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東方玉霊絆  作者:
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 正直、体は全くと言っていいほど回復していなかった。

 能力を使う度に霊力の回路が乱れるし、体を動かすにも神経を使う。

「大丈夫?」

 鈴仙が俺の顔を覗き込みながら聞いてくる。また、心配させてしまった。

「問題ない。戦える」

「無事に帰ったらお説教だからね」

「勘弁してくれよ……」

 苦笑しながら首を振る。もうすぐ、森に差し掛かろうとしていた。




「ここが……異変の根源みたいですね……」

 妖夢が喉を鳴らしながら呟く。

 信じられないほどのプレッシャーを全身に受けながら、慎重に歩を進めた。

 満ちている霊力がうねるような禍々しいものに変化している。

 これはつまり、それだけの影響を与える存在が居るということだ。

 ……冷静にならないと。

 戦うにしても逃げるにしても、冷静な状態で判断しなければならない。

「隆也さん、あんまり気負わないでくださいね。私も、鈴仙さんもいるんですから」

「ああ、頼りにしてるぜ?」

 とは言うものの、もしもどうにもならない相手が現れたなら、なんとしても二人を逃さなければならない。

 体が不自由な今、それが出来るのか不安で仕方がないが……いざとなったらやるしかないのだ。

「私は死ぬのはゴメンだけど、それと同じくらい隆也が傷つくのを見たくないんだからね?」

「しょうがねえだろ。俺だって必死なんだから。まあせいぜい死なないように頑張るさ」

「怪我もダメだよ」

 首を竦めて渋々了承すると、その様子を見ていた妖夢がくすくすと笑った。


「結構奥まで来たんだが……さて、異変の犯人はお前か?」

 岩の上。俺の胸くらいの高さがあるその岩にあぐらをかいて座っている狐耳の妖怪は、俺達の姿を見るなり、口元を歪ませた。

「そうだと言ったら……どうするのじゃ? 心弱き人の子よ」

 頭上に生えた狐の耳。背中、腰、そして腰の横……脇腹。三箇所に付けた鞘。しかし刀が収められているのは、脇腹に付けている鞘だけだ。

 俺がぐっ、と鞘にしまった木刀を握りしめると、妖怪は更に歪に笑う。

「そうか、そうかそうか。ならば良し。待ちわびた仕合を始めるとしよう」

 妖怪が膝を打ち鳴らすと、どこからともなく母さんが現れた。

「それでは契約通り、頼むぞ? ナツメ

「言われなくてもわかっている。そっちこそ遅れを取るんじゃないよ? ツバキ」

「ハッ、そこまでにしておけよ人間。妾の気も長くはない故な」

 妖怪……ツバキが腰に付けている刀の鞘を触る。母さんはおどけるように掌を見せると、瞬時に鈴仙と妖夢に襲いかかった。

「っ!」

「遅い」

 振り向こうとした瞬間、ツバキの鞘が光った。

 反射的に木刀を構えると、手に凄まじい衝撃を受けた。

「この子たちは預かっていくよ」

 母さんはそう囁くと、二人を抱きかかえる。

「しまっ……」

「大丈夫だから! 絶対!」

 鈴仙が叫ぶ。俺の手は、届かない。

「『助けに来るから』!」

 二人は母さんに抱えられ、森のなかに消えていってしまった。


「今お主、『体が万全だったら』と考えたじゃろ」

「この……」

 このまま追いかければ、ツバキに背中からバッサリと斬られて終わりだ。

 速攻で倒して、二人を追いかける。それだけだ。

「さてさて、場も整ったことじゃし、始めるとしようかの? ほれほれ、はようかかってこんかい」

「蒼!」

 回復特性を使い、体の異常を誤魔化して駆けだした。

「っぐ!」

 しかし、ある程度まで近づいたところで急ブレーキを駆ける。

 ツバキの瞳が、先程までの人を食ったかのような雰囲気から、ギラリとした『獲物を狩る目』に変わったからだ。

「応、そう、そこが死線よ。己の首を繋ぐ直感はあると見える」

 ツバキがゆっくりと刀を抜く。そしてそれを掲げ、またにやりと笑った。

「竹刀……?」

 その刀に刃は無く、代わりにゴツゴツとした刀身が備わっていた。

「応よ。この刀はちと特別でな。居合以外では斬れんじゃ。故に、鞘が三つ。仕舞い、抜き、斬る。一つでは足りなかったのでな。増やしてみた」

 呵々、とツバキが声を出して、楽しげな声を出した。

「いいのかよ、ネタばらしなんかしちまって。早計、ってやつなんじゃないのか?」

「流石の妾も、小童を切り刻んで悦に浸る趣味はないのでな。そんなことより、早く妾を倒さねば貴様の母があの小娘どもを歩けなくしてしまうかもしれんぞ?」

 あぐらをかいたまま、ツバキは俺の瞳を見据えて意地の悪そうな笑みを浮かべた。


どうも、作者の人です。

来週からは……両方の視点を上げていきたいですね……出来ることなら……


時間がギリギリなので今回はこの辺で。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

また来週お会いしましょう。では。

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