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第十一話 バッティング


作者 * 謎のロシア人 ひろせ・シュラバスキー・ながる なんちゃって♪

 佐伯が仕事を終えたのは午前2時だった。さすがにそれから砂羽に連絡を取る事ははばかられ、独り駅前のビジネスホテルに向かう。本当は今頃二人で温かいベッドに包まっていたはずだと苦笑いをしながら。

 去年までの6年間は独りで過ごすクリスマスをうっとうしくなくて良いものだと思っていたのだが、さすがに今年は違っている。

 初めて一緒に過ごすイブの夜に彼女を独りで置いておく事に罪悪感を覚え、始発で帰ろうと目覚ましをセットした。

 きっと彼女は拗ねているに違いない。そのくせ、その事を表に出したら大人げないと思い、

“寂しくなんか無かったよ。だって、仕事だったんでしょう?”

それから、

“お疲れさま。”

とか言いながら、目を逸らしたりするんだ。

 そんな彼女の姿を想像し、彼はくすくす笑った。砂羽は肝心な所で素直じゃない。絶対に、

“私より仕事の方が大事なの?”

なんて馬鹿げた事を言ったりしないし、ましてや、

“寂しかった。”

なんて口にするはずが無い。そのくせ隠し切れない仕草で訴えている。

 だから彼女を守ってやりたいと思う。


 時刻は午前8時を少し回った頃だった。二人は空が白み始めるまで何度も愛し合った。にもかかわらず、宮内はもう一生分の眠りを得た気がした。

 それは夢という事とも少し違う、ひたすら堕ちて行き、それから光りの輪の中へと浮上した、そんな感覚だった。


 その時だ。玄関の先に人の気配を感じ宮内は飛び起きた。

 あの男だ!!

 砂羽に毛布をかぶせ、素早く下着を拾い上げる。

 その時静かに鍵が差し込まれる音が響いた。


 佐伯と砂羽は何回目かのデートの時に上越の料理を出す小料理屋に行った事がある。その時彼女が笹団子を大好きだと言っていた事を佐伯は覚えていた。彼女の御機嫌取りに、温めたそれを二人並んで頬ばるのも悪くない。だからキオスクで買った冷凍の笹団子を手に彼は砂羽のアパートへ直行した。自宅に掛けた電話で彼女がマンションにいない事は分かっていた。というより、何となく予感が有ったから。遠慮がちな彼女は渡してある合鍵で部屋に入った事が無い。いつでも彼が招き入れてくれるのを待っていた。

 その小さな包みをぶら下げながら彼は彼女の扉を開けた。来年のイブには必ず休みが取れる様に申請しなくては、と思いながら。


 最初に目に入ったのは真っ赤な花びら。少し傷みかかけた花びらの強すぎる香りに目眩を覚え唖然とする。その奥で何かが動く気配を感じた。

 1DKの細長い部屋。ほんの5メートル先に砂羽は寝ているはずだった。しかし、自分が目にする黒い影は何故か男性的だった。

 部屋を間違えたか?

 その思いを急いで打ち消す。鍵が回ったのだ。間違いは無い。

 動転しているはずがいつもの習慣で靴を脱ぐ。音を立てない様に歩みを進めそこに立つ裸の男を認めた。

 男は自分がやって来る事を予期していたのだと直感した。自分より少し背の低い細身の男。髪は栗毛。今時の男らしく左耳のピアスが光った。少し痩せ過ぎだがお世辞抜きで造作の良い顔だった。それからそのプライドの高そうな目で鋭く佐伯を見つめかえした。

 彼はゆっくりした動作でボクサーショーツを身に着けると、挑む様に真っすぐに立った。

 床に散らばるのは男と女の抜け殻。ベッドの上でこんこんと眠る砂羽。彼女の露になっている首筋から鎖骨にかけて、佐伯の身には覚えの無い印が残る。

 この状況を理解できないはずが無い。彼女は浮気をしたのだ。

 佐伯は緊張以上にため息をついた。

 彼女に限ってそんな事は無いと信じていたからこそ、余計に裏切りが手痛い。そう思うと降って沸いた様に怒りが込み上げる。

 何故?

 拳が白み、首筋が怒張する。

 誰を殴ってやろうか?

 

 先に動いたのは宮内で、ほんの2メートルほどの距離で空気が張りつめた。



         ラプソディ・オン・ブルー  つづく



これからのシーン書きたさに始めたお話です。

ここまでの宮内はまだまだ “上辺だけ”  やろうと思えばなんとか出来そうな範疇。

まだまだ頑張り足りませんから。

彼には(廣瀬好みの)大人になってもらいます♪

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