プロローグ 現実(リアル)が現実(ゲーム)に 改
作者は初心者なので、アドバイスや感想を頂けると助かります(*´∀`)
どうぞこの作品を宜しくお願いします(* ̄ー ̄)
それは、朝の事だった。
「んっ ……んぅ?」
意識の微睡みから徐々に解放され、布団から身体をゆっくりと起こす。
……と、そこでボクはある違和感に気が付いた。
「あれ、頭が重い……? それに何だか、声も変……?」
……心なしか、いつもより視線が少し低くなってる気がするし、声も高くて綺麗。
何かがおかしいな……?とボクは思い、ぼけーっとしながらも頭を動かして、自分の身体を見る。
そして、ボクは絶句した。
(え? ……え? これは夢、なのかな……?)
いつもより一回り細い腕に、さらさらと流れるようになびく薄桃色の髪。頭が重かったのは多分この髪の毛のせいだろう、何せ腰まで届きそうなほど髪の毛が長いのだ。
(胸は……無い? ……いや、少しあるみたいだね。うんうん、なるほど……)
そうして彼女は、嫌でも理解してしまった。
――どうやらボクは、目が覚めると自分の身体じゃなくなっていた……みたいだ。
現実を受け止められないのか、それともこの非科学的状況を楽しんでいるのか――彼女は比較的パニックに陥る事なく、現状を把握するために頭を回転させる事が出来ていた。
まずは落ち着こう、うん。……ええと?客観的に見るとボクはどうなっている?
・ボクは、とあるオンラインゲーム上で操作していた女キャラクターの“ラティア”になっている。
・ついでに全裸である。あ、でも下着は着てるみたいだからセーフセーフ……。
「いやいやいや!? セーフじゃないよ! なんで裸になってるの!? 違うから! ボクは変態じゃないからー!!」
ボクは誰に説明する訳でもなく、部屋中をぐるぐると回りながら「ボクは変態じゃないんだー!」と少しの間叫び続けた。
「さっき洗面所に備え付けられた鏡で確認したから分かってるけど、もう1度確認したら夢でした! ……なんてオチを期待していたのになぁ。夢じゃなかったね……」
ボクはため息を1つ吐き、布団の上に座り込む。この状況が夢じゃないと言う事はとりあえず分かったよ?でも、どうしてボクは“ラティア”になっているのだろう?
「ラティアって、ボクが『RO』で使っていたキャラクターなんだけどなあ、ラティアとボクが入れ替わった――という事はないよね。だってここ、ちゃんと存在するボクの部屋だし……」
うーん、考えれば考えるほど分からなくなる。ボクがおかしい事以外は家に変化は見当たらないし、そもそもゲーム上のキャラクターと入れ替わるだなんて事は普通あり得ないよね?
ほんとにどうなっているんだろう?
ボクは現実逃避をするかの如く、自分でも気がつかない間に『RO』の事を考え始めていた。
『RO』とは、現在世界中で大流行しているMMORPG――『リアル・オンライン』の事で、ゲーマー間では『RO』と称されて呼ばれている。
リリース初期の『RO』はオンラインRPGとして日本にのみ発表されたが、人気になるにつれて家庭用ゲーム機などにもソフトとして売り出され、今では日本だけで2000万人がプレイしているという。その人気の凄まじさや面白さは動画共有サイトや口コミを通して海外にも瞬く間に広まり、『海外鯖も出してくれ!』『オンラインでいいから我々もプレイしたい!』と海外のネット上での暴動が起きた事もあったため、運営は急遽日本鯖の他に海外鯖を発表したという伝説を作った事もある作品だ。
それだけ人々をひきつける『RO』の魅力は何かと聞かれればやはり、誰もが声を揃えてこう言うだろう。
「強くなれる事に限界がない事……だよね」
従来のRPGであれば、レベルをカンストし、ラスボスの武器や防具といった最強の装備を揃え、魔法や技といったスキルなどを使いこなす事で最強になる。だが、それは逆に言えば「最強になってしまえばそれ以上強くなることは出来ない」のだ。
だが、この『RO』と言うゲームには『最強』というものが存在しない。故にどこまでも貪欲に強くなれる。
勿論、キャラクターの大まかな強さを表す『レベル』には「レベルは100までしか上昇しない」という上限は存在する。
しかし、レベルはキャラクターの大まかな強さを表す『Cレベル』だけではなく、装備やアイテム、果ては職業からスキルクラスと呼ばれるものまで、ありとあらゆるものにレベルが存在するのだ。
「レベルを上げる事で更に強い装備が出来たり、更に強い効果を持ったアイテムになるからついついやりこんで強くなっちゃうんだよね。従来のMMORPGだと、レベルアップ=ステータス上昇が基本だしね」
……ん?レベルが100までしか上がらないなら『最強』になることが出来るじゃん!と、そう思う人もいるかもしれない。確かに、レベルを100まで上げる事が出来れば、最強になる事が出来るね。
ここがミソなんだけど、レベルは1.12の1.06乗(四捨五入)の経験値を得る事で1上昇するんだ。
つまり、レベル100に到達するためには1.12の1.06乗を99回行うので、約5682兆800万の経験値が必要なる。
それに加え、1日8時間『RO』で魔物を狩り続ける生活を半年行って得られる経験値がおおよそ4兆なんだ。これはそのままのペースでいくと、レベル100に到達するのに約710年かかる計算になる。
と言うことは、1日24時間ずっと『RO』の魔物を狩り続けたとしても約237年がかかる訳で……。
「ようするに、ボク達人間がどれだけ足掻いても|レベル100(神の領域)に到達する事は普通不可能という事だね」
例え限界近くまで『最強』になる事が出来たとしても、武器や防具、職業からCなどを全てレベル100にした『最強』になる事は出来ないのだ。
その為、ネット上の某掲示板では『なにこれ、くそゲー乙』やら『レベルカンスト不可能とかwwwワロスwww』とか、『いや、現実的には不可能でも理論上は可能だから(震え声)』といった声が昔は良く挙がったものだ。
「……あっ、レベルを100まで上げても最強にはなれないね。ステータス上昇アイテムの事をすっかり忘れてた」
そう、運営はROをリリースしてから1か月後くらいのアップデートで『いくら魔物を倒してもレベルを上げられないから強くなれない!』と言った不満を解消出来る『ステータス上昇アイテム』を登場させたんだった。
これは自分のステータスの――例えば最大HPの上限を+100するといった効果を持つアテムで、使い捨てなのが欠点だけども『永久にステータス上昇効果が持続する』という優れものなんだ。
つまり、自分よりレベルの高いプレイヤーにステータスで勝てるようになったということだ。レベル上げ以外でも強くなれるようになった『RO』は、それから爆発的に人気になっていった。
そんな『RO』で操作していたキャラクター、“ラティア”になっているという事は、もしかして魔法とか使えるのだろうか?科学的に考えれば“ラティア”にそっくりの人間にボクの脳を移植して……とかがぱっと思いついたけど、そんな事をしたらボクが気付くよね。今の考えはなしなし。
「……っと、いけないいけない。今は現状確認をしなきゃ」
そうボクが決意した瞬間の事だった。
名前:ラティア・ルーウィ レベル:100 種族:人間 性別:女 年齢:15歳 アルカナ:【星】レベル100
職業:《モンク》レベル100
スキルクラス:全てのクラスがレベル100
HP:674450/674450
MP:287000/287000 SP:534500/534500
腕力:816900
生命力:532000
俊敏性:668000
精神力:347100
知性:226900
幸運:432500
「……今のは、『RO』のステータス画面?」
何がきっかけかは分からないけど、『RO』でステータス確認に使用できる魔法【サーチ・アイ】が発動したみたいで、ボク自身の強さが脳裏をよぎった。
『RO』の設定だと、HPは体力を表す。HPが無くなると戦闘不能になり、その場から動けなくなる。
MPは魔力を表し、SPは気力を表す。これらは主にMPは魔法を使っていくと無くなり、SPはスキルを使うと無くなっていく。
この2つの値は0になっても戦闘不能になったりする事がないけど、魔法とスキルを合わせて『技能』と呼ぶ事もあるね。
後はよくある設定ばかりかな?腕力は力強さ(攻撃力)、生命力は体の丈夫さ(物理防御力)、俊敏性はどの程度素早く動けるかを表し、精神力は精神的な打たれ強さ(精神防御力)、知性は記憶力(精神攻撃力)や賢さ(魔法攻撃力)、頭の回転の速さ(魔法防御力)を表すんだ。
それはさておき。
『アルカナ』とか『スキルクラス』はのちのち説明するとして……うん。普通じゃあり得ないレベルを見て確信したよ。というか魔法を現実で使える事に加えてステータスを見る事が出来た時点で確定だよ。確かにボクはラティア自身で間違いないみたい。
「本当はステータスなんて見なくても分かってたよ。少し現実逃避をしてただけだし……」
はあ。とため息を1つ吐き、ボクは頭を抱えてうずくまった。
決して、さっきまでの独り言が急に恥ずかしくなったとかそう言うのじゃないよ?その、えっと……ごめん、それもあるけど、他にも理由があるんだ。
「ボク、男だったのになぁ……どうして女の子に……」
ボクは再びため息を1つ吐き、遠くを見るように窓の外に目をやるしかなかった。
――そして、窓の外を見たボクは驚愕した。
……あれ?
どうして道路に、魔物達が行き交っているの……?
《昔のゲームによくあった紙の説明書的なワクワクしない設定》
『リアル・オンライン』は全世界でプレイされているため、各国ごとの鯖を管理する『管理棟』と呼ばれるものが存在しており、管理棟ごとに管理者達が24時間『RO』を監視している。
こうして24時間どんな時でも『RO』をプレイする事が出来るようになっているのだが、その裏では『RO』を24時間監視している管理者(社畜)がいる事を忘れないで欲しい。