オレとツレの誕生日事情
歌に自信のない人への無茶ぶりはやめましょう
1月1日は、ツレの誕生日だ。
正月がめでたいので、ついでにヤツの誕生日にしようかと言ったら、OKされてしまったのだ。
マジか。
半分冗談だったのに。
それで良いのか、イケメンのくせにそんな簡単で良いのか?
まあ、そんな流れで、1月1日はツレの誕生日である。
「というわけで、我が家では正月だろうがケーキです」
「そうだったんだ」
「知らなかった」
あれぇ?
お子様方のドライな回答に、オレは首をひねる。
何で知らないの? あ、そっか……特に説明もしてなかったし、大体この時期にヤツは居ないしね。
知らないまま、この年齢になってしまっていたのか。
そりゃ、申し訳ないことをした。
毎年毎年出てくる謎のケーキに、さぞやモヤモヤしてただろう。
オレは腕を組んで、うんうんと頷く。
「でも、父親不参加だね」
「そうだね、不在で不参加だ」
「まあ、仕事中ですから」
そうでなくても、単身赴任中で正月以外も不在ですけどね。次に現れるのはいつになるやら。
子供たちの成長過程ぐらい、送ったほうが良いんだろうか?
いや、仕事中に私事雑事を紛れ込ませて、気を散らせるのも良くないだろうし……うーん。
「「ねえ、母親」」
「ん?」
「「これ、父親のためのケーキなの」」
これ、と目の前のケーキを指す子供たちに、オレは「そうです」と頷く。
すると、子どもたちの顔が曇った。
んん? どうしたの急に?
「……自分たちで食べて良いの?」
「父親が食べるほうが良い気がする」
「食べないと傷んじゃいますよ?」
「そうだけど……」
「そうだろうけど……」
何故、そこで子供同士のアイコンタクトがなされているんだろうか。
なんか、心なしか子供たちの視線が冷たい気がする。
「あのですね……」
何やら見当違いの罪悪感を抱いているようなので、子供たちの額をツンツンと小突いてオレは苦笑する。
「良いですか? 誕生日というのは、2つの側面があります」
「2つの」「側面」
「本人が祝われる、これが1つね。で、もう1つ、周りが祝福する。ここまではOK?」
頷く子供たち。らぶりー。
じゃなくて。
「まあ、本人不在なので直接祝うことはできませんが、お祝いはできるわけです。お祝いする気持ちが大事っていうか、届け、この思い! 的な」
グッとこぶしを突き上げたオレに、子供たちが沈黙。
ややあって、なんでか溜息をお吐きになられた。なんでだ。
「……母親らしい感じ」
「そうだね、なんか、もう、お腹いっぱい」
え? 食べれない感じ? マジで?
人数につき2個用意しちゃったんだけど。
「母親、ケーキ食べるだけと意味が分からないと思う」
「母親、もう少し工夫が必要だと思う」
「工夫つっても……それっぽいメッセージ板チョコつけるとか?」
「相方、何にする」
「父親が喜ぶ……記録、映像」
「歌かな」
「歌だね」
「えっ、ちょっ」
子供たちの間で着々と計画が進められている?
なんか、ヤツばりのイイ笑顔になってる?
我が子が怖い!
恐れおののくオレに、うちの子が携帯を向ける。
「はい、母親、撮るから歌って」
「へい?」
「3」
「いやいや」
「2」
「無理無理無理無理」
「1」
「0」
「は、はっぴばーすでー、無ー理ー!!」
そこは、貴方じゃないの。
うちの子の冷静なツッコミがはいりましたが、「無理」で合ってます。
何と言われようと、むーりぃー!