白玉楼
長い階段を登り終え、ようやくそれらしい建物が見えてきた。
永遠亭と同じかそれ以上の広さを持つその庭には、白く丸い石がこれでもと敷き詰められ、波のような線が引かれている。
そして何よりも目を引くのは、巨大な木だ。
枯れているかのように見えるのだが、しかし命の力強さみたいなものを感じる。
庭師でもいるのだろうか……?と考えながら人影を探すと、そこには剣の鍛錬をする少女の姿があった。
あれは刀か。だとすると、彼女が幻史や鈴仙の言っていた人物だろう。
「妖夢~」
鈴仙が親しげに呼びかけると、こちらに気づいた少女は振っていた刀を鞘に収めて駆け寄ってきた。
「この子が、例の。ええと……」
「魂魄妖夢《妖夢》と申します」
鈴仙の言葉を引き継ぐように、妖夢と名乗った少女は頭を下げた。
よく見ると彼女の周りには白くて丸い球のようなものが尾ひれをつけて浮遊している。これが幽霊なのだろうか……?
礼を返し、頭を下げてから名乗る。
「轟隆也だ。よろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いします……あ、幻史さんもいらっしゃってたんですね」
たまたま俺の後ろに居た幻史はジェスチャーでのみ返事をすると、妖夢は軽く微笑む。
「隆也さん、見たところ剣術を……?」
俺の持っている木刀が気になるのか、キラキラした目で見つめてくる。
たまらなくなって苦笑しながら「そんな大した腕はしてないよ」と答えたが、聞こえていないようで熱心な視線は収まらない。
「ぜひお手合わせを……と言いたいのですが、これから主人のお昼ごはんを作らなくてはいけませんので……」
「主人?」
「はい、ここ白玉楼の主である、西行寺幽々子様です」
「……なるほど」
紅魔館のレミリア、永遠亭の姫様のように、ここにも偉い人がいるという認識でいいのだろうか。
「よろしければ、ですが、皆さんも食べて行かれますか?」
「いいのか?」
出直そうか、とも考えていたのだが、思ってもみなかった提案だ。
「勿論です」
「ありがたいな……鈴仙、この後なにか用事あったっけ?」
「ないよ、大丈夫」
「じゃあ寄って行こうか」
こんな遠くまで連れて来てなんだという話なのだが、聞かなければならないと思ったのだ。
客室に通され、しばらくすると桃色の髪をした女性が入ってくる。
「あら、あらあらあら。これは珍しいお客様ね。どちら様?」
「ええと、流れ者の轟隆也と申します……」
雰囲気に押されて思わず敬語になってしまうほどの、大物感。この人が『幽々子様』だろうか。
レミリアとも姫様とも別部類のオーラを放つその人は、扇子で口元を隠して妖艶に微笑んでいる。
「ああ、貴方が。珍しく妖夢が目を輝かせていたから……」
「え?」
「ほら、剣を扱う人って珍しいのよ。だから『相手が出来た』~って」
「そうなんですか……ぜひお手合わせをお願いしたいですね」
「そうね。だから貴方を引き止めたんだと思うわ」
ニコニコした笑顔のまま、その人は机の向こう側に座った。
「申し遅れたわね。私はここの主、西行寺幽々子です」
「ああ、やっぱり……」
予想が的中したので、敬語を使っていてよかったと胸をなでおろしながら、ペコリと頭を下げた。
食事を終え、一息ついてから庭へ出る。
綺麗な波が引かれた地面を踏むのは憚られたが、仕方なく準備をした。
木刀を何度か振って感触を確かめると、構えをとって息を吐いた。
「……行くぞ」
どうも、作者の人です。
今週は間に合いました。けっこう(時間的に)ギリギリでしたけれども…
今回からワードを使って書いてみたので若干書き方が変わっているかと思いますが、あいも変わらずご容赦下さい。
来週は…殺陣です!
やっとここまで来られたので…気合を入れて行きます。
それでは今回はこの辺で。ここまで読んでいただいてありがとうございました。
また来週お会いしましょう。では。




