時に使ったものと同様のやり口。

 表情に迷いが見える。

 エルフの時は、エルフが俺に借りがあったからこそ成立した手。今の場合、こいつは一重に金がないから成立する手。

 俺にとって人間の命はプライスレスだが、こいつらにとって人一人と言うのはその程度の価値しかない。

 自分が生きていくためなら自分の連れを売り払うことも躊躇わない。

 

 

 

 

 

 

 そんな人間の弱さが、僕は大好きです!!

 

「し、しかし――」

 

 もうそろそろ落ちると思ったのに、何故か変わらない答え。

 まだ何かあるのか。

 あー、めんどくせえ。俺はとっととこの娘をお持ち帰りしたいのです。

 

「それならこれでどうだ? このルートクレイシア公国にいる間は、お前の衣食住を保障しよう。時節が時節だけに贅沢はできないが、飢え凍える事がないよう取り計らってやる」

 

 ある意味、この俺が屑のためにここまで言うのは破格だ。

 普通だったら、あの娘に気づかれないようにこの女を消して、そのままなし崩しの展開に持っていってる。それをしないのはただ単にこのめぐり合わせを運んできたこいつにちょっとだけ感謝しているから。

 

 しかし、俺の譲歩に対し待っていたのは俺の希望する返答ではなく、ただの沈黙だった。

 

 まだ何か喉の奥そこにつっかえのあるようなその表情を見て、仕方なく俺は最終手段を用いることにする。

 声の質を落とす。

 この冷気よりもさらに冷たい重音。

 脅すような声色を使い、

 

「闇は怖いか? 怖いだろう。あの娘が怖くないか? 一千に一つの才能。存在自体が闇である、"異例の人型"。夜寝る前に思った事はないか? 眠っている最中に、闇がこちらに襲い掛かってくるのではないかと。疑った事はないか? あれが本当に人間であるのか。長き歴史に確かに存在する泡沫の闇。光を嫌う悪魔の属性。考えた事はないか? 移動と移動の合間。食事の時節、物を口に運ぶ瞬間。ほんの些細な気の緩みに漬け込む異形の影を。永久とこしえの地に見える確かな死を」

 

 

 とにかくソレっぽい事を言って精神をかき乱す。

 実際、自分で言っていて何言ってるのかよくわかりませんから。

 これはあれだ、国語の記述式問題で"作者の考えを述べよ"的な――この文により作者は何が言いたいのか○文字以内で述べよ、みたいな当人の解釈を求めるアレ。

 シンプルイズベストを掲げる俺にとってあまり好きな事ではないが、それでも必要な時にはすらすら出せるようにしておいてこその主人公。

 こういうやり口はシルクが凄い得意だったな。この間も"エントロピー"がどうとかいまいちわけわかんない事言ってたし。

 

 少しずつ青ざめていく表情。

 心の中に眠っている闇を呼び覚ます。それの闇の名は恐怖。俺の最も好む、不可視の暴力。

 人は皆闇を恐れる。それは、たとえ相手がどんなに親しい存在でも、人間なら確実に覚える仕方のない感情。

 こいつ自身の独自の解釈、ちょっとした思い付きは、雪だるま式に感情を吸収して本人にも止め様のない奔流となる。

 

 よし、そろそろだな。

 聞こえよがしにため息。

 唇の端をゆがめ、人の弱さに哂う。

 

 

 

 

 

「あの娘――存在の闇に眠る獣はいつかお前の事を間違いなく殺すだろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、その女の精神は、誰もが持っている"存在の闇に眠る獣"により食い破られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見詰め合って数分。

 

「半壊って所か。十全十全……」

 

 腹を割っての交渉に成功した俺は、ようやくその場で立ち上がった。

 眼を見開いたまま固まっている女。PCで言えばフリーズした状態。復活にはまだ時間がかかるだろう。

 復活した後も、その奥底から引き出した恐怖が消えることはあるまい。

 俺は天才だ。抑揚も状況もジェスチャーもエフェクトも完璧。

 心苦しいが、これも全ては正義のため。諦めてもらわねば。

 

 大体よー、こいつがすぐにイエスと答えてれば面倒な事やらずに済んだんだよ。

 女は、厄介なお荷物がなくなって幸せ。

 俺は、新たな黒髪の娘を手に入れて幸せ。

 この娘は、俺の元に来るから無条件に幸せ。

 三者三得じゃないか。

 

 久しぶりに満足の行く結果に、ちょっと機嫌がよくなる俺。

 後は、この娘本人との交渉だが、それは――

 

「おい、アンジェロ。交渉は任せた」

 

 同じ黒髪持ちのエージェントAに任せよう。

 女の子同士だし、黒髪持ちって結構その本人同士にのみ通じ合うシンパシーみたいなものがあるから何とかなるだろ。

 けっこう人間不信が根付いていそうな感じだったし、天才でハンサムとは言え、俺は紛れもなく男だし、初めのコンタクトとしてはエージェントA以上の適役はいるまい。

 俺の言葉に、どこか不機嫌そうな顔で人ごみから出てくるアンジェロ。

 

「いつから気づいていたんですか?」

 

「んー、そこの娘のフードを取って抱き寄せた辺りから」

 

「はぁ……それ、全部です」

 

 ため息つくなよ。ため息つくと幸せが逃げるって言うぞ。

 微かな月の光に、首に巻いた金色のチョーカーが輝く。

 俺が集めた者達全てに渡した俺の所有物である証の一つ。俺自身の魔力の結晶を用いて一つ一つ丹精こめて作った一種の魔導具でもある。

 それをつけている限り、少なくともこの領では無碍に扱われる事はない。

 後で、この娘のために証を作っておかなきゃな。

 黒髪持ち、エルフなどは人間から差別を受けやすいので心配りが必要なのだ。

 

「保護者には許可を取った。アンジェロはそっちの娘と交渉してくれ。俺の元に来るように」

 

「拒否権は?」

 

「拒否するのか?」

 

「はぁ……シルクは?」

 

「……最も体力を使う任務を行っている」

 

 遠い眼で空を見上げる。シルクよ、骨は拾ってやるぞ。

 きょろきょろあたりを見渡さないのは、ナリアに引っ張りまわされるシルクの姿を見つけたら罪悪感を感じてしまうかもしれないからだ。こんな感情を得たのは……間違いなく初めてです。

 

 アンジェロは、黒髪の娘を見て、少し複雑そうな顔をしていた。

 んー、アンジェロの髪は確かに黒いが、それは最近になってようやく取り戻した色だ。

 引き抜いた当時、アンジェロはそこそこデンジャラスな家庭環境に置かれていて、黒と言うよりは灰色クラスまですさんだ髪の色をしていた。

 三年以上もの長い年月を掛けて取り戻した自身の髪以上の美しい黒をしたこの娘の髪を見るのは、さぞ複雑であろう。

 

「シーン様……」

 

「何か?」

 

「……シーン様はこの子をどうしてもほしいのですか?」

 

「ほしいな。せっかく見つけた見事な黒髪だし。貧困層で――おそらく周囲から侮蔑や嘲笑を投げかけられ続けて生きてきたにも関わらずこれだけの黒髪を持っているその強さにも興味がある」

 

「……そう、ですか」

 

 俺の言葉に、眼に見えて解かるほどうなだれるアンジェロ。

 まぁ黒髪はこいつの唯一のアイデンティティみたいなもんだったし……

 しかし……このまま交渉させて失敗したらまずいな。

 

「ふん、心配するなよ。そう簡単に捨ててはやらない。忘れたか? お前は俺に人生全てを捧げてもなお返しきれないほどの"借り"があることを。その貸しを返してもらうまで、例えアンジェロが嫌がったとしても開放するつもりはないからな」

 

 驚き眼を見開くアンジェロ。

 こいつは、もしかしたらナリアの次の次くらいに俺に依存しているかもしれない。

 親類もいないし、闇属性。俺が捨てたらおそらく野垂れ死にするだろう。

 だからこそ、はっきり言っておいてやらねばならない。

 お前が今囚われている所がどんな所なのか。

 

「釣った魚を戻すような偽善は持ち合わせていない。くっくっく、たとえ将来闇属性を持つ者の地位が改善されたとしても、万が一お前がどっかの馬の骨と恋に落ちたとしても――お前は死ぬまで俺の物だ」

 

 天使の笑みを浮かべ宣言する俺。

 まあ取り敢えずはこんな感じでやっとけばいいんじゃね?

 女の子が増えるたびにブルーになってもらっちゃ俺が困るのだ。

 

 困っているような微妙な表情で俺の宣言を聞いているアンジェロ。

 その首元には、"シングルナンバー"――俺が最も早くに手に入れたものである証が輝いている。

 

 

 

ある方から質問が来ている事に今更ながら気づいたので、本編に関係ありませんがこの場を借りてお答えさせていただきます^^


質問内容:

今一番上にある返信コメントでシーンが630と表記されてるんですがその前の方のコメントにすでに700越えって書いてあったんですけど


回答:

十二月五日のコメントに関してですね(´▽ `)


シーンの元のLVは700オーバーでした。ドッペルゲンガーのLVは一匹630です。

よって、error.11をシーンが使用した場合、シーンのLVを750と仮定すると


750(シーンの元のLV)+630×2(ドッペルゲンガーのLV×2)=2010


となり、2010LVとなるという計算になります。

630はシーンのLVではなく、ドッペルゲンガーのLVだと言う事ですね(*ノ∀`)ペチンッ


返答が遅くなった事をお許しください(*´∀`*)

また疑問がありましたら遠慮なくメッセあるいはコメントまで

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